最近、「ガスライティング」という言葉を耳にするようになった。
きっかけはYoutubeの投稿である。
近年、人間心理をテーマにした投稿をかなり多数見かけるようになった。
投稿者自らの体験により、「絶対に関わってはいけない人物とはどのような人間か」、「心の苦しみを解決するにはどうしたよいのか」といったテーマを扱っており、私も時々見ている。
このような投稿をする方は、心理的に問題を抱えた人間の犠牲になりメンタルを病んだが、自らその苦しみと向き合うことにより苦難を乗り越え、幸せをつかみ取った方々であり、投稿で述べられる言葉には強い説得力と凄みが感じられる。
私が最も苦しかった20代の頃にこのような投稿に出会っていたらどんなに救われただろう。
当時はこのような情報を得ることは皆無であった。
私は当時、苦しみの解決のために殆どの時間を費やしていた。当時は書籍かカウンセリンでしか解決法を得る手段が無かったが、書籍に関しては大学の先生や精神科医が書いたもののみであり、そのような著者たちの書いたものは言っちゃ悪いけど著者自身の体験が無いが故に全くというほど役に立たなかった。唯一、加藤諦三氏だけの著作が頼りだった。加藤諦三氏の著作は殆ど全て読んだ。
現在Youtubeで投稿されているものの中には非常に助けになるものがある。
心が病む人というのは、例外なく、真面目で自責の念の強い人、自己否定の構えのある人、優しいけど心が弱い人、自分は周囲から受け入れられないと思い込んでいる孤独な人たちである。
一方、人の心に意図的にダメージを与え、心を病ませるような人物はどのような人間なのであろうか。
一言で言えば、心に深刻な問題を抱えた人間である。生育過程で何らかの心的外傷を受け、癒しがたい苦しみを抱えた人たちである。
ここで重要なのはこのような人たちの特徴は、このような心の苦しみに自ら向き合おうとせずに、その苦しみから生じる不快感情を人を利用して解消しようとすることである。
とくに注意したいのは、その解消方法が極めて巧妙で狡猾であるということだ。
誰が見ても犯罪と分かるようなあからさまな方法で人を傷つけることはしない。
誰から見てもその解消方法が悪いことだと判断されることなく、着実に実行される。
そしてこのような人物の犠牲になるのは先に述べた、自己否定が強く、自分は至らない、悪い人間であるが故に誰からも相手にされない人間だと錯覚している人たちである。
心を病ませるような人間は決して、自己肯定感が強く味方がたくさんいるような人間をターゲットにすることはない。彼らのターゲットとする人間を嗅ぎ分ける能力は天才的と言える。
Youtubeの投稿ではこのような注意すべき人物の見分け方や対処方法、病んだ心の回復方法まで解説してくれている。
最も重要なことはこのような人物を見抜けるようにすることである。
しかし自己否定が強い段階ではそれが難しい。自己否定から脱し、自己受容、自己肯定がある程度出来るようになって判別が出来るようになってくる。
とにかくこのような人物から何がなんでも離れなければならない。メンタルがボロボロになってからでは遅い。回復するのに何十年も要するようになる。このような人物の犠牲になり自殺した人がどれだけいるだろうか。まさに「魂の殺人」である。
話がだいぶ反れたが、「「ガスライティング」とは一体どのようなものなのか。
ネットの「日本の人事部」というサイトで詳しく具体的な解説がされているのを見つけた。
ちょっと以下に抜粋及び要約させていただく。
「ガスライティング」とは、意図的に誤情報を与えるなどして相手が「自分の記憶や判断がおかしいのでは」と疑うように仕向け、心理的に支配しようとする行為。
具体的な事例としては、ある会社において上司が部下に「「昨日のミーティングで決まったじゃないか」と叱責し、会議メンバーは沈黙、その部下は「自分が聞き漏らしたのかもしれない」と反省し、ミスを謝罪した、とういもの。
このサイトでの上記事例について「ガスライティングの典型例。加害者は過去の行動や発言を都合よく書き換え、弱い立場の人の認知を揺さぶりながら支配関係を強めようとしています。」と述べている。さらに「健全な職場で働いている人には信じられないかもしれませんが、常習的に標的を作って追い込む人が存在するのが現実です」と述べている。
この事例において加害者は日常的に心に深刻な問題(苦しみ)を抱えており、その心の問題に自ら向き合うことを拒否し、その苦しみから生じる怒り、憎しみなどのマイナス感情を人を利用して一時的に解消していることが分かる。
しかもその解消方法が、その真意を気付かれることなく確実に達成するために最も安全なターゲットを選択し、第3者からも加害者であることが見抜かれないように巧妙であることだ。
私も若い頃に上記の事例と同じような体験をしたことがある。
正義、正論を隠れ蓑にした悪意ほど気を付けなければならないものは無いだろう。
相手の思う壺にはまればメンタルは確実に病む。最悪自殺に追い込まれる。
私は勤め先で企業倫理推進担当という役割を担っているが、このような被害により自殺に追い込まれた事例を多数見て見て来た。
ターゲットにされたら際限がなく攻撃が実行される。何故ならば加害者の心の苦しみが本質的に解決されることがないからである。
このような事例に遭遇した時に、唯一頼りになるのが、「言われた瞬間、何とも言えない釈然としない気持ちが湧いた」ということである。
心というのは何が正しく何が間違っているのか、何が真意なのか、ちゃんと見極める機能を根源的に持っているのである。「釈然としない」気持ちが沸き起こったという事実を軽視してはならない。
自分の心を守ることが出来るのは自分の心の感じ方にかかっている。
【追記】
ガスライティングする人間をなかなか見抜けない理由として上記以外に、このような人物が意外に社交的であったり、地位の高い人であったりすることがあげられる。
そのためガスライティングの被害を受ける人は「自分が悪いからこのようなことを言われるんだ」と結論付ける傾向がある。
ガスライティングする人間は隠れ蓑を着ているがターゲットだけに自分の本当の姿を見せる。
逆にいうと、自分にだけに見せた相手の真の姿を見抜けるようになれれば、それが相手にとって脅威になるということでもある。