角館草履の『実演日記』

〓袖すり合うも多生の縁〓
草履実演での日々の出会いには、互いに何かしらの意味があるのでしょう。さて、今日の出会いは…。

かくありたい生き方。

2016年02月25日 | 実演日記







今日の草履は、彩シリーズ25cm土踏まず付き[五阡六百円]
ワインレッド基調の花札プリントに、紫の無地を組み合わせてみました。一般に男性用サイズの25cm以上でも、こうした紫基調をときどき編みます。これは私の好みということもあるのですが、実際に意外と早く選ばれていくんですね。男の色気とでもいいますか、ナイスミドルになかなかお洒落だと思います。さて「今日の草履」はどのような男性がお持ち帰りになりますか、その日を楽しみに待ちたいと思います。

早朝夜間に自宅で草履を編むときは、耳の友がラジオです。先日の朝、徳光和夫さんがパーソナリティーを務める番組に、堺正章さんがゲストで出演していました。長いキャリアを持ちながら、今もバラエティ番組の第一線でMCを続ける堺正章さん。徳光さんの「そこまで頑張るのはどういったお考えからですか?」の問いかけに…

『ボクね、大物になりたくないんですよ。大物になっちゃうとみんな大事にはしてくれるけど、若い人たちが気軽に声を掛けてくれなくなっちゃうでしょ』

堺正章さんのこの言葉を聴いて、四年近く前のとある出来事を思い出しました。2012年6月29日、この日俳優の地井武男さんがこの世を去りました。地井さんとの直接のご縁は「ちい散歩」角館ロケの20分余りしかありませんが、実演席に掲示してあるロケ風景の写真を通して、今なおお客様との数知れないご縁に発展しています。
朝のニュースで訃報を聞いた私は、ロケ後メールでご注文をくださった女性ADさんへお悔みのメールを送りました。4、5日経って届いた彼女からの返信は…

地井さんを思い出すとき、ちい散歩の地方ロケがとにかく忘れられません。宿泊になることが多く、夕食の後まで地井さんのお話を聞けた思い出を一生忘れません。

当時女性ADさんは二十代だと思います。そんな若い女性が七十にもなる地井さんとの会話が忘れられないといいます。華やかな主役を飾ることはなかった地井武男さんは、ひとまず堺正章さんの言葉を借りれば「大物」ではなかったかもしれません。しかしその世界で働く若者たちにしっかりとその存在感を遺しました。おそらく堺正章さんもそうした生き方を理想としているのでしょう。あえて私は「大物」と言いたいですよ。

私も五十三歳を迎え、気付けば周囲に年上がずいぶん減りました。明晩は角館あきんど塾の例会がありますが、ここでもほとんどが年下です。堺正章さんや地井武男さんのようには到底なれないとしても、「かくあるべし」は肝に銘じておきたいと思っています。
コメント (2)
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