緑陽ギター日記

趣味のクラシック・ギターやピアノ、合唱曲を中心に思いついたことを書いていきます。

混声合唱組曲「終わりのない歌」(作詞: 銀色夏生 作曲: 上田真樹)を聴く

2018-10-28 15:38:43 | 合唱
物凄く素晴らしい合唱曲に出会った。
きっかけは10月初旬のNコン高等学校の部全国大会の生演奏で聴いた、愛媛県立西条高等学校の演奏だった。
この合唱曲とは西条高等学校が自由曲として演奏した、混声合唱組曲「終わりのない歌」(作詞: 銀色夏生 作曲: 上田真樹)である。

5曲からなる組曲のうち、西条高等学校は3曲目「強い感情が僕を襲った」と4曲目「終わりのない歌」を謳った。
私は当日NHKホールで生演奏を聴いたのだが、日頃の寝不足のせいか体調が悪く、集中度に欠けており、せっかくの生演奏も十分に堪能することが出来なかった。
それでもこの西条高等学校の自由曲の演奏は心に残っていた。
「いい曲」、そして「素朴だがいい演奏」だなと感じた。

思えばこの西条高等学校は、平成21年の第76回Nコン全国大会で稀に見る素晴らしい演奏をした。
この時の課題曲と自由曲の演奏は、私がこれまで数多く聴いてきた合唱演奏の中で最高の演奏である。
この演奏に出会ったのは、思い返せば、私が合唱曲にのめりこむきかっけとなった「木琴」との衝撃的な再会の少し後だった。
第76回Nコン全国大会の録音CDで、各学校の演奏を何度も聴き比べしているうちに、この大会に出場した西条高等学校の信じがたいほどの精神的エネルギーに満ちた演奏に釘付けとなった。
この演奏をこれまで何度聴いたであろうか。

音楽演奏の受け止め方は人により様々であろうが、どんな曲でも、その曲の価値を最大限に引き出した演奏というものがある。
そしてその演奏を繰り返し聴くことで、人の心に変化が出る
それは大きな変化かもしれないし小さな変化かもしれないが、確実に聴く人の心の深い所に届き、埋没していた感情を再生させる。
この第76回大会で聴かせた西条高等学校の演奏は、課題曲、自由曲ともにこれ以上の演奏はもう他に現れることはないというほどの完成度だった。
「長く何度も聴き続けられ、聴く人の心に大きな作用をもたらす演奏」。
これがコンクールの演奏で最も栄誉ある演奏なのだ。

Nコンのホームページで、今年の西条高等学校の演奏録音が聴けるようになっていた。
10年前と指揮者が変わっていたが、演奏スタイルはそう変わっているようには感じなかった。
一見素朴で地味で粗削りではあるが、聴く者の心に強い衝撃を与える演奏。
そういう演奏が私は好きだ。
賞を取ろうとして細かい所を計算し、不必要なほどの大きな音量で演奏している学校がいかに多いことか。常連校に多いがうんざりする。
こんな演奏は何度聴いても感動することはない。
聴き手である私からすると、少し粗削りであっても、高校生らしい純粋な気持ちに満ちた演奏の方がいいし、感動する。
音色だって無理に指導者の好みに統一する必要は無い。

西条高等学校の録音演奏を改めて何度も聴いてみて、彼らの演奏が自然の流れに従っており、純粋な気持ちに満ちていることに安心したし、とくに4曲目「終わりのない歌」は大いに感動した。

「終わりのない歌」の作者である、 銀色夏生さんと上田真樹さんは過去のNコンの課題曲「僕が守る」でもコンビだった。
それにしてもこの組曲「終わりのない歌」は本当に素晴らしい。
聴く者の心の根源を揺さぶるほどの強さをもったスケールの大きい曲だと思う。
久しぶりに強い感動を得られる合唱曲に出会った。

曲の細かい感想はいつか機会があれば記事にしたい。
(こういう曲はあれこれ解釈などを言う必要はないとは思うが)

下に今年のNコン全国大会、西条高等学校の録音(Nコンホームページより)のアドレスを貼っておく。
全国大会出場校全てが表示されるが、是非西条高等学校の演奏を聴いていただきたいと願う。

「第85回Nコン高等学校の部全国大会」(西条高等学校は演奏順6番目)




また組曲「終わりのない歌」の初演の演奏録音がYoutubeで見つかったので、これもリンクを貼っておく。
この録音は5つの組曲全てが演奏されている。
2曲目「月の夜」と4曲目「終わりのない歌」は特に素晴らしい。
このような感性を人が持っていることに驚きを感ぜずにはいられない。
是非、1~5曲全て聴いていただきたいと願う。

