旅のプラズマ

これまで歩いてきた各地の、思い出深き街、懐かしき人々、心に残る言葉を書き綴る。その地の酒と食と人情に触れながら…。

24節気の酒 ・・・ 冬至

2009-12-29 13:42:26 | 

 既に5日を過ぎたが、22日が冬至であった。一年で昼の時間が一番短い日である。正に冬に至り、寒さも一段と極まってくる。
 湯船に浸かると、妻の計らいで柚子(ゆず)が二つ浮いていた。黄色い大きな柚子が、甘酸っぱい香りを乗せてゆらゆらと揺れながら、首まで浸かった私の頬に近づいてきた。
 「今年も終わろうとしている・・・、いろいろな事があり、それなりに充実した年を健康で過ごせた・・・。」
 寒さをしのぐ柚子湯に肢体を伸ばす、幸せなひと時であった。

 この22日から年を越して1月5日の小寒までを、24節気では冬至とする。この時節、と言うより一年の締めくくりに最もふさわしい酒を飲む機会を得た。一昨日(27日)に開かれた「純米酒大賞2009 グランプリ酒を楽しむ会」がそれであった。

 純米酒大賞と言うのは、純米酒普及推進委員会委員長の高瀬斉氏や、フルネット社の中野繁氏などで構成する『純米酒大賞制定委員会』が、初めての試みとして、全国84蔵、137点の純米酒を鑑評し選んだ酒である。137銘柄を精米歩合別に、39%以下、40%台、50%台、60%台、70%以上の5部門に分け、5人の審査員が数時間賭けて選びぬいた(もちろん目隠しテスト)。

 
 各部門の1位(グランプリ)酒を掲げると、第一部門から順に「団」(純米大吟醸、福井県加藤吉平焦点)、「梵」(特撰純米大吟醸、福井県同社)、「出羽桜」(純米吟醸雄町、山形県出羽桜酒造)、「奥の松」(特別純米、福島県奥の松酒造)、「亀齢」(辛口純米、八拾、生、広島県亀齢酒造)の5銘柄。その中から再度選びぬかれて“純米酒大賞”を受賞したのが『「出羽桜」(純米吟醸雄町)』であった。

 これらグランプリ酒と準グランプリ酒の11銘柄を、蔵元ともども楽しんだのである。精米歩合だけから見ても「梵」は21%、対する「亀齢」は80%。これほど幅のある酒がそれぞれ特有の個性をもって実に美味しく、甲乙つけ難い。さすがに大賞の「出羽桜」は、雄町という米のせいか、柔らかく幅のある味で、どんな食材にも合う素晴らしい酒であった。同社の仲野社長も「雄町は難しい米ですが、苦労して造った甲斐がありました」と語っていた。

    
      純米酒大賞「出羽桜雄町」    


 この選出基準が、従来の鑑定会などのような「減点法(欠点を指摘し切り捨てていく)」でなく「加点法(いい点を拾い上げていく)」であることも、日本人の食材や日常生活に合う酒を選び出してきたのであろう。

 本年の最高の酒をたっぷり飲んで、一年間書き続けた『24節気の酒』も終わりとする。
                           


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