読み進むうちにその世界にどっぷり浸からされた。そんな経験をした事などないのに実体験をしているような感覚に陥ったりもして。最近は映画化される本を読む機会が増えたが、この映画については観に行こうとは思えなかった。(辛い内容で映画化には賛成だが観たい作品ではなさそう)映画化の話を知らないで読めば良かった、と思う事しきり。父親役を堤真一さん、母親役を石田ゆり子さんが演じると聞いてしまっていたので彼らの映像が勝手に浮かんでしまい、本そのものを楽しめなかったのだ。残念でならない。もちろん彼らに罪はない。先に知っていたこちらに非がある。ただ、もうひとつ残念に感じたのはラスト。遺体で発見されるシーンまではいいが、その後がイマイチ。あれだけ稀有な体験をしたのに、それまでの感情を押し殺して(?)今までの日常を送れるものだろうか。彼らを取り巻く人たちとの感情をあらわにした後の始末が悪かったように感じた。それにこちらが冷たいのかも知れないが、筆者もある部分に記していたようにそれら(加害者)と付き合いが合った事で被害者になったのだから、普段の行いは大事という事をもっと示しても良いのではないか。行きずり殺人の被害者なら別だが、犯罪に巻き込まれるにはやはりそれなりの理由があると思うから。特に若年者たちの犯罪には当てはまるのでは? 息子が被害者か加害者か分からないままにもがき苦しんだ親の姿は見事! だっただけに惜しい! と一読者として感じた。
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