緑陽ギター日記

趣味のクラシック・ギターやピアノ、合唱曲を中心に思いついたことを書いていきます。

ギター録音(12)タンスマン作曲「ポーランド風組曲よりⅡ ガイヤルド」

2020-07-28 20:52:50 | ギター
今日は在宅勤務なので通勤時間(片道2.5時間)が使えた。
短い曲だけど録音してみた。
タンスマン作曲「ポーランド風組曲よりⅡ ガイヤルド」。



7月12日にポーランド風組曲の1曲目「アントレー」を録音したが、今日は2曲目の「ガイヤルド」だ。
明るく軽快な曲。速度はアレグレットだ。
副題に「16世紀」とある。
16世紀につくられた曲からインスピレーションを得たのか。

録音機が古い(15年くらい前に買ったもの)ので、録音状態が悪い。
色々探してみたら、ソニーで5万円くらいで、生の音を忠実に再現するという録音機があった。
高いけど買い替えようか。

この組曲は全部で9曲ある。
順番に録音していきたい。
それが終ったたら、今度はモンポウの「コンポステラ組曲」に挑戦してみようかと思う。
とても難しい曲だけど。

「ガイヤルド」の録音は下記にリンクを貼った。
聴いてみたい方はどうぞ。

タンスマン作曲「ポーランド風組曲よりⅡ ガイヤルド」2020年7月28日録音



【録音データ】

録音日:2020年7月28日20:30
録音場所:自宅(ボロい6畳間)
使用楽器:ホセ・ラミレスⅢ世 1986年(664mm)
使用弦:オーガスチン黒
音加工:していない(生のまま)

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スクリャービン作曲「プレリュードOp16-4」を聴く

2020-07-26 19:33:36 | ピアノ
1か月近く前だったか。8月上旬に父の一周忌で帰省するために、ピーチという成田発着の格安航空会社の一番安いチケットを予約したのだが、思わぬ不注意でダブって購入してしまった。
この格安航空券というやつはキャンセルによる払い戻しが一切効かないので、全くの計画外であったが、ダブった航空券を日程変更し(航路変更は不可)、この4連休に実家に帰省してきた。
この期間、コロナ感染者が過去最大となるなど、かなりの心配もあったが、消毒など出来るだけの準備をして実家に入れてもらった。

成田空港までは車で行った。
空港近くの駐車場で3日間止めて、2,310円(税込み)。意外に安いもんだ。
時間も高速使わずで片道3時間だから、公共交通機関を利用するより短くて済む。
7、8年前に車で行ったときは、空港近くにバイパスが出来ていなかったので、3時間半以上かかったような気がするが、何年か前にバイパスが出来たようで、経路は分かりやすかった。

母が高齢で体が不自由なので、実家では兄が介護をしている。
実は兄もギターを弾くのだが、アコースティックギター(鉄弦)だ。
何という曲か分からないが、いつも同じ曲を弾いている。
今回帰省したときに、1970年代のジャズの古いレコードをかけて聴いていた。
ジャケットを見ると、Richard Beirach(リチャード・バイラーク、リッチー・バイラークとも言われるらしい)というジャズ・ピアニストの「HUBRIS」というアルバムだった。
1970年代というと、ジャズ界は新しい波が出来始めた頃ではなかったか。
チック・コリアの「リターン・トゥ・フォーエバー」がたしか1972年、キース・ジャレットも新しい動きを見せていた頃だったのではないかと思う。
先のリチャード・バイラークのアルバムはピアノソロだったが、伝統的なジャズとは明らかに異なる、前衛的な和声進行や音使いを伴う音楽だった。
自宅に戻ってからYouubeで検索してみたら、「HUBRIS」は無かったが、いくつかの録音が投稿されていた。
その中で、「Around Scrijabin Prelude Op. #16」というタイトルの投稿を聴いてみたら、どこかで聴いたことがある音楽だった。
まず思い出したのは、アレクサンドル・タンスマン作曲の「ギターのためのスクリャービンの主題による変奏曲」だった。





