桜井昌司『獄外記』

布川事件というえん罪を背負って44年。その異常な体験をしたからこそ、感じられるもの、判るものがあるようです。

腐った思考に応えて、その4

2014-02-12 | Weblog

検察・法務の反論の特徴は、総てにご都合主義なところだ。都合の良いところを都合よく使う。そして常識で考えれば判ってしまうようなことでも、平気で主張するところだ。

俺にはアリバイがある。事件当日、午後6時半ころに高田馬場「養老乃瀧店」に入って飲食し、その後、8時前には野方の兄のアパートへ帰り、兄の勤めるバー「ジュン」へ行った。飲んでアパートへ帰る時に、田舎の友達2人に電話をした。アパートに帰った11時ころ、部屋には杉山がいて、隣のアパートへ果物を盗みに入った。こんなアリバイだ。

この点での捜査の不備を追求した弁護団に対して、検察には責任がないことを言うわけだが、この反論の始まりからして、明らかな矛盾がある。

「桜井はアリバイを主張したが、取調官が、そのような事実はないと虚偽の事実を告げたために混乱して思い出せなくなったと主張するが、原告の行動を聴取し始めたのは、逮捕して3日目の10月13日午後からと認められることから、同11日にアリバイを述べていた事実は認められない」と言う。

俺を調べた早瀬四郎は、確かに「事件のアリバイを聴いたのは10月13日から」と証言した。しかし、俺の尋問には「11日にも聞いた」と言っている。もちろん、それは「窃盗に関してだ」とは言ったが、何に関して訪ねようが、「その日どこにいた、どこに泊まった」と確認することは、事件の質に関わるまい。聞いたことは聞いたのだ。

それなのに、この反論を書いた法務・検察は「認められない」と書く。

馬鹿じゃないのか。

窃盗で聴いたと言おうが、強盗殺人で聞いたと言おうが、聞いたことは聞いたのだ。腐った眼には事実が見えないだけだ。

しかも、この布川事件の実質的な捜査責任者だった渡辺忠治は「アリバイのはっきりしない人は逮捕して究明しようという方針だった。桜井も、その対象者として逮捕した」と、明確に証言している。この事実も、検察の無責任性を書く検察官職の目には見えないらしい。捜査責任者が「アリバイを究明しようと逮捕した」と語る俺なのに、すぐにアリバイを確認しないはずはあるまい。

俺は10月11日の調べの冒頭にアリバイを聞かれた。逮捕の筋書きを見れば当然の話だろう。

杉山が語る「ショウジの兄貴の調書を見せられたらば、事件の夜に杉山は来ていないと書かれていた。だから、桜井兄弟に巻き込まれたと思って、やけになって自白した」との、「兄の調書」は絶対に存在する。隠しているだけじゃないの、検察官職さん?

冒頭から事実を誤操作する検察官職は、「ジュンの調査」、「田舎の友人に電話したことの調査」なども「その主張は失当である」と言う。

俺が「ジュンに行った時間が問題であれば、日常に客と接する店員・店主よりも、その日にいた客の方が明確な時間を語れよう。なぜならば、何時ころに行って、何時ころに帰ったかは、客の方が正確に語れるからだ。もし、事件当夜にいた客の3人だったかの1人でも、「11時前には帰った」と判ったらば、どうなるだろう。俺は見ている、会っている。行ったのが9時ころだから当然だ。犯行が可能かどうかのアリバイ捜査である以上、この客を調べていない捜査は、やはり誤っていたのだ。

「電話の相手の事情聴取をしても、約2カ月も前における電話の日時について明確な裏付けをあられるかどうかは不明」だとある反論にも驚くねえ。

俺たちは事件後、約2カ月して逮捕され、その後に「利根町周辺で見た」と述べる5人ほどの証人が作られて「犯人」にされたのではなかったろうか。犯人を作るのならば、どんことでもするが、無実を明らかにする捜査はしなくていい、と言っているとしか思えない。犯人性を捜査する熱意の、その10分のⅠ程度の熱意くらいがあれば、きっと電話の相手も、バージュンでも、俺のアリバイが明らかと資料は得られたことだろう。

この論の中には、一般人には到底理解しがたい主張もある。

「原告が本件犯行現場に行っていないことを裏付ける証拠資料が客観的に存在したことは、何ら立証していない」と言う論だ。

「いろいろ言うけど、証拠資料を出して証明していないだろう」と言うらしいが、その証拠を独占しているのが検察庁なのだから、こう書いて平然としていられる神経が凄いよねえ。裁判官は、こんな主張でも理解するのかも知れないが、一般人は違うのではないだろうか。だから、「総ての証拠を出してほしい」と弁護士は、どの事件でも言ってるのじゃないか。

こんなタマでなければ検察官をやっていられないのかも知れないが、だから「総ての証拠を弁護士が見られる制度」を作りたい、作らなけらばならない、と再確認する思いだなあ。

 

 


最新の画像もっと見る

コメントを投稿