緑陽ギター日記

趣味のクラシック・ギターやピアノ、合唱曲を中心に思いついたことを書いていきます。

G.ギンズブルグ演奏 チャイコフスキー ピアノ協奏曲第1番を聴く

2014-12-26 21:38:47 | ピアノ
グリゴリー・ギンズブルグ(1904~1961)という旧ソ連のピアニストの演奏を聴いてみた。
インターネットで検索してもあまり情報はない。しかしピアノ通の方であればきっと録音を聴いているに違いない。
聴いたのは、チャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番、リストのピアノ協奏曲やバッハの編曲ものが収録されたCDである。
チャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番は2年前に随分と聴き比べをした。40種類くらいは聴いたであろうか。
この曲を聴いて私はピアノの演奏に惹き込まれるようになった。中学校2年生の頃だったか。
家にあった古いレコード、それはアルトゥール・ルービンシュタインの演奏であったが、夜中の静寂の中でヘッドフォンを付けて聴き入ったものだ。
このピアノ協奏曲第1番の録音で素晴らしいと思うのは、先のアルトゥール・ルービンシュタイン(エーリッヒ・ラインスドルフ指揮)、スヴャトスラフ・リヒテル(エフゲニー・ムラヴィンスキー指揮)、ウェルナー・ハース(エリアフ・インバル指揮)などである。
これらの演奏は以前ブログで紹介した。
今回聴いたギンズブルグの演奏は、コンスタンチン・イワノフ指揮によるものであり、1950年の録音である。
モノラル時代の古い録音であり、音はかなり悪いが、しっかりと聴き手に届いてくる演奏だ。
ギンズブルグの演奏は豪快という表現はあてはまらない。ピアノの力強い音の魅力を最大限に引き出した演奏、といった方が適切かもしれない。
一見、鍵盤を力強く叩いて豪快な演奏をしているようで、実はそうではなく、太く力強い低音、ピーンと張りつめたような芯のある透明な高音の魅力を聴き手に伝えようとしているように聴こえる。
この説得力のあるタッチは現代の演奏ではないものであろう。
この強いタッチでのテクニックも驚くほどのものである。
第1楽章冒頭の主題のあとに下記のような超絶技巧を要する部分が出てくるが、胸のすくような素晴らしい演奏だ。



第3楽章最後の聴かせどころである下記のフレーズは、やたら速くても軽い演奏が多いが、ギンズブルグの演奏は速度を速くし過ぎることはなく、1音1音を明確に弾き分けたものである。



1950年のスタジオ録音だから、編集録音もなかったのであろうが、完璧に近い演奏である。
この曲で、軽いタッチの演奏に慣れきってしまった人は是非このギンズブルグの録音を聴いて欲しい。
タッチが軽くてシャリシャリした音と、このギンズブルグの骨太の音を聴き比べることで、現代の演奏に欠けてしまったものを見出せるかもしれない。
私はCDで聴いたが、Youtubeでも確か公開されていたと思う。



【追記20141227】

ギンズブルグが演奏するチャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番の録音がYoutubeにあったので下記に掲載しておきます。



またギンズブルグはショパンもなかなかの演奏です。
再生回数に占める高評価数の割合が高いのもうなずける演奏。



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藤掛廣幸作曲「詩的二章」より第1章を聴く

2014-12-20 23:23:35 | マンドリン合奏
藤掛廣幸の「詩的二章」と題するマンドリン・オーケストラ曲に1週間ほど前に出会ってから毎日のように聴いている。
藤掛廣幸のマンドリン・オーケストラ曲の中でも初期の作品である。



