チョン・ジュリ監督「あしたの少女」を見る。
パワハラきわまるブラック企業に
研修生として入った女子高生に起こった悲劇。
その痛ましい事件を追いかける刑事の執念。
1本の映画で2本見たかのような重量感と、
なんといってもペ・ドゥナの存在感。彼女に尽きる。
前半は就職を控えた女子高校生ソヒの物語。
実習生として働き始めたコールセンターの
パワハラまみれの実態。働き手の労働力を搾取し、
利益に邁進する非人間的なエピソードが連なり、
それはそれは身の凍るような展開。
現状を打破し、抵抗するソヒの姿は美しいが、
たかが一人の女の子の抗いなど、おかまいなしの世の中を
見せつけられ、絶望しかないというか。
そんなソヒの生き様を丁寧に捜査する
刑事ユジンが主人公となる後半。
ほぼ全編無表情のこの刑事。
ソヒに起こった悲劇が明らかになっていくにつれて、
目に怒りの炎が立ちこめてくる。
凍りつくような映画のなかに伝わってくる体温。
そのあたたかみを感じることで、少しの救いがもたらされる。
「吠える犬はかまない」や
「子猫をお願い」「リンダリンダリンダ」などで
世界中のシネフィルを虜にしたペ・ドゥナ。
40歳を過ぎて、第二の全盛期を迎えていると思う。
是枝監督の「ベイビー・ブローカー」と同じく、
静かな芝居のなかに、感情のかたまりのようなものが
湧き上がってくる感じが素晴らしい。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます