http://www.mext.go.jp/a_menu/kenko/anzen/1369565.htm
「学校事故対応に関する指針」の公表について(通知)
27文科初第1785号 平成28年(2016年)3月31日 文部科学省初等中等教育局長
この2年間、文部科学省「学校事故対応に関する調査研究」有識者会議で検討を重ねてきた「学校事故対応に関する指針」が、ようやくこの3月末にリリースされました。ちなみに、私もその有識者会議の委員のひとりです。
率直にこの会議の仕事が終わってやれやれ・・・・という思いと、「くたびれました」という思い。
また、「できあがったものを着実に実行に移すお手伝いをしなければ・・・・」という思いと、「でも、まだまだ議論が不十分で、詰め切れなかった部分があるから、バージョンアップしなければ・・・・」という思い等々、いろんな思いがよぎる指針案です。
率直に「力が足りずに、ここまでのものしかできず、申し訳ありません」という思いもあります。
そこで、今、この指針案づくりのプロセスをふりかえったりして思うことを、下記のとおりまとめておきました。
今後の参考にしてください(なお、今朝、フェイスブックに書き込んだことを転載しています)。
<以下、転載部分>
文科省の「学校事故対応に関する指針」と、これを自治体教育行政に周知するため通知文がやっと、ホームページ上にアップされました(実は「まだでないのか?」と、昨日、メールで文科省に催促したところでした)。
ただ、3月22日の有識者会議の最終案から大筋に変更はないものの、その後、文科省と座長との間で詰めの検討を行って、若干、文言が変わっている部分があるかもしれません(たとえば「はじめに」にあった「技術的助言」という言葉が消えている、とか)。そのあたり、もう一度私も全体を読み直す必要にせまられています。
また、前にもフェイスブックで書いたとおり・・・。
(1)私や一部委員が強く遺族ヒアリングの必要性を主張したことによって、2014年の学校設置者への事後対応の調査の結果にもとづいて、2015年の早い段階で指針案を出すという文科省の思惑そのものはぶっつぶれて、2016年3月末まで指針案づくりはずれ込んだ。
(2)また、その思惑がぶっつぶれたことによって、遺族(団体)ヒアリングが実現した。
(3)でも、その分、指針案づくりの作業を2016年1月頃から本格的に文科省が始めることになり、「突貫工事」になってしまった。
(4)その「突貫工事」のプロセスで、文科省は自殺の背景調査やいじめ防止の国の指針、あるいは内閣府・厚労省の保育事故の防止の指針等を参照したので、それと似たような内容が随所に見られる。と同時に、そちらにある問題点が、こちらの学校事故の指針にも見られる恐れが十分にある。
(5)また、その「突貫工事」のプロセスのなかで、委員からの意見やヒアリング時の要望がいろいろ取り入れられた形跡があるが、議論そのものが時間切れで充分に深まっていないので、不十分なままの内容になっているところが随所にある(その代表的なものが「コーディネーター」に関する箇所など)。
(6)ただそれでも、文科省側もその不十分さを認識していて、今後の展開次第ではこの指針を改訂せざるをえないと考えている。そのことを指針の最後に委員からの指摘をふまえて書かせている。
(7)だから、この指針に即して各地の学校や教育行政を実際に動かしながら、同時に不十分な点や問題点を今後、被害者家族・遺族が指摘して、文科省に働きかけていく必要がある。有識者会議の委員からも、議論の継続の必要性は最後の会議で何人も訴えている(私もそのひとり)。
(8)なお、この指針は学校保健安全法がひとつの根拠となっているものであり、国立学校・公立学校だけでなく、私立学校及び私学行政にも適用されるもの。だから重大事故が起きた場合、私学は関係ないとはいえない。もしも私学が重大事故発生後、この指針を知らないとか、関係ないとか、そのようなことを言ったら、明確に「おかしい」と言うべきである。
(9)ただ、いじめ事件にはいじめ防止対策推進法と国の指針、それ以外の自殺には自殺の背景調査の指針、保育はそっちの指針と、それぞれの課題ごとに対応の根拠となるものがわかれている。ここは今までの省庁及び省庁内の縦割りの問題とともに、こちら側からも何か問題が起きるたびに「〇〇の対策を」と言ってきたことのマイナス面が現れていると思われる。国の側は「誰かが言ってきたことに、言ってきた範囲で、自分らがなるべくいろんなことしなくてもすむように、できるだけ値引きして指針等をつくる」のであれば、我々の側の問題提起のしかたについても、今後検討が必要である。
(10)そして、この指針を運用することによって生じてくる最大の問題は、「これを扱える担い手が、学校にも教育行政にも、各領域の専門家にもいないか、居ても数が足りない」という問題。当分の間、この課題を埋められるのは、おそらく私くらいになるだろうけど、でも、私もこの指針づくりだけでヘトヘトの状態で、手が回らない・・・。
以上のとおり、コメントをしておきます。
<以上、転載おわり>