1975年に「パストラル・ファンタジー」、1978年に「スタバート・マーテル」、1981年に「グランド・シャコンヌ」という傑作が相次いで作曲されたが、この「詩的二章」は1978年に作曲された。私が思春期のころであるが、藤掛氏は20代終わりの頃であろう。
「詩的二章」は第一章と第二章があるが、第一章「波と貝殻」はYoutubeで聴くことが出来る。第二章「捨てた種」はToutubeでは公開されていない。藤掛氏が編集したCDで聴くことができる。
第一章「波と貝殻」は先に述べたように1970年代に作曲された。
曲を聴けば1970年代の雰囲気が蘇ってくるのではないか。多分若い方には分からないと思う。
この時代は今までの日本で、最も感性や情緒面で最も活発な時代であった。
1960年代後半からこの1978年くらいまでに作られた、ドラマ、映画、アニメ、時代劇などには今改めて見ても素晴らしいと感じるものが多い。シンプルであるが心に受ける強さが現代のものとはけた違いである。
音楽も例外ではなく、この「波と貝殻」もシンプルな音楽であるが、何度も繰り返し聴いてしまう強い魅力をもっている。
シンプルな旋律を持つ音楽は山ほどあるが、聴き手の感情を強く刺激するものは少ない。
豊かな自然の美しさに触れた時の感動、思春期の多感な頃に、心優しい人たちの気持ちに触れて感じたもの、小説や詩を読んで感銘したこと、明日、朝起きて1日が始まるのが楽しみだと希望を感じるとき、この曲を聴くとそのような強い感情を感じる。70年代はそのような時代であった。私の人生の中でも最もいい時代であった。
1980年代に入り、クラシック作曲界は機能調性を取り戻した。調性音楽が復活しても、耳に心地よいが、軽く力の無い、聴くにもエネルギーを消費しない音楽が多くなったように感じる。

この「波と貝殻」は中条雅二の詩をもとに作曲されたと言われている。
マンドリンソロとマンドリン・オーケストラとのマンドリン協奏曲の形式で演奏されるが、冒頭のマンドリンソロはかなり演奏困難なようだ。重音を使っているからなのか。
なお、Youtubeでは女声のソロとの共演した録音も聴くことができた。この女声が素晴らしい。アマチュアの方なのだろうが、歌唱力がすごい。



下のCDは10年くらい前に藤掛氏の事務所から直接購入したもので、「詩的二章」の第一章と第二章が両方収録されている。
しかしCDを買ったときにはこの曲を聴いていなかったと思われる。

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立教大学マンドリンクラブ 第48回定期演奏会を聴く

2014-12-14 00:19:17 | マンドリン合奏
今日(12/13)、埼玉県大宮ソニックシティ大ホールで、立教大学マンドリンクラブの第48回定期演奏会が開催され、聴きに行った。
この大宮ソニックシティ大ホールは今年の9月初めに行われたNHK全国学校音楽コンクール、関東甲信越ブロック大会が開催されたところでもある。かなり広いホールだ。
今日この演奏会に行く直接のきかっけとなったのは、プログラムに鈴木静一の曲があったからだ。
先日聴きに行った中央大学や法政大学工学部も同様に鈴木静一の曲を取り入れていた。
今日の立教大学マンドリンクラブのプログラムを見ると、第1回から第47回までの定期演奏会の全ての演奏曲目が記載されていた。
驚いたのは、第10回(1976年)から毎年必ず定期演奏会の曲目に鈴木静一の曲を取り入れてきたことである。
これは凄いことだと思う。私の母校のマンドリンオーケストラも1980年代終わりごろから鈴木静一の曲を定期演奏会で弾かなくなったように、鈴木氏の曲は時代遅れの曲ように扱われてきた感があるからだ。
立教大学マンドリンクラブは鈴木静一の曲に対し特別の思入れを持っているに違いにない。
またC.O.ラッタの「英雄葬送曲」も演奏回数が多いのが目についた。この曲は学生時代に演奏したことがあるが、素晴らしい曲である(下の写真はギター・パートの譜面の一部)。



さて今日の演奏曲目であるが。以下のとおり。

Ⅰ部
・黄昏前奏曲 作曲:D.ベルッティ
・夜想的間奏曲 作曲:R.クレパルディ
・歌劇「サムソンとデリラ」より”バッカナール” 作曲:C.C.サン=サーンス/編曲:小穴 雄一