1 光よ そして緑(初演 / 混声合唱組曲「終わりのない歌」)


2 月の夜 〜 3 強い感情が僕を襲った(初演 / 混声合唱組曲「終わりのない歌」)


4 終わりのない歌(初演 / 混声合唱組曲「終わりのない歌」)


5 君のそばで会おう(初演 / 混声合唱組曲「終わりのない歌」)


【追記201810282255】

Youtubeの音源のピアノ伴奏があまりにも上手く美しいので並の演奏家ではないと思っていたが、何と作曲者自身(上田真樹さん)の演奏だった。
これには驚いた。
物凄く美しい音を出す方だ。
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篠笛「平城山(ならやま)」を聴く

2018-10-26 23:33:09 | その他の音楽
篠笛で一番古い記憶は、小学校5年生の時だった。
かなり古い記憶であるが竹脇無我が主演の「江戸を斬る」という時代劇だったと思う。
投獄された囚人の一人が寂しい音色の篠笛を吹いていたら、周りの囚人たちがうるさいと演奏を止めさせようとしたにもかかわらず、その囚人達の首領がうるさがっている囚人たちを制止し、その音色の美しさに目を閉じ、聴き入っているシーンを見たときだった。

この素朴だが寂しく悲しい音色は日本独特のものだ。
篠笛は祭りの時に、華やかに吹くことが多いのだろうが、静かな夜に、独りしみじみと吹くのもいい。

篠笛の古い時代のオリジナル曲の録音はなかなか無い。
昔の日本人が篠笛でどんな曲を演奏したか聴いてみたい。

今日、篠笛のオリジナル曲ではないが、日本の抒情歌から編曲した篠笛の演奏を聴いた。
「平城山(ならやま)」という曲(作詞:北見志保子、作曲:平井康三郎)。

時代の変遷のなかで、日本独自のもの、文化、習慣、感受性といったものが失われつつあるように感じる。
昔の日本人は耐え忍ぶことが多かったのだと思う。
陽気で明るいものが必ずしも良いことだとは思わない。
そのような価値観は偏りがある。
日本独自の暗く寂しくもの悲しい旋律から、抑圧され、表出され得なかった感情が伝わってくる。

平城山のような曲は、昔の日本人の日常の素朴な気持ちから生まれたものであろう。
暗くもの悲しいけど美しい。
抑圧的な感情を音楽という形で表現することに比類の無い独自性と価値を感じる。

平城山(ならやま) 篠笛で吹く日本の叙情歌
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ガブリエル・エスタレージャスの録音を聴く

2018-10-21 21:15:43 | ギター
昨日記事にしたアントン・ガルシア・アブリルのギター曲やギター協奏曲を録音したギタリストがスペインのガブリエル・エスタレージャス(Gabriel Estarellas)だ。
エスタレージャスの演奏を初めて聴いたのが、1990年代前半だったと思うが、アンヘル・バリオスの2枚組のCDを買った時だ。






とにかく物凄く上手く、音がまさにスペインの音。
豊かな大地から生まれてくる自然の音を思わせる、
この音は、一度聴いたらなかなか忘れられない魅力がある。
昨今の蚊の鳴くような細いかすれた音とは雲泥の差だ。

このCDが出た後に、アンヘル・バリオスのギター曲集が2冊、輸入盤で発売されたが、高くて買うのを断念した記憶がある。
今思えば買っておけばよかった。

エスタレージャスはイタリアのヴィオッティや、スペインのラミレス、フランシスコ・タレガなどの国際コンクールで優勝し、マドリッド王立音楽院の教授を務めたほどの実力者なのであるが、殆ど知られていない。
CDへの録音はかなりあるのであるが、マニアックでマイナーな作曲家ばかり集めた録音なので、彼の名がクラシック・ギター界で広まることはなかったのではないかと思う。

昨日から今日にかけてYoutubeでエスタレージャス録音を探してみたが、CDからの投稿は無く、かなり昔、エスタレージャスが20代から30代にかけてテレビ放送で録音された動画を観ることができた。

まず、アブリルのFantasía Mediterráneaという曲のビデオを見てみた。
アンヘル・バリオスのCDの演奏で聴かせた凄いテクニックと音。
これほどの演奏と音を出すことのできるギタリストが殆ど世界に広まらずにいたことはちょっと驚きだ。
これからのクラシックギター界。
こういう音の出せる演奏家がたくさん出るようになって欲しいものだ。

