スピノザの『エチカ』と趣味のブログ

スピノザの『エチカ』について僕が考えていることと,趣味である将棋・競馬・競輪などについて綴るブログです。

ドストエフスキー カラマーゾフの預言&僕の解釈

2022-07-02 19:21:01 | 歌・小説
 『ドストエフスキー カラマーゾフの預言」という,2016年に発売された本を,数ヶ月ほど前に読み終えました。
                                        
 亀山郁夫は2015年11月に,『新カラマーゾフの兄弟』という小説を発売しました。僕はこの小説に関しては読んでいませんので,何かいうことはできません。『ドストエフスキー カラマーゾフの預言』では,その小説に関連する事柄に多くの紙幅が割かれています。亀山へのインタビューであったり,亀山の対談であったり,あるいは純粋に評論家の評論であったります。僕は小説の方を読んでいない関係で,そうしたもののうち,『新カラマーゾフの兄弟』に関連することについては言及することを避けます。ただ,それらの部分は,『新カラマーゾフの兄弟』を読んでいなければ理解することができないのかといえば,そういうわけではありません。当然ながらこの書籍はこの書籍で独立した書籍ですから,たとえ読んでいなかったとしても,理解することができるように書かれているからです。
 それ以外に,『新カラマーゾフの兄弟』とは無関係な,ドストエフスキーの小説にだけ関係するような対談や評論も含まれています。また,『新カラマーゾフの兄弟』というのは,『カラマーゾフの兄弟』を読んでいなくても理解することができる小説になっているようで,そのためにそれが『カラマーゾフの兄弟』とどういった関係性を有しているのかということを説明するために,『カラマーゾフの兄弟』だけに関係したような言説も含まれています。そうした部分の中には,僕の関心を惹き,なおかつそれについて僕が何かをいうことができる事柄があります。なのでそうした部分については,これから何回かに分けて,僕自身から書いていくことにします。
 全体的にいうとかなり難解な内容が多く含まれています。僕自身も十分に内容を理解していると自信をもっていうことはできません。そう簡単に読むことができるような本ではないといっておきましょう。

 スピノザが,理性ratioが聖書に従属するべきだと主張する人びとを懐疑論者scepticiと批判し,聖書が理性に従属するべきだと主張する人びとを独断論者dogmaticiと批判したのは,あくまでも個人の倫理に照合させたものです。ですがこれはそのまま政治体制に適用が可能です。つまりスピノザは,懐疑論的な政治体制は否定し,それと同時に独断論的な政治体制も否定するのです。このうち,独断論的な政治体制を否定するのは,ネグリAntonio Negriが主張する政治体制を否定するということです。そしてここには,倫理的に正しくはあるけれど非現実的であるという意味も含まれているのであり,このことは個人的な倫理にも適用できると僕は考えます。要するに,能動actioが倫理的に正しく,受動passioは倫理に反するのですが,能動だけを現実的に存在する人間に要求することは,非現実的なのです。なのでこの点は倫理学と政治学との間に乖離はみられません。一方,懐疑論者が否定されるのは,受動を推奨しているのと同じであり,これは倫理的に正しくないからです。これは,倫理学であろうと政治学であろうと変わるところはありません。ですからこの面でもスピノザの倫理学と政治学との間に,乖離が存在していないということができるでしょう。
 このような解釈の下に,僕は今はスピノザの倫理学と政治学,あるいは『エチカ』と『神学・政治論Tractatus Theologico-Politicus』および『国家論Tractatus Politicus』の間に,著しい乖離があるわけではないという解釈を採用しています。そこでこの解釈の下に,そこからどのような政治体制が,倫理的な面から,つまり『エチカ』を礎としたときに,適切な政治体制といえるのかということを考察していきます。ネグリが目指しているような政治体制が非現実的で独断論的であるというなら,独断論に陥らず,しかし懐疑論的でもない,そして現実的な政治体制というものが,そこから導かれるのでなければならないでしょう。
 こうしたことが検討されているのは『国家論』であると僕は考えます。ただスピノザが示しているのは,実は倫理に見合うような政治体制というのは,政治体制そのものに還元することができないということだと僕は解しています。これは方法論的に解決されなければならないのです。

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