熱源 川越宗一(著)2019年8月発行
アイヌ研究に生涯をかけた金田一京助の書籍に登場する「山辺安之助」を
アイヌの民の主人公に、もう一人、ポーランドをルーツとしリトアニアに生まれ、
ロシアの圧政に母国語も奪われ冤罪で樺太に流刑となった「ピウスツキ」の生涯
追いかけ、この二人を軸としてロシア革命前から第一次大戦から第二次大戦までの
時期を背景に、樺太を舞台として、物語が描かれていく。
民族の優劣をつけようとする大国の政策に翻弄されながらも、
誇りを失うことなく命をかけ大国主義に争う彼らの姿を描いた壮大な歴史小説。
圧倒されながら物語にどんどん引き込まれ、一気読み。
ただ、健忘症の母は、名前が覚えきれず、度々、頁を戻し確認し直しながら、、、
でしたが。
特に、主人公の「ヤマヨネフク」と「ピウスツキ」が最後まで言えず。。。
すごく面白く読み応え満点!お薦めしたい一冊。
(追:2020年 162回直木賞受賞)
文芸春秋社の紹介文を以下に転記
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樺太(サハリン)で生まれたアイヌ、ヤヨマネクフ。
開拓使たちに故郷を奪われ、集団移住を強いられたのち、天然痘やコレラの流行で
妻や多くの友人たちを亡くした彼は、やがて山辺安之助と名前を変え、ふたたび樺太
に戻ることを志す。
一方、ブロニスワフ・ピウスツキは、リトアニアに生まれた。ロシアの強烈な同化政策
により母語であるポーランド語を話すことも許されなかった彼は、皇帝の暗殺計画に
巻き込まれ、苦役囚として樺太に送られる。
日本人にされそうになったアイヌと、ロシア人にされそうになったポーランド人。
文明を押し付けられ、それによってアイデンティティを揺るがされた経験を持つ二人が、
樺太で出会い、自らが守り継ぎたいものの正体に辿り着く。
樺太の厳しい風土やアイヌの風俗が鮮やかに描き出され、国家や民族、思想を超え、
人と人が共に生きる姿が示される。
金田一京助がその半生を「あいぬ物語」としてまとめた山辺安之助の生涯を軸に
描かれた、読者の心に「熱」を残さずにはおかない書き下ろし歴史大作。
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