できることを、できる人が、できるかたちで

京都精華大学教員・住友剛のブログ。
関西圏中心に、教育や子ども・若者に関する情報発信を主に行います。

シンポジウム報告1:市長方針案を強行したらどうなるか?

2006-11-20 20:42:41 | 新たな検討課題

それでは、先週13日(月)のシンポジウムで、私から話をした内容を何度かに分けて書いていきましょう。当日の講演内容を、今、私が話しやすい項目から順番に書いていくことにします。

今回は、先月10日に出した市長方針案を強行したケース。つまり、大阪市立青少年会館の設置条例を廃止して、青少年の体験学習活動、課題を抱えた青少年の居場所づくり、職業観育成や社会参加支援に関する活動など(以後「三事業等」とここでは呼びます)を、他の社会教育・生涯学習施設などへ移した場合、どういうケースが想定されるのか。それを、私の推測として書いておきます。また、このことは、当日のシンポジウムでも話をしましたが、それプラスアルファで今、考えていることを書きます。

まず、これら三事業等の所管は、来年度以降、大阪市教委から、大阪市役所内に新設される「仮称・子ども青少年局」に移されます。しかし、今のところでは、「仮称・子ども青少年局」の設置方針が打ち出され、内部ではどのような部局にするのか検討が進んでいるようですが、私にはその具体像がまだ見えません。でも、来年春、4月にはスタートするんですよね? 本当に大丈夫なんでしょうか?

基本的に私は、大阪市役所・大阪市教委の青少年施策を担当する部局の再編・統合や、社会教育・児童福祉の連携部局の設置という方向性は、必ずしも悪いとは思っていません。しかし、他自治体行政でも同様の部局の再編・統合を行ったケースがあるようですが、これらはいずれも段階的に数年間をかけての移行であり、いきなり「来年4月から」というようなことはしません。

つまり、これだけでも本当は大きな機構改革であり、それが円滑に着地するだけでも数年間かかると思われるものを、たった半年間で「やる」というのですから、来年度、大阪市の青少年施策はそれだけで「大混乱しかねない」危険性があります。しかし、そういう危険性がありうることへの認識は、少なくとも私の目には、市長方針案には「見られない」というしかありません。

次に、青少年施策の所管部局そのものが再編・統合過程にあるなかで、青少年施策の現場である大阪市立青少年会館が、従来どおりの形態では使えない。また、上記の三事業等は大阪市内の「全市展開」ということで、徐々にではあるでしょうが、他の社会教育・生涯学習施設や市民利用施設などに移行されていきます。

しかし、その上記三事業を受け入れる側の社会教育・生涯学習施設、市民利用施設の側において、その受け入れ準備が整っているかというと、必ずしもそうではありません。

特に、今まで子どもからお年寄りまで、すでにさまざまな社会教育・生涯学習活動が実施されているところへ、これらの事業が新たに移されるわけです。そこで、移行先の社会教育・生涯学習施設や市民利用施設の利用者たちと、新たに移される三事業等の利用者たちとの間で、これらの施設の利用をめぐって、さまざまな摩擦が生じる危険性があります。ですが、これらの調整プロセスをどうしていくのかについて、現在の市長方針案では何も説明されていません。

一方、三事業のなかでも、例えば青少年会館での放課後・長期休暇中の小学生・中学生の体験活動や、不登校・ひきこもり経験者、「障害」を持つ子どもなどへの課題を抱えた青少年の居場所づくり活動には、それ相応のスペースを移行先の施設で確保していただく必要もあります。また、講義室だけでなく、例えばスポーツ設備や調理室、工作室、図書室など、多様な活動スペースを用意している施設のほうが、これら三事業の活動にとっては、さまざまな活動形態が展開できるため、メリットが大きいと考えられます。

そう考えたときに、「全市展開」にあたって実際の青少年の各種学習活動を想定した場合、大阪市内24区に既存の青少年会館の施設・設備等を参考にした新たな施設を作るならともかく、「そこが空いているから」というだけの理由で、一般的な社会教育・生涯学習施設や市民利用施設に移せばいいかというと、「そうでもない」ということになります。

さらに、市長方針案によると、今後当面は青少年会館の既存施設を「スポーツ施設」と「それ以外の施設」にわけ、スポーツ施設の部分には「公募による指定管理者制度」の適用を考えているようです。しかし、今青少年会館にあるスポーツ施設も、上記三事業のケースのような活動展開を想定し、青少年会館としてのトータルな運用を考えて設置されたものであって、いわば「バラ売り」するようなことは想定されていません。これでは、施設の持つメリットを逆に損なうのではないかとすら思われます。

そして、来年度以降、「それ以外の施設」の部分を市の「普通財産」に位置づけた上で、子育て支援サークル等の自主活動に多目的に活用すると、例の市長方針案は述べています。だとしたら、今ある青少年会館でも子育て学習活動が行われていますし、そこには多様な市民グループも関わっています。青少年会館の余裕部屋などを使った「場所貸し」的な活用形態を考えれば、この市長方針案にあることは、別に条例廃止ということをしなくても実現可能です。

また、その子育て支援サークルなどが、自分たちの活動をするためにスポーツ施設を使いたいとなったときに、今後そのスポーツ施設を「指定管理者」にゆだねたら、そのたびごとにいちいち利用申請書を書き、料金を支払い・・・・という面倒な手続きをとることになります。今なら、各館の事務室に話をつければいいだけですけどね。

