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京都精華大学教員・住友剛のブログ。
関西圏中心に、教育や子ども・若者に関する情報発信を主に行います。

シンポジウム報告2:市長方針案にいたる経過等の問題

2006-11-25 15:44:51 | 新たな検討課題

例のシンポジウムからもう10日以上たってしまったのですが、私のほうの多忙と、特にこの数日は体調がすぐれず、こちらに何かを書き込む気力・体力的なゆとりがなかったので、シンポジウム報告の続きを書くのが遅れました。大変申し訳ないです。

さっそくですが、今後の大阪市の青少年施策に関するシンポジウム報告の続きを、11月13日(月)夜に話した内容に若干「加筆修正」する形で書いていきます。

今日は2回目。前回は、大阪市の青少年会館設置条例を今年度末で「廃止」するということ、青少年会館で行っている諸事業を他の社会教育施設などに移すという市長方針案を強行すれば、どのような面で社会教育や他の青少年施策の現場を「混乱」させる結果を招くか、ということについて述べました。今回は、今年10月10日にこの市長方針案が出てくるに至る経過と、市長方針案が出た以後の経過の問題を取り上げます。

まず、今年10月に出た市長方針案は、8月末の「地対財特法期限後の事業等の調査・監理委員会」(以後「監理委員会」と略)の「まとめ」に、若干の修正を加えて出したものです。とすると、市長方針の基本線は8月末で出ていた、ということになります。

ところで、この「監理委員会」で今後の青少年会館事業に関する中身が審議されたのは、私が公開されている審議経過等を見る限り、8月中の3回のみです。しかも、この3回は、他の「」施策と呼ばれるものとあわせて審議されており、青少年会館事業だけで審議されたものではありません。過去約30年近くにわたる青少年会館事業の歴史や、あるいは、今日の青少年会館事業の中身を評価するのには、私などは「たとえ『市政全般に通じている方』を委員に選んだという監理委員会でも、たった3回の審議で、いったい何がわかるの?」といいたくなってしまいます。(その「市政全般に通じている方」が出した案がどの程度のものだったかについては、前回、述べたとおりです。)

また、そもそも1999年に「」施策から一般施策へと移行して、現在は市内青少年とその保護者、地域住民、NPOなどに広く利用されている社会教育施設としての青少年会館を、この「監理委員会」の検討対象にあげること自体、本当によかったのかどうか。なにしろ、99年の時点で、市議会で青少年会館条例の改正をきちんと審議、承認して今があるわけですから、この「監理委員会」はその市議会の経過をどう見ているのでしょうか。(ついでに、市議会も、青少年会館事業を99年の条例改正により一般施策だと位置づけなおしたことについて、今、どのように考えているのでしょうか?)

続いて、この8月末に「監理委員会」の「まとめ」が出されて以来、市長以下の市政上層部が大阪市内12ヶ所の青少年会館をまわり、その利用者である子どもや保護者、地域住民、NPO、現場職員などに対して、どれだけこの「まとめ」の趣旨等について説明を行ってきたのでしょうか。特に、「まとめ」が出て以来の約2ヶ月半の間、例えば子ども・保護者・地域住民・NPOなどによって、多様な抗議活動、反対の意思表明が行われてきました。それに対して、市長以下の市政上層部はどのように対応してきたのでしょうか。

ちなみに、大阪市長は「施設の見直しについてですが、これを具体的に進めるに当たりましては、これはやっぱり幅広く市民あるいは現在利用しておられる方の御意見も聞きながら、あらゆる角度から検討して、この具体化を進めていきたい」と、今年9月25日の市議会の市政改革特別委員会で答弁しています。しかし、私が聞く限り、大阪市長が実際に青少年会館の現場を訪れたのは、この答弁後にたった1ヶ所あっただけと聞きます。市議会で答弁していることと、実際にやっていることとが、かなりずれているわけですよね。

