緑陽ギター日記

趣味のクラシック・ギターやピアノ、合唱曲を中心に思いついたことを書いていきます。

NLPによって対人恐怖症は改善されるのか(3)

2023-08-23 21:55:12 | 心理
(前回からの続き)

人間が長期間に渡って、家庭内の虐待、学校や職場でのいじめなど、逃げ場のない環境下によって多くの人間から精神的攻撃を受け続け、しかも助けとなる味方が一人も得られなかった場合、その人は、人間全てを絶えず攻撃してくる敵と認識し、その体験の積み重ねによりその感じ方が単なる認識から信念に至るまで強化され、定着するようになる。
これが対人恐怖症の1つの大きな側面であるが、もう1つの重要な大きな側面として、「自己否定」による恐怖感情の増大があげられる。

親との原初体験で、「怒られたり、責められたりするのは自分が悪いからだ、自分に非があるからだ」という受け止め方を身に付けてしまうと、その後の人生における数多くの人間関係による体験の積み重ねでその「自己否定」の構えが強化され、強固に定着していく。
自己否定の構えがまだあるレベルまで到達せず、もし心を通わすことの出来る人間関係が少しでも得られているのであれば、内気、引っ込み思案といった性格特徴にとどまり、本人はある程度はこの状態を受け入れていくことが可能なものと考えられる。
しかしこの段階からさらに強く、度重なる精神的攻撃を受け続けると、もはやこの状態での自己を受け入れることが出来なくなり、攻撃に対する防衛反応として、「この今の自分ではない、人から責められたり、馬鹿にされたりしないような立派で優秀で強い人間にならなければならない」という、強い恐怖に動機づけられた強迫的な非現実的理想的自己実現の行動に駆り立てられていくようになる。
つまり、人から責められるような頼りない、弱い自分を激しく憎み、人から責められないばかりでなく、多くの人から賞賛されるような現実離れしたような理想の人間像の実現に向けて、強迫的に凄まじいほどの努力を重ねていくパターンが、まるで「自動回路」のように潜在意識に刷り込まれ、強化され、常態化していくのである。

この強迫的「自動回路」は背後にある強い恐怖に動機づけられているが、この自動回路による強迫的行動が繰り返し強化されさばされるほど、心が破壊、崩壊していき、最後には自殺に行き着く。
よく、オーバーワークを原因としてある日突然、自殺する人がいるが、そのうちの多くが、この強迫的、自己破壊的な、コントロール不能なまで潜在意識に定着した自動回路に従って生きた結果によものだと私は思っている。
燃え尽き症候群などもこの1つの表れであろう。

このような人は、「自分が悪いから、自分に非があるから、自分が至らないから、人から責められた」ということを信じて疑わなかった人たちなのである。
真面目であるがゆえに、非のある自分を直そうとすさまじい努力をした人たちなのだ。
心理療法の世界で最も難しいのが、このような状態になってしまった人たちを救うことなのである。
心が正常な働きをするまで回復させるのに膨大な年月を要する。

NLPが導入されてから半世紀近く経過しているが、NLPがこのような心理状態の回復に有効な手法として広く活用されているという話は一度も聞いたことはない。
潜在意識に長い年月、強固に定着された自己否定の強迫的自動回路の発動を停止させるのは容易ならざるものなのだ。

ではこの「自己否定の強迫的自動回路」を消滅させ、本来のその人の根源的な「純粋動機」に従って、自然なありままに生きられるようにするにはどうしたらよいのだろうか。

(この続きは次回書きます)



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