昨年か一昨年の東京国際ギターコンクールの本選自由曲で、この曲を弾いた参加者がいたのを思い出す。
もともとこのギター曲を初めて聴いたのが、1990年代前半頃にMarc Regnierというギタリストが録音したタンスマン・ギター曲集のCDだった。
なかなかいい曲だったので、弾いてみたいと思い、楽譜も買ったのだが、結局まだ手を付けていない。
今日たまたまこの楽譜を久しぶりに開いてみたら、楽譜のタイトルの左下に「校訂及び運指」として「Alvaro CANPANY」という名前が記されていたが、この名前、どっかで聞いたことがある。
そうだ、あのギターの現代音楽「ONEIRON」の作者だった。



YoutubeでAlvaro CANPANYの自作自演の録画があったはずだ(「「ONEIRON」の演奏ではないけど)。
この現代音楽作曲家の「Alvaro CANPANY」とタンスマン作曲の「ギターのためのスクリャービンの主題による変奏曲」の取り合わせがやけに妙に感じたのである。

タンスマンがテーマとして取り上げたスクリャービンのオリジナルの音楽が、リチャード・バイラークが作曲した「Around Scrijabin Prelude Op. #16」のタイトルを見て、遅ればせながらピアノ曲「Prelude Op. 16-4」であることが分かった。
このピアノ曲「Prelude Op. 16」は5つの短い曲で構成されているが、なかなかの曲だ。
通しで聴いた方がいい。
全5曲の中ではやはり第4番が印象的でインパクトが強い。
あのセゴビアもこの第4番をギターに編曲して録音している。
短いけど、美しく味わい深い曲だ。

スクリャービンの演奏では定評のあるホロヴィッツの演奏がYoutubeにあったので貼り付けさせてもらう。

Horowitz plays Scriabin Prelude opus 16 no. 4


リチャード・バイラークによるジャズは下記。

作曲&ピアノ:Richard Beirach(リチャード・バイラーク)
ヴァイオリン: Hübner グレゴール・ヒューブナー
ベース:George Mraz ジョージ・ムラーツ
Around Scrijabin Prelude Op. #16

セゴビアの録音は下記。
音が凄い!

Scriabin: 5 Preludes, Op.16 - No. 4 in E flat minor
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2020年太田キシュ道子ピアノコンサートを聴く

2020-07-19 10:43:18 | ピアノ
昨日(7/18)、神奈川県の関内小ホールで「太田キシュ道子ピアノリサイタル」が開催され、聴きに行ってきた。
太田キシュ道子さんの演奏を初めて聴いたのが、2017年6月、千葉市美浜文化ホールでのコンサートだった。
とくに誰かからコンサート情報を聞いたということではなく、ネットの音楽之友社のコンサート情報を見て、初めて目にするピアニストであったが、行ってみようと思い立ったのがきっかけであった。
会場の美浜文化ホールはとても小さなホールであったが、それが幸いした。
今までも少ないながらもピアノコンサートでピアノの生演奏に接したことはあったが、太田氏の演奏を聴いて、この時初めて、ピアノの生の音がこれほど美しいものなのか、と気づかされたのである。
この時以来、ピアノの演奏をCDやレコードで聴くことでは、真に演奏の価値を理解することは出来ないと思うようになった。
どんな楽器でもそうなのかもしれないが、ピアノに関して言えば、絶対に生の音、それも大ホールなどの大きなホールではなく、サロンのような小さいけど音響の良いホールで間近に聴くものに勝るものは無いと確信した。
再生装置に何百万円もお金をかける方も少なからずいるようだが、はっきり言ってこれはあまり意味のないことだと思う。
何故ならば、録音された時点で生の音とは別物に変換されてしまっているからだ。
ただピアノの生の音に対しそのように感じるに至ったのは、もちろん太田氏の音の魅力が大きかったことに尽きる。
太田氏の音の魅力とはなんだろう。
まず挙げられるのは、力強い重厚な低音だ。
大きな腕の動作をしていないのに、伝わってくる音は幾層にも織り重なり、深いところから力強く響いてくるように感じられる。
次に高音は芯のある、つき抜けていくような音だ。これも軽いタッチでは実現できないものなのだろう。
打鍵は強靭だが、物理的な強さではない。強い音でも不愉快な音もある。
昨日の演奏を聴きながら感じたのは、奏者の感情の強さと、楽器から最大限の音の魅力を引き出そうとする姿勢、その両者の相乗作用が、太田氏のあの音を実現させているのではないかということだった。
ピアノコンサートは殆ど行かないので分からないが、毎年聴きに行くギターコンクールなどで昨今の演奏家が発する生の音に物足りなさを感じるのはこの点が欠けているのはないかと思う。
楽器の性能向上により、やけに馬鹿でかい音を聴けるようになったが、これは長い間の修練により獲得された音量、音の強さとは別物である。
要は楽器の物理的な作用により大きく聞こえるのであって、奏者の音楽に対する感受性や感情エネルギーの強さ、楽器から最大限の魅力ある音を引き出すための長い年月をかけた絶え間ない修練の結果、生み出されたものとは次元が違うのである。
だからコンクールで聴いた演奏などは、その時は「上手い!」と感じても、また繰り返しこの演奏を聴きたい、またこの人のコンサートに行きたい、という気持ちになれないのである。

