それでは、先週13日(月)のシンポジウムで、私から話をした内容を何度かに分けて書いていきましょう。当日の講演内容を、今、私が話しやすい項目から順番に書いていくことにします。
今回は、先月10日に出した市長方針案を強行したケース。つまり、大阪市立青少年会館の設置条例を廃止して、青少年の体験学習活動、課題を抱えた青少年の居場所づくり、職業観育成や社会参加支援に関する活動など(以後「三事業等」とここでは呼びます)を、他の社会教育・生涯学習施設などへ移した場合、どういうケースが想定されるのか。それを、私の推測として書いておきます。また、このことは、当日のシンポジウムでも話をしましたが、それプラスアルファで今、考えていることを書きます。
まず、これら三事業等の所管は、来年度以降、大阪市教委から、大阪市役所内に新設される「仮称・子ども青少年局」に移されます。しかし、今のところでは、「仮称・子ども青少年局」の設置方針が打ち出され、内部ではどのような部局にするのか検討が進んでいるようですが、私にはその具体像がまだ見えません。でも、来年春、4月にはスタートするんですよね? 本当に大丈夫なんでしょうか?
基本的に私は、大阪市役所・大阪市教委の青少年施策を担当する部局の再編・統合や、社会教育・児童福祉の連携部局の設置という方向性は、必ずしも悪いとは思っていません。しかし、他自治体行政でも同様の部局の再編・統合を行ったケースがあるようですが、これらはいずれも段階的に数年間をかけての移行であり、いきなり「来年4月から」というようなことはしません。
つまり、これだけでも本当は大きな機構改革であり、それが円滑に着地するだけでも数年間かかると思われるものを、たった半年間で「やる」というのですから、来年度、大阪市の青少年施策はそれだけで「大混乱しかねない」危険性があります。しかし、そういう危険性がありうることへの認識は、少なくとも私の目には、市長方針案には「見られない」というしかありません。
次に、青少年施策の所管部局そのものが再編・統合過程にあるなかで、青少年施策の現場である大阪市立青少年会館が、従来どおりの形態では使えない。また、上記の三事業等は大阪市内の「全市展開」ということで、徐々にではあるでしょうが、他の社会教育・生涯学習施設や市民利用施設などに移行されていきます。
しかし、その上記三事業を受け入れる側の社会教育・生涯学習施設、市民利用施設の側において、その受け入れ準備が整っているかというと、必ずしもそうではありません。
特に、今まで子どもからお年寄りまで、すでにさまざまな社会教育・生涯学習活動が実施されているところへ、これらの事業が新たに移されるわけです。そこで、移行先の社会教育・生涯学習施設や市民利用施設の利用者たちと、新たに移される三事業等の利用者たちとの間で、これらの施設の利用をめぐって、さまざまな摩擦が生じる危険性があります。ですが、これらの調整プロセスをどうしていくのかについて、現在の市長方針案では何も説明されていません。
一方、三事業のなかでも、例えば青少年会館での放課後・長期休暇中の小学生・中学生の体験活動や、不登校・ひきこもり経験者、「障害」を持つ子どもなどへの課題を抱えた青少年の居場所づくり活動には、それ相応のスペースを移行先の施設で確保していただく必要もあります。また、講義室だけでなく、例えばスポーツ設備や調理室、工作室、図書室など、多様な活動スペースを用意している施設のほうが、これら三事業の活動にとっては、さまざまな活動形態が展開できるため、メリットが大きいと考えられます。
そう考えたときに、「全市展開」にあたって実際の青少年の各種学習活動を想定した場合、大阪市内24区に既存の青少年会館の施設・設備等を参考にした新たな施設を作るならともかく、「そこが空いているから」というだけの理由で、一般的な社会教育・生涯学習施設や市民利用施設に移せばいいかというと、「そうでもない」ということになります。
さらに、市長方針案によると、今後当面は青少年会館の既存施設を「スポーツ施設」と「それ以外の施設」にわけ、スポーツ施設の部分には「公募による指定管理者制度」の適用を考えているようです。しかし、今青少年会館にあるスポーツ施設も、上記三事業のケースのような活動展開を想定し、青少年会館としてのトータルな運用を考えて設置されたものであって、いわば「バラ売り」するようなことは想定されていません。これでは、施設の持つメリットを逆に損なうのではないかとすら思われます。
そして、来年度以降、「それ以外の施設」の部分を市の「普通財産」に位置づけた上で、子育て支援サークル等の自主活動に多目的に活用すると、例の市長方針案は述べています。だとしたら、今ある青少年会館でも子育て学習活動が行われていますし、そこには多様な市民グループも関わっています。青少年会館の余裕部屋などを使った「場所貸し」的な活用形態を考えれば、この市長方針案にあることは、別に条例廃止ということをしなくても実現可能です。
また、その子育て支援サークルなどが、自分たちの活動をするためにスポーツ施設を使いたいとなったときに、今後そのスポーツ施設を「指定管理者」にゆだねたら、そのたびごとにいちいち利用申請書を書き、料金を支払い・・・・という面倒な手続きをとることになります。今なら、各館の事務室に話をつければいいだけですけどね。
こういう風に、私が少し社会教育・生涯学習の関係職員、そこを利用している地域住民や保護者・子ども、そして諸事業にご協力いただいているNPO団体関係者の立場から、この市長方針案を見ていくと、「ほんと、来年からこんな案実施されたら、現場も市役所・市教委も大混乱しかねないし、子どもや保護者・地域住民に大きなしわ寄せが来る」としか思えないんですよね。
少なくともこの市長方針案でいくことを前提にしても、最低でも3~5年くらいの移行期間をおかないと、現場も住民も、そして子どももNPOも大混乱するだろう、としか思えないんですよ。それがどうして、市政上層部には分からないのかな、としかいいようがないのです。
しかも、何度もこのブログ上で「市民の声」を使った市役所側とのやりとりを紹介してきましたが、市役所側はこの市長方針案のもとになった、「地対財特法期限後の事業等の調査・監理委員会」の「まとめ」を高く評価してますし、外部からの方を中心に、「市政全般に通じている方」を「委員」にお願いしてこの「まとめ」をつくったといいます。
でも、こうやって実際の住民や子ども、現場職員やNPOの側から見れば、この「まとめ」や市長方針案のどこがいいのか。高く評価するというけど、「はぁ? どこがそうなの?」といいたくなってきますよね。本当に「市政全般に通じている方」たちの集まりであれば、こういう事態が訪れる危険性も想定した上で、それを回避することのできるような内容で「まとめ」をつくっていただきたかったです。
ということで、まずはシンポジウムで話をしたことの要点の1つめに多少の追加事項をまじえて、私の意見を述べておきます。