Ⅱ部
・クラブオリジナル「夢のなか」 作曲:関花凛
・交響詩「比羅夫ユーカラ」(北征の史) 作曲:鈴木静一

Ⅲ部
・イスパニア・カーニ 作曲:P.マルキーナ/編曲:服部正
・ナポリ狂詩曲 作曲:R.カラーチェ/編曲:藤原美和
・交響曲第9番「新世界より}第四楽章 作曲:.ドヴォルザーク

Ⅰ部の 黄昏前奏曲と 夜想的間奏曲はマンドリン・オーケストラのオリジナル曲で1930年頃に作曲されたとのことであるが、初めて聴く。マンドリンの発祥地イタリアらしい優雅な曲想だ。
Ⅱ部の1曲目はサブ指揮者の女性自らが作曲したとのこと。アナウンスで紹介されたように疲れを癒してくれるような愛らしい曲。このように演奏者自らが作曲した曲をプログラムに取り入れるのは初めて見る。クラブ員たちの工夫と努力を垣間見た。
2曲目は鈴木静一の交響詩「比羅夫ユーカラ」(北征の史)。
この曲は以前、私のブログで紹介したので詳細は省略するが、終わり近くのクライマックスの前に奏でられる、何とも暗く悲しい旋律が印象的な曲である。
今日の演奏は、ソプラノ独唱を初め、フルート、木管、打楽器、ピアノ等を含め、総勢70人のフルメンバーでの演奏であった。
壮大に終わることの多い鈴木静一の曲の中でもこの曲は、静かに悲しく終る。生活を追われて滅亡したアイヌ民族の悲痛な叫びを見事に表現した曲だ。
Ⅲ部の ナポリ狂詩曲はめずらしい、マンドリン・ソロとマンドリン・オーケストラとの協奏曲であった。
ソロはコンサート・ミストレスであり、自らが編曲した力演であった。
最後はおなじみの「新世界より}第四楽章。クラシックの名曲を終曲にもってくるのは、私の大学時代のプログラミングとは趣が違っていたが、このスケールの大きな曲をほとんど乱れることなく弾き切った。

今回の立教大学も女性が主導となっていた。
指揮者はメイン、サブともに女性。コンサート・マスターも女性。コントラバスにも女性がいた。メンバーも女性が多い。そのせいか、私にはやや迫力、パワー、情熱といったものに物足りなさを感じた。演奏を見ていると男性陣にもっと頑張ってほしいと感じる。

マンドリン・オーケストラの曲には名曲と言える曲が限られており、プログラミングはどの大学でも苦労するようだ。
現代の作曲家がもっとマンドリン・オーケストラに目を向けて、コンサートで聴衆が大きな感動に包まれるような曲を作ってくれることを期待したい。
また、立教大学マンドリンクラブには、鈴木静一の曲を今後も定期演奏会の曲目として絶やさぬよう、是非お願いしたい。

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2014年(第57回)東京国際ギターコンクールを聴く(続き)