そして、こういう答弁をして、利用者や地域住民の意見を聞くなどいっておきながら、実際のところは10月10日に、「監理委員会」の「まとめ」に若干手をくわえた程度の市長方針案が発表されている。また、その後も引き続き、利用者や地域住民、NPOなどからの抗議や反対の意思表明などが行われているにもかかわらず、あまりこういった意見に耳を傾けようとする姿勢は見られない。こういう状況をみると、「あのときの市長の市議会答弁はなんだったの?」という風にしか見えません。

しかも、今頃はすでに、市役所及び市教委内で来年度の予算や事業等のプラン作りが進んでいることかと思いますが、まだあくまでも今、出ているのは「市長方針案」でしかありません。だから、実際にいろんな内部検討を経て、「これはムリ」ということであれば、その案を「見直す」、あるいは「実施の先送り」ということだって可能なはずです。そして、市教委の管理下にある社会教育施設である以上、青少年会館の条例廃止等については、市教委の会議などの手続きを踏む必要だってあるはずです。でなければ、社会教育関係の現行法に触れ、市教委の独立性を市長が侵すということにもなりかねません。

しかし、どうも私のにらんだところでは、この「市長方針案」がすでに「既定方針」のようになって、市役所や市教委の各担当部署に下ろされてきているのではないか。また、マスメディアなどは、先日、取材に来てくれた新聞社2社はさておき、もうこの「市長方針案」が実施されるもの、というように伝えてしまっているのではないでしょうか。

そして、現在の大阪市立青少年会館は、「ほっとスペース事業」その他の事業を通じて、「行政と民間のパートナーシップ」「市民の参加・参画」「指定管理者制度の適用」といった、これからの大阪市の行財政改革の「モデル」となるような手法を取り入れつつ、どのような事業展開が可能かを模索しているところです。また、徐々に、行政とNPOなどの協力によって、新たな青少年社会教育のスタイルが形成されてきたところです。

そのような段階にある青少年会館に対して、これがかつて「」施策で建てられた施設だという過去をいまさらながらもちだし、「廃止」方針を打ち出す。このことは、大阪市長以下の上層部が「これから自分たちが青少年会館を含めた各施設に導入しようとしている行財政改革の手法を、わざわざ過去を蒸し返して、自分たちで否定しようとしている」かのように見えてしかたがありません。

だからこそ私は「いったい、大阪市はこれからの行財政改革について、何を原則にしていくつもりなのか?」「既存施設を有効利用することや、市民参加や行政と民間のパートナーシップ等々という手法でいえば、青少年会館こそこれからの大阪市の行財政改革のモデルになるべき施設なのに、いったい、市政上層部は青少年会館事業のどこを見て、事業や施策の評価をしているのか?」と、クビをかしげてしまうのです。

そして、むしろ実際に青少年施策や現場で青少年とかかわる市職員のほうが、こういった今の市長方針案の問題点に、実際の地域住民や利用者、子どもの様子を見てすぐに気づきやすい立場にありますし、実際、この矛盾点や問題点に気づいている人も多いはずです。にもかかわらず、市長以下の市政上層部は、意固地になっているのか、「上からの指示だ」といって、この問題点だらけ、矛盾点だらけの案を現場に下ろしてくる危険性が高い(というか、すでにその方向で準備を進めているのでしょう)。

要するに、こんな感じで、私は「市長以下の市政上層部の進めたい大阪市の行財政改革の方向性を前提にしても、青少年会館はそのモデルになるものであったとしても、廃止の対象になぜしなければいけないのか、理解に苦しむ」わけです。そして、これに国や他自治体での青少年施策の動向、青少年問題に関する研究の動向、これまでの青少年会館改革の取組みと現状といったことまで加味すれば、ますます、「いったい、大阪市長以下市政上層部は、青少年会館のどこをどう見てこういう方針を出したのか?」と思ってしまうわけです。


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