この旅でもかなりの酒を飲んだ。すでに冒頭の「本山の蕎麦と高波(塩尻の酒)」に始まり、食事の記事に際しては飲んだ酒に触れた。ここでは、この旅で訪ねた二つの酒蔵について記しておく。
初日、藪原宿にあって『木曽路』という酒を醸す湯川酒造店を訪ねた。創業は慶安3年(1650)というから360年の歴史を持つ。現当主は16代目というが残念ながらご不在、しかし奥様が丁寧に蔵の中まで案内してくれた。もちろん酒造りはすでに終えているが。
地元木祖村産米ヨネシロで造る『燦水木』も魅力があったが、美山錦の純米吟醸『木曽路』を購入。なかなかしっかりした酒であった。伝統の力であろう。
二日目は、木曽福島の『中乗りさん』という酒名で知られる中善酒造店。酒名はご存じ木曽節からとったもの。創業は大正13年(1924)と湯川酒造店に比べれば新しいが、それでも90年の歴史を持つ。恵まれた良水と地元米で、手作りのぬくもりを伝えてきた。
蔵の案内をいただいた営業担当の南常務が一番強調したのは、水と地元米「ひとごこち」だった。蔵の水は山の中腹に30メートルの横井戸を掘って引いている。その良水で丁寧に続ける「洗米と浸水度合い」の重要性を熱心に語った。
うれしかったのは、純米吟醸や特別純米など当社自慢の5種の酒を利き酒させてくれたことだ。いずれも相当にいい酒であった。私は、純米酒フェスティバルへの出店をぜひ検討してくれと依頼した。他の出展蔵に決して負けない酒と言えるだろう。
「美山錦49%の純米吟醸」と、「ひとごこち特別純米」を購入したが、帰京後飲んでも大満足であった。
利き酒させていただいた5本