スピノザの『エチカ』と趣味のブログ

スピノザの『エチカ』について僕が考えていることと,趣味である将棋・競馬・競輪などについて綴るブログです。

王将戦&先生の排他的思想

2018-01-08 19:50:25 | 将棋
 昨日から掛川城二の丸茶室で指された第67期王将戦七番勝負第一局。対戦成績は久保利明王将が11勝,豊島将之八段が10勝。この中には久保王将の遅刻による豊島八段の不戦勝の1勝が含まれています。
 掛川市長による振駒で久保王将の先手になり,12月の同一局でも指した,6筋の位を取って先に5六に銀が進出してからの四間飛車。豊島八段の向飛車で相振飛車に。後手はその銀の進出を直接的に咎めにいくような将棋になりました。
                                     
 ここでいきなり☖4五銀とぶつけるのがその手。周到な研究があったものと思われます。先手が☗同銀と取ったので☖同歩☗3三角成☖同桂まではこう進むところ。先手は☗6六角と打ちました。
 これは12月の将棋でも似た筋が現れていて,端攻めの狙いがあります。後手は☖4四銀と直接的に狙われている4筋を手厚く受けました。ただ受けたというより,後の狙いもあったようです。
 ここで☗7七桂と跳ねたのは端攻めを厳しくする狙いですが,結果的には緩手で☗3九王のように受けておかなければならなかったそうです。
 後手は☖2五歩☗3七銀と受けさせておいて☖3五歩☗同歩☖同銀と打ったばかりの銀を棒銀のように進出させました。対して☗3六歩と打ったので☖2六歩☗同歩☖同銀で部分的には棒銀が大成功。もっとも先手がこう指したのはこれで大丈夫という見込んでいたからだと思われます。
                                     
 先手は☗2三歩と反撃。以下☖同飛☗3二銀☖3七銀成☗2三銀成☖3八成銀☗同王と一直線の攻め合いに。ただここで☖2五桂と活用し☗4一飛にも受けずに☖2八歩と進んだ局面は後手の攻めの方が早く,先手にとっては苦しい展開になっていました。
                                     
 豊島八段が先勝。第二局は27日と28日です。

 先生はに悲しみtristitiaを与えた原因がKにあることは理解できました。これによって愛する者に悲しみを与えた人間としてKに憎しみodiumを抱いたのは,完全性の移行transitio perfectionisの度合がきわめて低いレベルにあったとしても事実です。しかしそのことによって先生は直接的にはKを否定するという意識を有しませんでした。いい換えればKに対して排他的思想を有することはなかったのです。ですから,単に感情affectusのレベルだけでなく,意識としてのレベルでみた場合も,必ずしも否定的感情が排他的思想と直結するわけではないということは理解できます。
 何度もいいますが,これはこのときの事態についていうのであって,先生がKに対して排他的思想をまったく有していなかったというようには僕は解しません。すでに述べたように,先生はKに対してこれとは別の原因による憎しみを抱いていた,より正確にいえば抱いたことがあったのは間違いありません。かつそれについては遺書に記述されているのですから,自覚的であった,つまり意識していたと解するのが相当でしょう。また,先生が記述していない場合に関してもたぶん同様のことが妥当します。先生はKとの同居を決意したときにはそのことをまったく気に掛けてはいなかったと思われますが,同居するようになった後は,Kのことを静に対する恋のライバルとみなすようになったのは間違いありません。そのときには,おそらく先生はKが存在しなければ,静は自分のことを愛すると思った筈なのであって,それは先生があえて記述しなかっただけだと僕は考えます。そしてこれは明らかにKの存在existentiaを排除したいという先生の欲望cupiditasなのであって,この欲望が意識されているなら明らかに排他的思想であったといえます。よって,先生がKに対する排他的思想を有した瞬間は確実にあったと解するべきでしょう。ただ,欲望というのは第三部諸感情の定義一にあるように,受動的な状態における人間の現実的本性actualis essentiaなのであり,現実的に存在する人間は受動passioを免れ得ないのですから,すでにいったようにこの意味では現実的に存在するすべての人間が排他的思想を有していることになります。よってこの点を追究する必要はないでしょう。

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