スピノザの『エチカ』と趣味のブログ

スピノザの『エチカ』について僕が考えていることと,趣味である将棋・競馬・競輪などについて綴るブログです。

「エチカ」第一部の二つの因果性がめざすもの&運動と静止そして物体

2014-07-14 19:07:17 | 哲学
 『個と無限』は論文集でした。当該の問題となっているのは「「エチカ」第一部の二つの因果性がめざすもの」というもので,これは読了しましたので,概観を示しておきます。
                         
 朝倉友海が『概念と個別性』で引用したのは一の終り近く。「間接無限様態は個物でなければならない」と記されています。そして佐藤一郎はその論証に移行すると宣言しています。
 佐藤が間接無限様態は個物であるというとき,それは第一部定理二五系でいわれている個物res particularisを意味します。ただし佐藤は,ふたつの個物であるres particularisとres singularisを概念として分けていないので,このことが間接無限様態はres singularisであるということと,同一の意味だと解していると理解できます。概念内容がどうであるかは別に,これは畠中尚志や僕と一致する見解で,朝倉とは異なります。朝倉はこの点で佐藤が不十分だとみなし,反論していて,佐藤の論述に対しては有効だと僕は思いますが,それに関しては別の機会に僕の考え方を述べます。
 佐藤は論証するといっていますが,それが成功しているとは僕には思えませんでした。二の終りには,「個物を本来的には無限なもの,換言すれば間接無限様態として捉える「エチカ」の個物了解」といわれているように,佐藤の論証は僕には専ら個物が間接無限様態であるということに費やされていて,間接無限様態が個物であるというためのものにはなっていないと思われるのです。
 僕はその相違は大きいと考えます。無限であるものを有限であるとみなすことと,有限であるものを無限であるとみなすことの間には,限定と否定の関係から,大きな懸隔があると考えるからです。結果的にいえば佐藤は有限であるものは無限であるということを論証しようとしているのであり,その考え方自体はむしろ僕の考え方と一致しているといえます。
 『個と無限』のすべてを読了するのにはまだ時間が必要です。全体の書評はいましばらくお待ちください。

 ここで延長の属性の三様態を思い返すことは徒労ではありません。延長の属性の直接無限様態,いい換えれば無限な様態的変状様態化した延長の属性は,運動と静止です。そしてこの運動と静止から,第一部定理二三は,延長属性の間接無限様態である,不変の形相を有する物体的な全宇宙の姿が生起するということになっています。しかしこれは,間接無限様態と個物res singularisを分けた場合の把握です。res singularisが間接無限様態であるのなら,このことのうちに,運動と静止からは延長の属性のres singularisである物体が生起するということが含まれていることになります。
 そのように解釈することは,実はそう難しいことではありません。なぜなら,僕が示したように,物体の本性は,その運動と静止の割合によって決定され,またその相違によって様態的にあるいは同じことですが数的に区別されると解することができるからです。この運動と静止の割合というのは,その組合せということを焦点に据えるならば,無限に多く考えられ得るでしょう。人間の知性は有限ですから,実際に無限に多くの組合せを認識するということは不可能であるといわなければなりません。しかしそれが無限に多くあることができるということは,直感的に認識できます。その組合せが物体の本性であるとするなら,これは本性を異にする無限に多くの物体が存在するといっているのと同じことになります。つまり延長属性の直接無限様態である運動と静止に起因して,無限に多くの物体が存在するということになります。そしてこれら無限に多く物体のことを間接無限様態であるとするなら,第一部定理二三ではこのことが示されていると理解することができるのです。
 ただし,これは論理的にはそうなっているだけです。物体が運動と静止なしには存在し得ないのは間違いありませんが,だから原因と結果としての関係をそのまま規定してよいのかということは,スピノザの哲学においては問題のひとつを構成するだろうと思われます。そしてそのように規定してよいものかどうか,僕には,テクストからははっきりとは理解できないのです。

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