こういう風に、私が少し社会教育・生涯学習の関係職員、そこを利用している地域住民や保護者・子ども、そして諸事業にご協力いただいているNPO団体関係者の立場から、この市長方針案を見ていくと、「ほんと、来年からこんな案実施されたら、現場も市役所・市教委も大混乱しかねないし、子どもや保護者・地域住民に大きなしわ寄せが来る」としか思えないんですよね。

少なくともこの市長方針案でいくことを前提にしても、最低でも3~5年くらいの移行期間をおかないと、現場も住民も、そして子どももNPOも大混乱するだろう、としか思えないんですよ。それがどうして、市政上層部には分からないのかな、としかいいようがないのです。

しかも、何度もこのブログ上で「市民の声」を使った市役所側とのやりとりを紹介してきましたが、市役所側はこの市長方針案のもとになった、「地対財特法期限後の事業等の調査・監理委員会」の「まとめ」を高く評価してますし、外部からの方を中心に、「市政全般に通じている方」を「委員」にお願いしてこの「まとめ」をつくったといいます。

でも、こうやって実際の住民や子ども、現場職員やNPOの側から見れば、この「まとめ」や市長方針案のどこがいいのか。高く評価するというけど、「はぁ? どこがそうなの?」といいたくなってきますよね。本当に「市政全般に通じている方」たちの集まりであれば、こういう事態が訪れる危険性も想定した上で、それを回避することのできるような内容で「まとめ」をつくっていただきたかったです。

ということで、まずはシンポジウムで話をしたことの要点の1つめに多少の追加事項をまじえて、私の意見を述べておきます。


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まずは「声をあげていく」こと。

2006-11-20 20:01:27 | 私の「仲間」たちへ

ようやく本来の大学での仕事にもメドがつきましたし、今日でちょうど先週のシンポジウムから1週間たちました。そろそろ、徐々にですが、先週のシンポジウムでしゃべった内容をもとにして、大阪市立青少年会館の存続問題や、大阪市の今後の青少年施策の展望などについて、私の考えを述べていきたいと思います。

その前に、たぶん新聞の大阪版のページだけだろうと思うのですが、先週のシンポジウムについては、産経新聞と大阪日日新聞がその様子を伝えたそうです。住んでいる地域がちがうので私の家では読むことができないのが残念ですが、記事を送ってもらえる人が見つかったので、近々、読もうと思います。

それにしても、他の新聞社はこの問題について、市長側のコメントなどは伝えても、青少年会館の現場や「市民」の動きをちっとも追わないのが気になります。その分、他の新聞を読んでいる人は、自分たちはこの大阪市立青少年会館のことや、青少年施策の今後について、市長側の流す情報が物事の理解の前提になっていることを、よく自覚していただきたいものです。他の新聞社は、この件以外の分野ではさておき、大阪市の青少年会館のことや今後の大阪市の青少年施策については、大阪市長側と意見の違う層の意見も書くなどして「バランスよい記事を書く」ということすら、今はできていないようなのですから。

それから、もうひとつ。「市民」といっても、実にさまざま。青少年会館の周辺地域に住んでいる人々や、今、青少年会館での諸活動に参加している子どもや保護者、これも「市民」です。また、青少年会館での諸事業の運営に積極的にかかわっているNPOや社団法人などのメンバー、この人たちも「市民」です。そして、青少年会館の職員や市役所・市教委の職員だって、勤務時間を過ぎて家に戻れば「市民」です。

「市民の声」といっても、実際のところは「多様」なのです。だから、市長・市政上層部及び市議会のみなさんは、今、「市民の会」で動いている人々のことを「変な動きがおきた」などといわず、まずはこの人たちの声に耳を傾けていただきたい。というか、この動きを「変な動き」としかいえない市政上層部や市議会の関係者がいたとしたら、そのご自分の感覚のほうを疑っていただきたい、とすら思いますね。みなさんが今まで聞いていて、当たり前だと考えていたのは、しょせん「一部」の「市民」の声でしかなかった、ということがおわかりいただけると思いますので。

さらに、今、少しずつ行動をしはじめた「市民の会」のみなさんへ。

シンポジウム当日もいいましたが、これまでのとりくみにくわえて、まずは身近な人を相手にクチコミでもいいですし、ブログやメールなどを積極的に活用してもいいですから、今、大阪市の青少年会館のこと、大阪市の今後の青少年施策のことについて、知っていること、感じていることを、積極的に情報発信してください。

先に書いたように、マスメディアが市長側からの情報を伝えていても、この大阪市の青少年施策のあり方に疑問を投げかける側からの情報は、あまり伝えられていません。だから、青少年会館の存続問題や、大阪市の今後の青少年施策のことについて強い関心を持っていても、意外と現在の状況や何が問題点なのかを知らない人々が、この大阪市内・大阪府下でもたくさんいるように思います。

まずは自分たちの話をちゃんと聞いてくれる層、その強い関心を抱いてくれる層を相手にメッセージを発する形でもいいので、とにかく、ひとりひとりがきちんと声に出して、「青少年会館条例を来年3月末で廃止するなんて、これは何かおかしい」とか、「このままいくと大阪市の青少年施策はぐちゃぐちゃになる」とか、思いつくままに情報を発信しましょう。

そして、さらに動ける人がいたら、大阪市長及び市政上層部に、あるいは大阪市議会に、マスメディアに、あるいは私のようにネット界の人々に、メッセージを発信しつづけるようお願いします。単発的に声をあげることも大事ですが、持続的に、しつこく、同じことを言い続けるのも大事ですので。


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