桜井昌司『獄外記』

布川事件というえん罪を背負って44年。その異常な体験をしたからこそ、感じられるもの、判るものがあるようです。

大崎事件

2009-05-28 | Weblog
鹿児島の冤罪で有名な志布志選挙違反事件。有りもしない選挙違反事件をでっち上げた志布志警察署は、その前にも同じように事件でないものを事件に作り上げた前科があり、それが大崎事件だ。
大酒飲みの義弟を殺したとして原口あや子さん夫婦らが逮捕され、嘘の自白を強要されて犯人にされたのだが、原口あや子さんは否認を貫き、80才を超えた今も闘い続けている。
一度は再審開始決定が出されたのに、三審制を崩すとかの理由で棄却されてしまった。この判例に縋って布川事件なども最高裁に特別抗告されたのだと思うが、裁判で大事なのは真実だけなのに、優秀な頭脳を持つ裁判官は、そこが判らない。一度下した判決は何があっても守る、それで裁判の権威を守れるとでも思っているのだろう。
大崎事件は、元々が事故。酒に酔って自転車に乗り、深い側溝に落ちて頸椎を損傷した。そこに通り掛かった近所の人が、ずぶ濡れの故人を自宅に運んだ。何時も酒で迷惑を掛けていたらしい故人を、多少乱暴に扱いながら自宅に運んだが、頸椎の傷がダメージとなり、死亡した。
そこで殺したと勘違いした誰かが堆肥の下に埋めてしまったことから、この事故死が事件にされてしまった。
これらの経過は、全体を見れば明らかなのだが、その関係者が次々に他界し、人の告白に依って解決する手段は失われてしまった。
それで事故死を解明する手掛かりを得たくて、日大法医学部の押田教授に教えを請いに伺った。
押田教授は、今、一番熱い足利事件でもDNA鑑定を行った方で、すでに9年前に鑑定書を出したのに無視されたと憤慨され、冤罪に存在する不正に強い怒りを持っておられ、その思いも語ってくださった。
押田先生は、長い法医学者のご経歴をお持ちで、ここに記せない法医学者や司法関係者、警察などの話も聞かせて下さり、大変に勉強になった。お願いに伺った我々を試された感じのお話、質問などもあり、それも知的な好奇心を刺激されて楽しかった。
私は死刑や無期事件しかやらないと先生は言われた。北陵クリニック事件、東電OL殺人事件なでも手懸けておられるそうだが、例外として福井女子中学生殺し事件は鑑定されていて、それで被害者の顔に残された50ヵ所もの刺し傷の写真を隠していたと、強く憤慨されてもいた。
先生は、とにかく嘘と不正が大嫌いのようで、あれこれと纏わるお話を伺ったが、これもオフレコで書けない。残念!
最後には、大崎事件の鑑定書を検討して下さるとのご返事で、これを切っ掛けに大崎事件にも、再び光が当たれば、総ての仲間に勝って欲しいと願う俺には嬉しい限りだ。
最後に、押田先生から記念写真を!と言って下さり、各自の携帯カメラでパチり。
次にお会い出来る日が楽しみな訪問になった。

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1 コメント

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この事件 (通りすがり)
2009-06-13 05:34:31
本で読んだことあります。自分、好奇心だけど冤罪に興味あって色々調べました。出るわ、出るわ…絶望しました。この国は発展途上の北朝鮮かい?と思うくらい…
判決文読んでもあまりに恣意的、権力寄りなのが目立ちます。中には、警察が集めた証拠を全面否定しながら、でもこいつしか犯人とは思えないから有罪、無期懲役とか…意味不明です。真面目に真摯な態度で取り組んでいる法律関係者はどう思っているのか…
国民は飼い馴らされ、自分に降り掛からなければわからない権力の怖さを強く感じました。
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