Gabriel Estarellas - Fantasía Mediterránea


Gabriel Estarellas - Endecha y Oremus


Gabriel Estarellas - Bourrée de J.S.Bach


Gabriel Estarellas - Zarabanda y Allemande de Manuel Ponce



楽器は白黒ビデオの方がイグナシオ・フレタ。
カラーの方は分からなかった。
カラーの方の楽器はアンヘル・バリオス集のCDの録音で使っている楽器と同じだと思うのだが、私はこのビデオを見るまでアンヘル・バリオスの曲の演奏で使っている楽器はホセ・ラミレスに相違ないと思っていた。
しかしビデオで見る限りホセ・ラミレスでは無かった。

【追記】
ラミレスの「アルフォンシーノと海」を弾くエスタレージャスのビデオがあったので載せておきます。
ホセ・ルイス・ゴンザレス編とは異なる編曲ですが、味のある演奏ですね。

Gabriel Estarellas - Alfonsina y el Mar de Ariel Ramirez
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アントン・ガルシア・アブリル作曲「 "Homenaje a Sor" (ソルを讃えて」を聴く

2018-10-20 23:10:14 | ギター
スペインの作曲家、アントン・ガルシア・アブリル(Antón García Abril、1933-)のギター曲を初めて聴いたのは、20年くらい前のスペインギター音楽コンクール本選だった。
本選出場者の一人が、彼のギター曲「ギターのための組曲 エボカシオン(Evocaciones Sute para guitarra)」の第2曲を弾いたのがきっかけだ。
アントン・ガルシア・アブリルはギター協奏曲も作曲しており、エルネスト・ビテッティの録音がある。
20年前に、5曲からなる組曲エボカシオンの2番を弾きたくて楽譜を買ったがセーハが多く、挫折してしまった。かなり難しい曲だったと思う。





今日Youtubeでアブリルの曲を検索したら、意外にもたくさんの録音が出てきた。
その中でも珍しいライブ録音が。
"Homenaje a Sor" と題する曲で、4曲のソルの練習曲を、ギターとオーケストラとの共演に編曲したものだった。

1曲目:Op.35-18 ホ短調
2曲目:Op.35-22 ロ短調(月光)
3曲目:Op.35-22 イ長調
4曲目:Op.29-1 変ロ長調









Antón García Abril: I. Estudio en mi menor de "Homenaje a Sor" (1978)


Antón García Abril: II. Estudio en si menor de "Homenaje a Sor" (1978)


Antón García Abril: III. Estudio en La mayor de "Homenaje a Sor" (1978)


Antón García Abril: IV. Estudio en Si bemol mayor de "Homenaje a Sor" (1978)


1曲目がOp.35-18 ホ短調だったのは意外だった。
この練習曲はあまり録音されたり、コンサートで演奏されたりしない。
しかしサーインス・デ・ラ・マーサは、彼自身が編集したソルの練習曲集の冒頭にこの曲を持ってきた。

ソルの練習曲でのギターとオーケストラという斬新な組み合わせであるが、曲を理解するうえで参考になると思う。
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2018年(第36回)スペインギター音楽コンクールを聴く

2018-10-15 00:43:35 | ギター
今日(14日)、東京上野の台東区ミレミアムホールで第36回スペインギター音楽コンクールがあったので聴きに行ってきた。
このコンクールは、1991年に初めて聴いて以来、ほぼ毎回聴いてきたが、スペイン人作曲家に特化したものだ。
このコンクールの上位入賞者の多くがプロとして活動しており、プロになるためのいわば登竜門のようなコンクールであり、レベルもそれなりに高い。

今回の第2次予選の課題曲はタレガのアラビア風奇想曲。
数年前にもこの曲が課題曲だったと記憶している。
有名であり親しみやすい曲なので、クラシックギター愛好家の殆どがレパートリーにするだけあって、今日の出場者の出来は概ね良かった。
今日は1時半ごろから聴き始めたので、全ての出場者の演奏を聴いたわけではないが、聴いていていくつか感じたことを述べさせていただきたいと思う。

まず、冒頭のハーモニックスの和音。



4分の3拍子なので、3拍の長さを取らなければならないが、この拍の長さを正確に弾いていない奏者が多かったと思う。
2拍目が終わったあたりで次の小節の音に入っていたように感じた。

