緑陽ギター日記

趣味のクラシック・ギターやピアノ、合唱曲を中心に思いついたことを書いていきます。

四時川林道を走る(1)

2018-08-13 20:49:04 | 林道
この夏休みに林道へ行ってみようと考えていた。
車に乗り始めてからずっと小型の四輪駆動車に乗ってきた。
30代前半によく林道に行った。
今から20年近く前のことだ。
30代後半になって林道へ行かなくなってしまった。
この頃から仕事が忙しくなり、ずっと長い間休日出勤の多い日々を過ごしてきた。
長時間労働が林道ツーリングへの情熱を冷ましてしまったのか。

今年の2月末からマンドリンオーケストラの大規模演奏会の練習が始まったが、その間に時折、林道に行ってみたいな、と思うようになった。
何故林道へ行きたいのか。
車の運転が好きなこともあるが、林道は、非日常、異次元の風景、空気を感じさせてくれるからだ。
舗装された林道は別として、未舗装の林道は人工物の無い、自然そのものを味わうことができる。
であれば登山でもいいではないかと、という考えもあるだろうが、登山は人がたくさん来る。
人のいない自然豊かな場所が好きな人にとって、林道は最高の環境を提供してくれる。
林道とは、自然豊かな場所で孤独感を感じつつ、自然が放出するエネルギーを浴びることのできる唯一の場所なのだ。
林道の走りかたの一つとして、廃道を荒らしながら走る走り方があるが、このような走りかたをする人は自然に興味の無い人だ。
すなわち四輪駆動者の性能を試し、それに興じることが目的の人である。
だから自然を荒らしても何とも思わない。
廃道とは自然の宿命である。
廃道は荒らされることを望んでいない。
廃道は時の経過とともに自然に帰ることを待ち望んでいる。
だから決して荒らしてはならないのである。

今日行ってきたのは、福島県と茨城県、栃木県との県境近くにある「四時川林道」という林道だ。
20年近く前に行こうと計画して実現しなかったルートだ。
今日、その林道へ行ってきたのである。

この夏休みの天候は不安定だ。
今日の朝、もし天気が良く、かつ早くに目が覚めたら行ってみようか、というくらいの気持ちだったので、特段、念入りな準備をしていなかった。
今日の朝、6時10分前に目が覚めた。
カーテンを開けると、晴天ではなかったが、明るい曇り空だったので、行ってみようと決断した。

6時40分出発。
出発前にエンジンオイルの量を確認。
レベルゲージのLOW近くまで減っていたので、オイルを補充する。
高速は圏央道から入った。
渋滞は無かったが、結構車は多かった。
つくばJCで常磐自動車道に入り、いわき勿来ICで降りる。
所要時間2時間半弱くらいだったか。

高速を降りて林道への入り口に向かったが、入り口がなかなか見つからない。
またガソリンを入れようとスタンドを探したけど無い。
とても辺鄙な所だ。
ガイドブックを見ながら、入口の見当を付けて走るが、見つからず、しばらく走っているとセブンイレブンが見えてきたのでまずは駐車場に車を止めて位置を確認する。
車のクーラーが故障しているので、社内は灼熱地獄だ。
スマホからバッテリー加熱の警告音が鳴り始めたので、セブンイレブンでペットボトル飲料を3本買って、そのボトルを入れた袋の中にスマホを入れて熱さましする。

まずは懸念事項を払拭させる必要があった。
セブンイレブンの店員にこの近くにガソリンスタンドはないか訊ねたところ、5分くらいの所にあるとのこと。
レシートの裏に簡単な道順を書いてくれた。
途中迷ったが、ほどなくしてガソリンスタンドを発見。ガソリンを満タンにする。
これでまずはほっとした。
林道に入る直前にガソリンを満タンにすることは鉄則である。
道に迷ったことがいい方向に導いてくれた。
ガソリンを入れないで走ろうとしていたので、今から思えば運が良かった。

ガイドブックの略図を良く見て、林道の入口を探す。
最初に走ろうと考えていた、「林道長沢線」はロープが張られており、通行禁止となっていた。



「林道四時川目兼線」の入口も分かりづらかった。
公民館の直ぐ脇の細い道から入っていくのだが、標識は無い。
この公民館も表札等が無いので、目印の公民館であることに気付くのに時間を要した。

公民館の脇道を進んでいくと道は次第に細く、勾配は急な上り坂に変わり、途中から道はダートに変わっていた。
これで入った道が間違いなことを確信できた。

20年近くのブランクがあって久しぶりの林道。心が弾む。
この「林道四時川目兼線」は進むにつれて道幅は小型四輪駆動車1台分ほどの道幅になり、勾配も急になってきたが、ギアを4WDに切り替えるほどでは無かった。