2014-12-13 00:21:54 | ギター
異なる職場の数人との飲み会に行った。普段は車通勤なので所属する職場の忘年会などでしか飲みに行かない。しかしこういう飲み会は疲れる。やはりリラックスできる人たち数人でたまに飲むのがいい。
先週開催された東京国際ギターコンクールを聴いた感想の続きを書くことにする。
1週間経過し記憶も薄れてきたが、当日のメモをもとに感じたことを述べさせていただく。
課題曲は伊福部昭作曲「箜篌歌」。
コンクールの課題曲に対する評価のウェイトはどの程度なのであろう。もし50%だとしたら順位は相当変わっていたかもしれない。
アルペジオが始まる”Allegetto elegantemente, non tanto esagerato il canto”の速度指定は♩≒84であり、思ったよりも速目の速度である。
奏者の中にはこのアルペジオのメロディーラインをかなり強調し、メロディを奏でる弦以外の音は軽く流すような演奏をしていたが、メロディを浮かび上がらせるにしても他の音も一音一音毎に存在感のある芯のある音で奏でて欲しかった。
この曲の場合、この「他の音」は伴奏ではない。
芯の無い、平べったい大きな音でメロディラインを強調し過ぎると、テンポも速いこともあり行進曲のように聴こえてしまう。海外の奏者にこのような傾向があったように思う。
また数小節を飛ばしたり、音符を間違えて記憶して弾いている奏者がいたが、課題曲の場合、審査員はかなりシビアに譜面を見ているので注意すべきだ。
2位の奏者が、自由曲が素晴らしい演奏だったのにもかかわらず1位になれなかったのは、このような課題曲の弾き方があったため、減点されたのだと思われる。
また前回のブログで述べたが、終わり近くの”Piu Mosso”から、それまでのテンポよりも、より速く弾かなければならないのだが、この速度の差が殆ど感じられない、または後で徐々に速く弾くような演奏が多かった。
ここを境にテンポを速めると共に、より感情を込め、ffで強い感情のピークを表現し、徐々に音量を下げていくのであるが、このffの部分の盛り上がりが今一つ伝わってこなかった。
私としては、順位は低かったが、課題曲の演奏で5位の斎藤優貴さんの演奏が、音に力があり、芯があり、オーソドックスな表現でありながらこの曲の持つ感情を素直に表現していると感じた。先に述べた”Piu Mosso”からの速度も指定通りの変化を付けた完成度の高い演奏であった。

自由曲の演奏で印象に残ったのは、第4位の方のタランテラ、第2位の方のスカルラッティのソナタ、同じくロドリーゴのトッカータであった。
スカルラッティのソナタは原曲は鍵盤楽器の曲であるのでギターで弾くのは難しいのであろうが、とても柔らかい指使いで、巧みに弾いていた。ギターの場合、装飾音が濁ったり、変に浮き出てしまいがちであるが、流れるように自然に弾いているのが印象的であった。

今回のコンクールでは、音量が大きくインパクトが強い楽器を使用したことで、評価につながったように思う。
ただこのような音量重視の楽器は、1回聴いたときのインパクトは強いが、何度も聴いているとうるさく感じることがある。コンクールでは音量は評価にとって非常に大きな要素であるが、音質面での評価も期待したい。第4位の方の高音はかなり魅力を感じる音であった。
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2014年度(第57回)東京国際ギターコンクールを聴く

2014-12-08 00:24:27 | ギター
今日(7日)、東京代々木の白寿ホールで第57回東京国際ギターコンクールが開催された。
昨年度からこれまでの東京文化会館小ホールから白寿ホールへ変わった。
この白寿ホールは収容人数が少ないため、昨年は当日券が発売できないという恐らくこのコンクール始まって以来の事態となったため、聴きに行くことができなかったが、今年度は早めに前売り券を確保した。
それでも今年はいくらか空席があった。コンクールへの応募者も今年は昨年に比べ減少したようだ。
審査員もがらっと変わった。ギタリストによる審査員はいつもの顔ぶれであったが、ギタリスト以外の審査員は今までと全く異なる方々。失礼ながら私はこの審査員の方々の名前は初めて聞く。
今年の課題曲は伊福部昭作曲「箜篌歌」。
伊福部昭のギター曲のうち最も演奏時間が長く、難易度の高い曲である。
西アジアから中国を経て古代日本に伝わったとされるハープのような楽器の残闕からインスピレーションを得て作曲された言われている。
演奏時間約20分からなる大曲である。序奏の後、美しい日本旋法によるアルペジオ(分散和音)が続き、中間部は静かな暗黒の闇に吹く風のなびきを表現したかのような厳かな曲想がかなり長い間続き、再び前半のアルペジオを再現される。
この課題曲の演奏時間の長さからか、1人当たり持ち時間は45分。午後1時に開演して、審査発表が終わったのが7時半となり、さすがに疲れた。帰りも遅くなったので、審査結果と感想を一言書いて今回は終わりにしたい。
詳細は後日詳しく報告したいと考える。

さて気になる審査結果であるが、以下のとおり。
カッコ内は私が付けた順位。

1位:Thomas Csaba(フランス) (2位)
2位:Xavier Jara(アメリカ) (1位)
3位:小暮 浩史(日本) (5位)
4位:Cameron O'Connor(アメリカ) (3位)
5位:斎藤 優貴(日本) (4位)
6位:山田 大輔(日本) (6位)