次に難所である次のパッセージ。



1拍目、2拍目の6連符は4分音符と同じ音価となるから、かなりの速さとなるが、結構ゆっくり弾いていた方がいた。
そして3拍目は1拍目、2拍目よりももっと速く弾かなければならないのであるが、1拍目、2拍目と変わらない速度で弾いていた方も結構いた。
ここはとても難しい箇所なのではあるが、速度を緩める指定は何もないわけであり、音価を正確に維持し、一気に弾き切ってもらいたいと感じた。
合奏経験のない独奏者にありがちなのであるが、テンポを自分勝手に変えてしまいがちなので、注意した方が良いと思った。

次に4分の4拍子に移った最初の音やpoco crescの前の1拍目の音にアラストレ(グリッサンド)を付けている奏者が殆どであったが、これは指定された楽譜を忠実に守るように要求されてのことなのか。





原典はアラストレの指示が付いているが、タレガの時代の奏法がそうであったとしても、それが現代の鑑賞に合わないのであれば省略してもいいのではないかと思う。
セゴビアもイエペスもこのアラストレは省略している。
次に第2の難所のこの部分であるが、accelの指示があるので徐々に速度をあげていかなければならないが、速度を上げていっている奏者は少なかったように思う。
とても難しい部分ではあるが。



最後のten.はもっと速度を落としてもいいと思う。
長調に転調し、しばらくしてから上昇スケールの直前に次のフレーズが現れるが、この部分をいきなり速く弾いている方が何人かいた。速くする理由はないし、不自然に聴こえた。



第3の難所の上昇スケールであるが、まずmolto cresc.の指示がある。



そして最後の拍は5連符であるから、その前の拍よりも当然速く弾かなければならないが、ここを同じかあるいは逆に速度を落として弾いている方がいた。



ここは速度を落とさず、かつ最後の5連符は音価を守ってクレッシェンドしながら一気に弾き切って欲しかった。セゴビアの演奏が参考になる。
次に第4の難所の6連符が4拍続く所であるが、ここも音価を十分に守って弾いて欲しいと思った。



複数弦にわたる所なのでとても弾くのが難しいのであるが、速度が遅くなっているのが気になった。
ここの部分は②弦と③弦の運指で、最後はポルタメンテで2弦のラ音まで持っていくことが出来ないだろうか。そのような運指で工夫している方がいた。
最後のニ短調の和音はアルペジオせず、静かに同時に弾いた方がいいと思う。




次に本選。課題曲はアルベニスのアストゥリアス。
結果は以下のとおりだった(カッコ内は私が付けた順位)。

演奏順1番:松島淳さん 第2位(第2位)
演奏順2番:小林政貴さん 第6位(第5位)
演奏順3番:杉田文さん 第3位(第4位)
演奏順4番:小林龍和さん 第5位(第5位)
演奏順5番:仲山涼太さん 第1位(第1位)
演奏順6番:渡邊華さん 第4位(第3位)

以下、演奏順に聴いた感想を述べさせていただく。

演奏順1番の松島淳さん。
課題曲はラスゲアード間のアルペジオで音抜けが若干あったが安定した技巧だった。
中間部がかなり強く感じた。
ここは夜のように静かな部分なので、前半部と後半との対比を際立てて欲しいと思った。
全体的に音が強く、ダイナミックであるが、表情の変化がやや乏しいと感じた。
自由曲の魔笛の主題による変奏曲も手の内に入っていると思われ、堂々とした演奏だったが、このようなポピュラーな曲は多くの人がものにしている曲であり、聴く側も耳が肥えているため、テクニックは完璧であるのはもちろんのこと、よほど音楽的に訴えるものが無いと高得点は難しいのでhないかと思った。最後のコーダのアルペジオを伴う旋律はもっと浮き出させていいと思った。
ソナタ・ジョコーサの終楽章は素晴らしかった。
低音が豊かで響かせかたが上手く、この華やかな民族性あふれるリズムカルな難曲を破綻なく弾けていたのは立派だと思った。
この曲の和音と旋律は良く分離して聴こえた。

演奏順2番の小林さん。
課題曲は、ラスゲアード間のアルペジオやや間延びして歯切れが悪く聴こえた。
音に強さがあるが、全体的にテクニック不足が目立った。
和音にした方がいいと思った箇所でアルペジオを多用していたが、どうかと思う。
自由曲のソルの演奏会用断章。
高音はややメタリックに聴こえたが、低音が太く力強かった。
この太く力づよい低音がとても印象に残った。
この曲でもテクニック不足による破綻が散見され、和音が鳴り切れない箇所があった。
和音やアルペジオを伴う高音の旋律部がメタリックで、もっと柔らかく甘く弾いて欲しいと思った。
高音でも単音は甘く太い音も出せていたので、出来ると思う。
低音の出し方が素晴らしいので、今後も活かしていって欲しい。