前置きが長くなったが、昨日のリサイタルのプログラムは下記のとおり。

・ピアノファンタジー   太田キシュ道子
・幻想曲風ソナタ作品27-2「月光」   ベートーヴェン
・幻想曲集 作品116  ブラームス
・幻想曲 作品17  シューマン

曲目全てが幻想曲であり、今年は「幻想曲」をテーマにしてきたことが伺われる。
「幻想曲」の一般的な定義は、「作曲者の自由な想像力に基づいて創作される器楽作品の名称」ということらしい。
ギター曲で幻想曲というと、フェルナンド・ソルのいくつかの曲が思い浮かぶが、ピアノではあまり浮かんでこない。
モーツァルトのK396などのいくつかの幻想曲、ショパンやリストの数曲といった感じか。
プログラム2曲目のベートーヴェンの「月光」はピアノソナタではあるが、楽譜には(Sonata quasi una Fantasia.)という副題が添えられており、幻想曲風のソナタということができる。
第1曲目は太田氏の短い自作曲だったが、古典形式のなかなか味わい深い曲だった。
現代における演奏者での自作というと、器楽奏者特有の楽器臭さが抜けない曲とか、親しみやすい曲想にした傾向のある曲が多いのではないかと思うのだが、太田氏の曲はあくまでもオリジナルのクラシック曲にこだわりを見せたものだという印象であった。
プログラムに三善晃などの作曲家に室内楽の師事をしたと書かれていたが、学びの過程で作曲も勉強されたのだと思う。
2曲目のベートーヴェンのピアノソナタ第14番は多くの人が知っている有名曲であり、無数の演奏があるが、それだけにさまざまな解釈を聴く事ができる。
第1楽章は終始三連符の連続し、静かに(ppで)繊細に演奏することが求められ、奏者のセンスが如実に現れる曲なのであるが、太田氏の演奏はやや速めのテンポでテンポを崩さず、作者の意図を忠実に表現した正攻法の演奏だと感じた。
第2楽章は一転、優雅で明るい曲想に変わるが、途中に現れる低音の和音の響きを違和感なく十分に響かせ、かつ持続させられるかがポイントだと思う。
第3楽章はプレストで激しい情熱感を表現することが求められるが、この楽章を聴くと、ベートーヴェンの心の葛藤というものが伝わってくる。
テクニックだけに溺れた奏者だと流暢な指裁きしか伝わってこないが、この楽章の意味するところは、ベートーヴェンが抱えていた苦悩と、それを何とかしたいという強い気持ちとの激しい葛藤だったのではないかと思う。
超絶技巧を絶え間なく要求されるこの楽章の中で、太田氏の演奏を聴きながら、この激しい心理的葛藤というものが頭に浮かんできた。
ブラームスとシューマンの幻想曲は多分初めて聴く曲だと思う。
高音よりというより、力強い低音が強調される曲であり、太田氏の持ち味が活かされた素晴らしい演奏であった。
しかしこれほどの力強い音、それも魅力の満ちた音というのは、なかなか聴けるものではない。
クラシック音楽の本場であるヨーロッパで、早くから研鑽を積み、当地で生活拠点を築きながら長年に渡り地道に活動を重ねて得られた「音の凄み」を感じさせるコンサートであった。