日本人が3人入賞とは、このコンクールで長い間無かったことだ。海外からの参加申し込み数が前回26名に対し、今回9名と激減したことにもよるのかもしれない。日本人参加者にとっては有利だったようだ。
今回のレベルは国内勢はあまり例年と変わらなかったが、海外勢のレベルは高かった。
10年前くらいに、アレクサンダー・レンガチ、トーマス・ツヴィエルハ、ホルヘ・カバレロといった強者たちが競い合った大会を思い出させるハイレベルな演奏であった。
惜しくも2位となった Xavier Jaraは、私は間違いなく1位だと思っていたのであるが、スカルラッティが素晴らしかった。単音、和音ともに濁りがなく、鮮明であり、装飾音の処理は見事であった。左指がとても柔らかく、編曲は自身が行ったのであろうか、左親指での押さえも登場するなど、大変凝ったものであった。
最後のロドリーゴの超絶技巧を要する難曲も、速いパッセージでも音色の変化をつけられるほどの余裕のあるハイレベルな演奏。何故2位だったか、疑問に思うが、課題曲があまり良くなかった。アルペジオの部分が単調、感情的な高まりに欠けていたことと、最後のソのvibrato lentoの処理が、今までの曲想から大変乖離する結果となったことが、マイナス評価につながったのかもしれない。残念だ。
1位の Thomas Csabaは、2年前の覇者が自由曲に選んだ、大曲「ミュージック・オブ・メモリー」(N.モー作曲)を弾いて栄冠を勝ち取ったが、この曲の演奏は2年前の覇者の演奏よりもインパクトは薄かった。
ただホール全体に響き渡る強い説得力ある音と、先の難解な大曲を殆どミスなく、弾き切ったことがプラスに働いたと思われる。課題曲の演奏はミスタッチが多くあまりいい出来ではなかった。
ファリャの「ドビュッシーの墓に捧げる賛歌」はリョベートの運指を用いず、ローポジションでの運指を多用していたが、このような演奏時間が短くかつ演奏頻度の高い曲は、国際コンクールの審査対象としては評価しにくく、効果が薄いように感じる。「ミュージック・オブ・メモリー」の演奏時間が長いだけに、もっと演奏様式の異なる曲を加えることができなかったのだろうがが、もっと多角的な評価をするためには1曲当たり演奏時間の上限を設けてもいいように思った。

全体的に課題曲の演奏で感じたのは、後半のアルペジオで「Piu Mosso」からソのvibrato lentoの前までの速度がそれまでと変化していない奏者が多かったことである。
この「Piu Mosso」から本来速度を上げなければならないのであるが、速度を上げていない演奏が目立った。
その理由は、「Piu Mosso」までのアルペジオ速く弾きすぎているからではないだろうか。もう少し速度を落として、分散和音の各音の分離と作者が「箜篌」から想像した感情の流れを味わいたかった。
また、「Piu Mosso」からしばらくしてffに入るが、このffの部分も変化が少ない演奏が多かった。
この部分はもっと強く激しく感情的に弾くべきだと思う。
5位の 斎藤優貴さんの課題曲の演奏はオーソドックスであったが、この指定をよく理解したいい演奏だと思った。音が終始硬質だったため、順位を下げたのかもしれない。
4位の方の課題曲の演奏は箏の奏法を意識したものだと思われる。
箏奏者の第一人者であり、長く東京国際ギターコンクールの審査員を務めた野坂恵子氏の二十五絃箏編曲版の演奏を聴いたのであろうか。この4位の方の演奏も全体的に良かったが、上位に食い込めなかった。

他の感想は後日に譲るとして、来年の課題曲は原嘉寿子の「ギターのためのプレリュード・アリアとトッカータ」である。7,8年前の課題曲にも選出されたが、前衛時代真っ盛りに作曲された、不協和音たっぷりの聴き応えのある曲であり、楽しみだ。

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