演奏順3番の杉田さん。
出だしがとても静かだったが、次第にクレッシェンドし、ラスゲアードに入ってからフォルテに持っていく弾き方が良かった。
ラスゲアードは歯切れよく、テンポも落ちなかった。
中間部は音が抑制されており、和音が明瞭に聴こえた。
アクセントの出し方もいい。
やや乱れた箇所があったが、和音の各音がよく分離して聴こえてくるところが印象的だった。
自由曲の3つのスペイン風小品は難曲揃いであるが、よく挑戦したと思う。
各々の音を大事にし、おろそかにせず、不明瞭な発音を嫌うタイプの演奏家だと感じた。
真面目で誠実な演奏だと思う。
惜しむべきは随所で破綻があったこと。また高音がやや細かった。
もっと力を抜いて弾いてもいいのではないかと思った。
難曲なのでミスが出ないよう弾くだけで精一杯で、音楽的表現の余裕があまり感じられなかった。

演奏順4番の小林さん。
課題曲は中間部で、フレーズとフレーズの間の間がやや長く感じたのが気になった。
音が太く大きいが、変化が少なく単調に聴こえた。
自由曲のファンダンギーリョも一本調子でテンポの変化が少なく、「歌」が聴こえてこなかった。
テクニックが安定しており、音も太く大きいので音楽表現面での研鑽に力を入れていけば、一層よくなっていくと感じた。

演奏順5番の仲山さん。
課題曲のラスゲアードの弾き方、強さ、速度に変化を付けていたが、個人的にはどうかと思う。
またラスゲアードの終わったあとのアルペジオで、昔の弾き方(テヌートを付ける)をしている箇所があったが、これもしない方がいいと思った。
中間部は音が強すぎで雑に感じた。しかし最後のLentoの表現は良かった。
音の強弱が自然であり、はっきりしていた。
自由曲のファンダンギーリョは素晴らしかった。
音の強弱、テンポのゆらぎ、など表現の幅に富んでおり、何よりもスペインの「歌」が聴こえたきた。
テクニックがやや雑だったが、それを上回る音楽表現の独自性を強く感じさせた。
最後の消えるようなハーモニックスとタンボーラの表現も良かった。
アグアドの序奏とロンドは今までこのコンクールの本選で数多く弾かれてきたが、その中でも最も感動する演奏だった。
まず自分独自の音楽、借り物ではない主体的な音楽表現や「歌」が感じられた。
指板上での和音など表現の工夫が見られ、音色の変化、レンジの広さも大きかった。
転調したハ長調の部分の表現が素晴らしかった。
速いテンポの難所の連続も、破綻が若干あったがテンポが落ちず、維持できたのが素晴らしい。
とても説得力あふれる演奏だった。
久しぶりに聴く側もおのずと力が入った。

演奏順6番の渡邊さん。
課題曲はテンポがやや遅めで、ラスゲアードはやや歯切れが悪かった。
中間部は音がこもったような感じで不明瞭に聴こえた。
自由曲のバスクの歌は、ややおとなしいが丁寧に弾いていた。
派手さはないが、堅実な弾き方をすると感じた。
もっと訴えるものが欲しいとも思ったが、どうか。
録音して聴いてみないと本当の実力は見えてこないと思った。
コンポステラ組曲も静かな歌いかたで堅実な演奏だった。
テクニックは相当なもの。
あまり感情を大袈裟に出さないタイプであるが、私はこの方の演奏に惹かれるものを感じた。
最後近くに大きなミスがあったのが残念。

課題曲のアストゥリアスは原曲はピアノ曲であるが、今日の出場者の演奏は昔ながらの編曲を用いた方が殆どだった。
原曲のピアノ演奏を聴いてみるとわかるが、ギターの編曲とはかなり異なっている。





とくに中間部と終結部は原曲を意識した編曲にしてもいいのではないかと思った。
オリジナリティのある編曲を聴きたかった。

今日の演奏はレベルが高かったと思う。
そして音に力を感じた。タッチもひところに比べ良くなってきていると感じた。

なお、この感想はあくまでも聴き手の側から感じたことを私なりに正直に述べたことをお断りしておきます。

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