太田氏のコンサートはこれで4回目。
昨年はトークコンサートは聴けたものの、その1週間後の美浜ホールでのコンサート、シューベールトの死の直前に書かれたピアノソナタ第21番を聴き逃したのが痛かったが、来年もまた聴きに行くのが楽しみだ。
それにしても観客が少ないのが残念だ。
コロナ禍ということもあるが、これだけの実力者の演奏がごく少数の人々しか堪能できないのは勿体ないことだと思う。

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ギター録音(11)タンスマン作曲「ポーランド風組曲よりⅠ アントレー」

2020-07-12 16:47:38 | ギター
今月はギター録音としてサーインス・デ・ラ・マーサの「グリーンスリーブス変奏」を取り上げる予定だったが、予定を変更、アレクサンドル・タンスマンの「ポーランド風組曲」の第1曲目、「アントレー」にした。





録音は下記にリンクを貼る。

タンスマン作曲「ポーランド風組曲よりⅠ アントレー」

【録音データ】
録音日:2020年7月12日16:30(自宅にて)
使用ギター:ホセ・ラミレスⅢ世 1986年
使用弦:オーガスチン黒
音加工:していない(生録り)

今後、この組曲の残りの7曲を順番に録音出来ればな、と思っている。
(十分に練習してから録音出来ればベストだが、なかなかそうもいかない。その辺は妥協するしかない)
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長井充氏のピアノ演奏を聴く

2020-07-11 23:46:18 | ピアノ
それは全くの偶然であったが、Youtubeの動画一覧にたまたま出ていたピアノ演奏者の姿と再生回数になにげなく目が触れた。
背中の曲がった高齢の男性の弾くピアノ演奏の映像と異常に多い再生回数であった。
曲目は、グスタフ・ランゲの「花の歌」、演奏者は長井充氏。初めて聞く名前であった。

https://youtu.be/9r7y7gORXMc

どんな演奏であろうかと興味を抱き、再生してみることにした。
まず短調に転調にする直前のアルペジオの音の出し方が並ではない感じた。
そして聴き進むにつれて、凄いスピリットに富んだエネルギッシュであり、また音楽の流れや出音が驚くほど自然であることに気が付いた。
「花の歌」の最後のクライマックスでは鳥肌が出た。
ピアノから音を最大限に引き出す能力、正確で安定したテクニックなど、この年齢からして驚異的だ。

続けて、ベートーヴェンのピアノソナタ第8番「悲愴」の第2楽章と第3楽章を聴いてみる。

https://youtu.be/HUIDZW0nGQM

https://youtu.be/8_Asn1X8DKU

第2楽章、この曲は心地よさの裏に、ベートーヴェンの深層心理にある不安、苦悩、孤独感などが暗黙のうちに感じられるのであるが、長井氏の演奏はこの深みを表現しているように感じた。
しかしこの精神的パワーや情熱はどこから来るのであろうか。

長井氏のことをインターネットで調べてみた。
「奇跡のピアニスト」という記事が目に入った。
この記事を書いている方によると、「大阪音楽大学の創設者、長井幸次氏の孫に当たり、数奇な運命をたどられた方と聞く。修道院生活まで送られ、70歳を過ぎて再びピアノ演奏に復帰された」とある(出谷 啓(音楽評論家)の記事より抜粋)。
また別の記事では、「長井氏は東京芸大を卒業し留学を経た後、武蔵野音大で33年間教鞭を執っておられた方であるが、東京芸大在学中に過度なピアノ練習により指を痛めてしまい、人生に絶望を感じ心の苦しみと闘ってきた。70歳を過ぎて再びピアニストとして復帰した」という(まゆみピアノ教室ブログより抜粋)。

長井氏のYoutubeの演奏の中には再生回数が100万回を超えているものもある。
演奏家の中には表舞台に出ていなくても、素晴らしい演奏をする人がいるものである。
またいいピアニストと出会うことが出来た。
長井氏の演奏、とくに音の引き出し方にはギター演奏にとっても学ぶことが多いと感じる。

(注)
今後、Youtubeの動画を記事に貼り付ける時は、URLを表示することにします。

【追記202007132112】

長井充氏の「悲愴」の演奏を繰り返し聴いてみる。
弾く姿は淡々としているのに、音から伝わってくる感情の強さが半端でない。
だから何度も聴きたくなってしまう。
聴き手の感情を放出させることの出来る優れたピアニストだと思う。
人生過程で大きな苦労をされたに違いない。
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