Days of taco

やさぐれ&ヘタレtacoの日常と非日常

やるせなきおに抗って

2023年09月18日 | 読んでいろいろ思うところが
武田砂鉄「マチズモを削り取れ」(集英社)を読む。
女性が活躍できる社会を、とかなんとか、
偉い政治家さんたちが、口を酸っぱくして語る昨今。
でもね。この国にはものすごく根深い男性優位な
思想と体質が染みついているわけで。
具体的な事象を取り上げながら
それらをちくちくと執拗に探り、
突っ込みを入れていく砂鉄さん。


個人的なことを書くと、
自分は男性だが、いわゆるマチズモとは無縁で、
これまでの人生で「男らしさ」や「家父長制」といった
価値観で生きてこなかったし、そうしたものは
むしろ嫌悪してきたつもりだった。

でもね。そんな嫌悪は甘っちょろいんです。
自分は男性である、というだけで
無意識に世の中から下駄を履かされていたわけで。

その証拠に、自分は満員電車で痴漢に遭ったことがない。
駅の構内など混雑したところで、
男性が故意にぶつかってきたこともない。

この日本に住む女性の多くは、
そうした体験があるわけで、男性である自分は
そうした災厄に見舞われないだけで、
ずいぶんラクをさせてもらっている。
つまり、女性というだけで、
ずいぶんな負担を強いられているのがこの国の現状であるらしい。

もうひとつ個人的なエピソードを。
知り合いの女性が、引っ越しをするので、
次の転居先を探すために、不動産屋に
つき合ってもらえないかと頼まれたことがある。
理由を聞いたら「女ひとりだと舐められるから」だと。
不動産屋のすべてがそうだとは言わないけど、
女性ひとりで部屋を探すと、ぞんざいな扱いをされるケースが
あるんだなと驚いたことがある。男は気づいていないのだ。
日々の生活のひとつひとつに、
女性固有の生きづらさがこびりついているわけで、
そこを砂鉄さんが丁寧に引き剥がしていく。

なぜ男は立って尿をし続けるのか。
なぜ「私を甲子園に連れてって」と
女マネージャーが言わなきゃいけないのか。
なぜカウンターの寿司屋では、男が女に蘊蓄を垂れるのか。
などなど、なるほど、こんなところに
マチズモがこびりついているんだ、と。

砂鉄さんは書く。

この社会に充満しているのは、「そういうことになっているから、そういうことにしておけ」である。とにかく、現状維持を欲する。保身がそうさせる。実は、とっても不安なのだ。裏に回るとその背中は怯えで震えているのだ。怯えているのに、居丈高なのだ。自分たちが割を食わないように目を光らせている。社会や組織が自分を守り続けてくれることを願っている。そこで潰されてきたのは間違いなく女性である。

保身と怯えと居丈高。
これがこの国の男性像だとしたら、
あまりにも情けない。


コメント
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