「ここをちょっと押すと痛いのですが、心臓でしょうかねー」と訴える人がきました。
「ここ」とは、写真に示した部位で、右の第一肋骨でした。
ですから臓腑で考えると、心臓との関係は疑わず、むしろ肺との関係を疑います。
しかし若い方ですので、心臓からの体壁反射も考えにくかったので、ちょっと質問してみました。
「何か腕に力を入れる運動などでもしているのですか?」
「はい。毎日ではありませんが、腕立て伏せをしたりします」
「そうですか、原因はそこにあるかも知れませんねー」
と言いながら、脊椎診をしましたら、脊椎上部で少し右に曲がっていました。
つまり、この方は、脊椎に歪みがある状態で腕立て伏せをしたので、その歪みが肋椎関節に歪みを越し、その歪みが前面の胸肋関節まで歪みをつくって痛みが出てきたわけです。
イラストで説明すると、背中の脊椎と肋骨を結ぶ「肋椎関節」に歪みが起りますと、一本の骨でできた肋骨は、その歪みを前胸部まで波及し、そこにある「胸肋関節」(胸骨肋軟骨結合と肋骨肋軟骨結合で出来ている関節)まで歪めてしまい、肋骨間にある肋間神経に痛みが出るわけです。
ですから、根本的に治すには、背中から胸椎を整え、肋椎関節を矯正する必要があるのですが、胸が痛いという人をうつ伏せにさせるのも申し訳ないので、仰臥のままJAA(関節調整鍼)で胸肋関節を整えて、それから伏臥になってもらい、肋椎関節を整えることにしました。
※胸部への刺鍼は、下手すると気胸を起したり、肋間神経痛を起したりするので、訓練を受けてない人はしないほうがいいです。
胸肋関節を整えるJAAを施した後、
「どうですかね。その骨の痛みは」と聞くと、右手で肋骨を押しながら、
「あ、治ってます。押しても痛くないですね」と言うので、そのままうつ伏せになってもらい、肋椎関節の矯正をすることにしましたが、伏臥のまま脊椎診をすると、胸肋関節を調整したおかげと思いますが、肋椎関節も整っていました。
をれは、肋骨が一本の骨でできているからです。
そこに一つの疑問が残ります。
患者さんが、「心臓ですかねー」と言った言葉です。
心臓は左寄りにあるのに、何故そのような発言をしたのか、です。
その時は何故そのような発言をしたかを聞かなかったのですが、Webで「肋骨の痛み」を検索すると、原因として、
① 骨の異常変形による痛み
② 肋軟骨炎による痛み
③ 呼吸器官の異常による痛み
④ 心筋の異常による痛み
⑤ 末梢神経の異常による痛み
等々が検索されますので、多分、その方は前にも心筋の異常が出た経験があるので、そのように発言したと思います。
肋椎関節や胸肋関節、その他の手足の関節調整鍼は、6月22日(日)の臨床実践塾で講習を行ないます。