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京都精華大学教員・住友剛のブログ。
関西圏中心に、教育や子ども・若者に関する情報発信を主に行います。

文科省「学校事故対応に関する指針」ができました。

2016-04-09 14:11:27 | 受験・学校

http://www.mext.go.jp/a_menu/kenko/anzen/1369565.htm

「学校事故対応に関する指針」の公表について(通知) 

27文科初第1785号 平成28年(2016年)3月31日 文部科学省初等中等教育局長

この2年間、文部科学省「学校事故対応に関する調査研究」有識者会議で検討を重ねてきた「学校事故対応に関する指針」が、ようやくこの3月末にリリースされました。ちなみに、私もその有識者会議の委員のひとりです。

率直にこの会議の仕事が終わってやれやれ・・・・という思いと、「くたびれました」という思い。

また、「できあがったものを着実に実行に移すお手伝いをしなければ・・・・」という思いと、「でも、まだまだ議論が不十分で、詰め切れなかった部分があるから、バージョンアップしなければ・・・・」という思い等々、いろんな思いがよぎる指針案です。

率直に「力が足りずに、ここまでのものしかできず、申し訳ありません」という思いもあります。

そこで、今、この指針案づくりのプロセスをふりかえったりして思うことを、下記のとおりまとめておきました。

今後の参考にしてください(なお、今朝、フェイスブックに書き込んだことを転載しています)。

<以下、転載部分>

文科省の「学校事故対応に関する指針」と、これを自治体教育行政に周知するため通知文がやっと、ホームページ上にアップされました(実は「まだでないのか?」と、昨日、メールで文科省に催促したところでした)。

ただ、3月22日の有識者会議の最終案から大筋に変更はないものの、その後、文科省と座長との間で詰めの検討を行って、若干、文言が変わっている部分があるかもしれません(たとえば「はじめに」にあった「技術的助言」という言葉が消えている、とか)。そのあたり、もう一度私も全体を読み直す必要にせまられています。

また、前にもフェイスブックで書いたとおり・・・。

(1)私や一部委員が強く遺族ヒアリングの必要性を主張したことによって、2014年の学校設置者への事後対応の調査の結果にもとづいて、2015年の早い段階で指針案を出すという文科省の思惑そのものはぶっつぶれて、2016年3月末まで指針案づくりはずれ込んだ。

(2)また、その思惑がぶっつぶれたことによって、遺族(団体)ヒアリングが実現した。

(3)でも、その分、指針案づくりの作業を2016年1月頃から本格的に文科省が始めることになり、「突貫工事」になってしまった。

(4)その「突貫工事」のプロセスで、文科省は自殺の背景調査やいじめ防止の国の指針、あるいは内閣府・厚労省の保育事故の防止の指針等を参照したので、それと似たような内容が随所に見られる。と同時に、そちらにある問題点が、こちらの学校事故の指針にも見られる恐れが十分にある。

(5)また、その「突貫工事」のプロセスのなかで、委員からの意見やヒアリング時の要望がいろいろ取り入れられた形跡があるが、議論そのものが時間切れで充分に深まっていないので、不十分なままの内容になっているところが随所にある(その代表的なものが「コーディネーター」に関する箇所など)。

(6)ただそれでも、文科省側もその不十分さを認識していて、今後の展開次第ではこの指針を改訂せざるをえないと考えている。そのことを指針の最後に委員からの指摘をふまえて書かせている。

(7)だから、この指針に即して各地の学校や教育行政を実際に動かしながら、同時に不十分な点や問題点を今後、被害者家族・遺族が指摘して、文科省に働きかけていく必要がある。有識者会議の委員からも、議論の継続の必要性は最後の会議で何人も訴えている(私もそのひとり)。

(8)なお、この指針は学校保健安全法がひとつの根拠となっているものであり、国立学校・公立学校だけでなく、私立学校及び私学行政にも適用されるもの。だから重大事故が起きた場合、私学は関係ないとはいえない。もしも私学が重大事故発生後、この指針を知らないとか、関係ないとか、そのようなことを言ったら、明確に「おかしい」と言うべきである。

(9)ただ、いじめ事件にはいじめ防止対策推進法と国の指針、それ以外の自殺には自殺の背景調査の指針、保育はそっちの指針と、それぞれの課題ごとに対応の根拠となるものがわかれている。ここは今までの省庁及び省庁内の縦割りの問題とともに、こちら側からも何か問題が起きるたびに「〇〇の対策を」と言ってきたことのマイナス面が現れていると思われる。国の側は「誰かが言ってきたことに、言ってきた範囲で、自分らがなるべくいろんなことしなくてもすむように、できるだけ値引きして指針等をつくる」のであれば、我々の側の問題提起のしかたについても、今後検討が必要である。

