桜井昌司『獄外記』

布川事件というえん罪を背負って44年。その異常な体験をしたからこそ、感じられるもの、判るものがあるようです。

「犯人はそこにいる」

2014-01-25 | Weblog
日本テレビで足利事件の報道に係わり、足利事件の再審に力を尽くした清水潔氏が執筆した、副題が「隠蔽された北関東連続幼女殺人事件」という書籍を読んだ。
清水氏が足利事件を報道するに至る経過に始まり、再審勝利から「真犯人」の存在を突き止め、捜査の要請をするが見逃されるに至る内容を読み進めると、いかに日本の警察と検察が歪んだ組織かと知らされる。
更に、清水氏の追及は足利事件のDNA鑑定の誤りから、足利事件を鑑定したと同じ人が鑑定を行い死刑が確定して執行されてしまった飯塚事件の不正と闇にも及ぶが、久万三千年さんを殺してしまった検察は、視野に無二不正疑惑に蓋をするだけだ。
この書籍は、俺が身をもって知らされる警察と検察の絶望的な状況を追認させられる、改めて「司法過失罪」の必要を思わされる。何をしても責任を問われない無責任が、真犯人をも放置する異常を許すのだ。
清水氏は、決して冤罪を救うために足利事件を報道したわけでもなければ、その意思もなく、ひたすらに真実を求めての行動だと書く。しかし、第11章の末尾にある、真犯人に投げつけ、幼くして人生を奪われた子供たちに寄り添った怒りと悼みの言葉の鋭さは、まるで叫びのようだ。それは氏も愛する子を事件で失う理不尽を味わっていたからこそ、湧き出る言葉なのだと判る。
清水氏は、菅家さんが釈放される前、日本テレビ幹部とともに、最高検幹部と会ったそうだ。そのおり、足利事件の「ルパン」と呼んでいた真犯人の存在を、真犯人のDNAと一緒に伝えたが、捜査を依頼したが、「DNAが違っていた」との返答で終わったそうだ。清水氏も書いているが、検察は真相を闇に葬るために、真犯人のDNAが再鑑定されるのを防ぐ目的で「真犯人のDNAが残る衣類」を被害者家族に返却するのを拒否している。
被害者家族が渡良瀬川の犯行現場で涙するところは、俺もテレビで見てはいたが、「お姉ちゃん、会いたかったよ」と涙する会えなかった妹に、きっと「お姉ちゃん」も同じ言葉を語ろうと思うと、文字が滲んで心が痛み、とても電車では読んでいられなかった。この被害者家族の思いに応えない警察と検察の腐敗ぶりには、もはや書く言葉も浮かばない。
「18‐24」型のDNAが再鑑定されるとき、報道記者でさえも突き止められる真実を捜査出来ない警察の組織的欠陥が法的に是正され、無実の久万三千年さんを殺した検察の犯罪行為が裁かれるだろう。
1人でも多くの人に知らせたい本だった。

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2 コメント

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Unknown (千恵ば)
2014-01-25 22:52:39
すごい本が出ましたね。私も読んでみます。
ありがとう。
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Unknown (gana)
2014-01-26 10:38:01
やや著者の我田引水的な印象がありましたが、
刑事司法の堕落を鋭く突き、とくにへの怒りをストレートに表現した1冊だと思います。
足利にとどまらず、飯塚事件への言及しているあたりも素晴らしいです。
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