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京都精華大学教員・住友剛のブログ。
関西圏中心に、教育や子ども・若者に関する情報発信を主に行います。

昨今の部活動の外部指導者導入と教員の負担軽減問題に関する議論に抱く「ものたりなさ」

2016-04-09 00:56:43 | 受験・学校

http://www.asahi.com/articles/ASJ46569YJ46UTIL025.html

(「ブラック」な部活顧問、負担軽減を検討へ 文科省:朝日新聞デジタル配信記事、2016年4月7日)

組体操問題でおなじみの彼が、またまた何か発言しそうなこの問題ですが、私は自分の運動部活動外部指導者としての約20年前の経験をふまえて、先に次のことを指摘しておきます。

まず、今から約20年前、私が大学院博士課程の学生で、大阪府立某高校定時制で非常勤講師(地歴・公民)をしながら、野球部の外部指導者(監督)をしていた頃(ついでに新婚ホヤホヤですが)。

その頃、1回の指導で手当は5000円いかなかったはず。

確か3000円くらいではなかったかと。

で、年間50回くらいが上限だったからなあ・・・。

でも、週3~4日、非常勤の仕事で学校に行って、その授業が終わったあと1時間~1時間半くらい、いっしょに練習してました(ケガ防止の観点と、他の部と掛け持ち組への配慮から、あえて練習日はこの程度にしてましたけど)。

これに加えて、土日祝も試合とかでけっこう出かけてましたしねえ(大会で勝ち進んだら、3週、4週と続けて試合ですわ)。「野球ばっかりしてないで・・・」と、故・岡村達雄氏(大学院の指導教授)に嫌味言われたこともありました、はい。

ただ、非常勤講師に加えてこの外部指導者やってみて、いろんな意味で「お金では買えない経験」を20代のこの頃にできて、よかったとは思ってますけどね、私。まあ、それは「教育学系の大学院生」で「当面、妻とふたりなら食っていくのに困らない」状況があって、なおかつ「今後の研究や実践の肥やし」になったから、なんですけどね。

でも、これを「仕事」として「食っていく」ことを考えたら、やっぱりこの待遇は「どうにかしてくれ・・・」って思う外部指導者、多いんじゃないかな?

だから、ここで大事なことに気付いて、立ち止まって、よく考えないといけないって思います。

「(正規)教員の負担軽減をすることによって、新たに(非正規の低賃金重労働な)職種ができるかもしれないんやで」ってことに。

そういうことにも気づかないような、その程度のレベルの部活の教員負担軽減論議って、もはや「実態からかなり、遅れてるんじゃないの??」「(正規)教員は楽かもしれんけど、他の劣悪な条件の人に自分たちのしんどさふってるだけって言われたらどうするの?」「そこまで考えておかないと、やばいんじゃないの?」って、これまでの経験上、私は思いますね。

そうそう、「ワシは口は動くけどからだは動かん」というオッチャンの教員とともに、私、コンビを組んで当時、野球部の生徒たちとつきあってました。だから対外試合なんかにはこのオッチャンの教員、必ずついてきてましたね。

練習のときも最初と最後、どっちかは必ず顔出してましたし・・・。

だから当時、たとえば野球部の生徒たちの学習面・生活指導面の諸課題は、このオッチャンの教員が引き受けていたからこそ、私はある意味、「野球どうする?」みたいな話だけで動けたわけです。

とはいえ、この高校定時制の非常勤講師の顔もある以上、私も「野球だけ」ではなく、授業に出ているときの野球部員たちの様子も知っているわけで・・・。

部活の教員負担軽減と外部指導者導入の問題については、ただ単に誰か外部から人を入れたらいいって問題ではなくて、たとえば、こういう個々の子どもの学習面や生活指導面の諸課題に、外部指導者がどこまでタッチするのか(しないのか)も大事な検討課題だと思いますよ。

でも、そういう学習面や生活指導面からの話って、不思議とこの外部指導者への委託の話では聴こえてこないなあ。

だから今の部活の教員負担軽減と外部指導者導入の問題に関する議論って、「ものたりないな」とか、「現場を知らない優等生が机上で考えたプランでしかない」って思えてしまうんですよね、私。




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