(10)そして、この指針を運用することによって生じてくる最大の問題は、「これを扱える担い手が、学校にも教育行政にも、各領域の専門家にもいないか、居ても数が足りない」という問題。当分の間、この課題を埋められるのは、おそらく私くらいになるだろうけど、でも、私もこの指針づくりだけでヘトヘトの状態で、手が回らない・・・。

以上のとおり、コメントをしておきます。

<以上、転載おわり>


 


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昨今の部活動の外部指導者導入と教員の負担軽減問題に関する議論に抱く「ものたりなさ」

2016-04-09 00:56:43 | 受験・学校

http://www.asahi.com/articles/ASJ46569YJ46UTIL025.html

(「ブラック」な部活顧問、負担軽減を検討へ 文科省:朝日新聞デジタル配信記事、2016年4月7日)

組体操問題でおなじみの彼が、またまた何か発言しそうなこの問題ですが、私は自分の運動部活動外部指導者としての約20年前の経験をふまえて、先に次のことを指摘しておきます。

まず、今から約20年前、私が大学院博士課程の学生で、大阪府立某高校定時制で非常勤講師(地歴・公民)をしながら、野球部の外部指導者(監督)をしていた頃(ついでに新婚ホヤホヤですが)。

その頃、1回の指導で手当は5000円いかなかったはず。

確か3000円くらいではなかったかと。

で、年間50回くらいが上限だったからなあ・・・。

でも、週3~4日、非常勤の仕事で学校に行って、その授業が終わったあと1時間~1時間半くらい、いっしょに練習してました(ケガ防止の観点と、他の部と掛け持ち組への配慮から、あえて練習日はこの程度にしてましたけど)。

これに加えて、土日祝も試合とかでけっこう出かけてましたしねえ(大会で勝ち進んだら、3週、4週と続けて試合ですわ)。「野球ばっかりしてないで・・・」と、故・岡村達雄氏(大学院の指導教授)に嫌味言われたこともありました、はい。

ただ、非常勤講師に加えてこの外部指導者やってみて、いろんな意味で「お金では買えない経験」を20代のこの頃にできて、よかったとは思ってますけどね、私。まあ、それは「教育学系の大学院生」で「当面、妻とふたりなら食っていくのに困らない」状況があって、なおかつ「今後の研究や実践の肥やし」になったから、なんですけどね。

でも、これを「仕事」として「食っていく」ことを考えたら、やっぱりこの待遇は「どうにかしてくれ・・・」って思う外部指導者、多いんじゃないかな?

だから、ここで大事なことに気付いて、立ち止まって、よく考えないといけないって思います。

「(正規)教員の負担軽減をすることによって、新たに(非正規の低賃金重労働な)職種ができるかもしれないんやで」ってことに。

そういうことにも気づかないような、その程度のレベルの部活の教員負担軽減論議って、もはや「実態からかなり、遅れてるんじゃないの??」「(正規)教員は楽かもしれんけど、他の劣悪な条件の人に自分たちのしんどさふってるだけって言われたらどうするの?」「そこまで考えておかないと、やばいんじゃないの?」って、これまでの経験上、私は思いますね。

そうそう、「ワシは口は動くけどからだは動かん」というオッチャンの教員とともに、私、コンビを組んで当時、野球部の生徒たちとつきあってました。だから対外試合なんかにはこのオッチャンの教員、必ずついてきてましたね。

練習のときも最初と最後、どっちかは必ず顔出してましたし・・・。

だから当時、たとえば野球部の生徒たちの学習面・生活指導面の諸課題は、このオッチャンの教員が引き受けていたからこそ、私はある意味、「野球どうする?」みたいな話だけで動けたわけです。

とはいえ、この高校定時制の非常勤講師の顔もある以上、私も「野球だけ」ではなく、授業に出ているときの野球部員たちの様子も知っているわけで・・・。

部活の教員負担軽減と外部指導者導入の問題については、ただ単に誰か外部から人を入れたらいいって問題ではなくて、たとえば、こういう個々の子どもの学習面や生活指導面の諸課題に、外部指導者がどこまでタッチするのか(しないのか)も大事な検討課題だと思いますよ。

でも、そういう学習面や生活指導面からの話って、不思議とこの外部指導者への委託の話では聴こえてこないなあ。

だから今の部活の教員負担軽減と外部指導者導入の問題に関する議論って、「ものたりないな」とか、「現場を知らない優等生が机上で考えたプランでしかない」って思えてしまうんですよね、私。




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