空気がひんやりして涼しい。
季節が秋だともっと自然を満喫できるに違いない。





朽ち果てた標識。林道目兼線と書いてある。





途中、「仏具山」への分岐点に出くわす。



仏具山への登山道へ通じるルートだ。
ガイドブックには「林道横川仏具線」とある。
ちょっと迷ったが入ってみることにした。
このルートに入って見たら、結構厳しいルートであることに気付いた。
まず道幅が狭い。
小型四輪駆動車1台がやっと入れる幅で、両脇は背の高い雑草や木の枝が伸びてきて、車体を容赦なく擦り付ける。
また勾配がかなりきつく、4WDでないと厳しい。さっきの分岐点で4WDに切り替えておいて正解だった。
不安感を感じながらしばらく進んでいくと、道が大きく地割れしている箇所が何か所も出てきた。
この地割れにハンドルをとられてスタックしたら大変だ。
やけくそになってアクセルを吹かす。
下手にスピードを落とすとこの溝にはまってしまうからだ。
対向車が万が一来たらヤバイと思ったが、1台の車も1人の人間も出くわすことはなかった。
この荒れた林道に好き好んでくる人はいなかったようである。
こういう所に来るもの好きは私だけなのかと一瞬頭をよぎった。
このルートの頂上まで登りきったとき、安堵感が出てきた。
下った所に分岐点があった。
標識がわかりづらい。



左の方に行ってみたら行き止まりだった。
変電所のような建物があった。



右側は下りだ。



この下りを行ってみることにした。
かなりの急こう配で、大きな石が散乱してあり、結構神経を使った。
途中、林の中の美しい木漏れ日を見た。



写真では分からないが、こういう自然そのものの美しい景観が林道で見られる。
下りの林道は部分的に舗装されていた。
林道の終点は国道289号線だった。
この林道も1台の車、1人の人間も出くわさなかった。

ここから次の林道、「林道弥太郎線」→「林道藤の木沢線」→「四時川林道」を目指す。
国道289号線の沿いの水力発電所から入っていく道、四時川渓谷への道から入っていくのであるが、この道の入り口が分かりづらく、何度も迷う。
「四時川渓谷」という標識はあるのだが、その先に標識が無い。
ここではないかという道に入ってみたら「通行止め」とある。
引換してまた何回が試行錯誤の運転を繰り返し、今度は間違いないだろと思った道に入ったら、行き止まりだった。
また引き返して、今度はこの道に違いないと確信(スマホのナビがあったから)した道に入ったら、さっきの「通行止め」の標識のある場所にまた行ってしまうという愚行をおかした。

仕方ないので、別ルートを探した。
ガイドブックを見ると、辺栗トンネルを過ぎたあたりに「江尻横川線」という舗装の林道から入っていけることを確認。
この「江尻横川線」と思われる林道んへ入っていった。







途中発電所の建物の付近で分岐点に出くわす。



朽ち果てた「林道弥太郎線」の標識を発見。
案内板は殆ど役に立たない。







途中仏具山へのルートを示す標識を発見。



この「林道弥太郎線」は比較的走りやすい。
途中、「林道藤の木沢線」→「四時川林道」に通じるルートに出くわすはずだったが、入り口を発見できなかった。
そのまま進んでみる。





T字路にぶつかる。左方面は通行止めだった。



やむなく右側に行ってみると、小川町に抜ける道であることが判明。
「林道藤の木沢線」→「四時川林道」に通じるルートを見失い、通り越してしまったことに気付く。
引き返そうと思ったが、丁度その時、雨が降り出した。
雨脚がだんだん強まってきたので、今日の所は、「林道藤の木沢線」→「四時川林道」の走破は断念した。

県道27号線から国道349号線を経由し、国道289号線に戻ったあたりから物凄いスコールに。
ちょっと心残りはあったが、今日の林道ツーリングはこれでいったん終わりにし、帰路につくことにした。

国道289号線から国道118号線に入り、コンビニで巻きずしを買って食べた。
国道118号線から県道60号線に入り、国道4号線を目指す。



この県道60号線は殆ど車がいなく快適だった。
最初は道幅が広いが、だんだん登りにつれて道幅が狭くなり、急こう配となる。
頂上から下りにに入ったあたりから雨脚が弱まり、小雨となったので左右の窓を開け放つ。
涼しい風が社内に入ってくる。
「最高に気持ちいい!!」
クーラーの故障なんか何の影響もなかった。
林道はクーラー無、窓全開が一番いい。
但し今回はアブが何度も車内に入ってきてうるさかった。
もっとも林道走行のスリルと戦っていたので、アブが襲ってくるなんかまったく気にならなかったが。

国道4号線に出た時はさすがにほっとした。
家に着いたのは夜の8時頃。
さすがに疲れた。
14時間連続運転。
総走行距離約420km。

今回走破できなかった「林道藤の木沢線」→「四時川林道」は後日行く予定だ。
秋がいいかな。


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林道の権威 安細錬太郎著「林道コース大全」を読む

2018-06-10 23:46:51 | 林道
今日は2週間前に初めて参加した社会人マンドリン合奏団体の練習に参加。
前回の練習で殆ど弾けなかったイタリアの難曲も今日は5割くらいは弾けるようになった。
演奏会まであと1か月であるがぎりぎり間に合うか。
今日はこの団体が発足した70年代の頃から続けている方と話す機会があり、マンドリン合奏の団体のメンバーが意外にも色々なところでつながりがあるなど興味深い話を聞けた。
またパートメンバーの方から、こちらから聞かなくても譜面の変更点について指摘してくれたり教えてくれたり、助けていただいた。とてもありがたい。
今日は、演奏していて楽しい気持ちだった。いつもこうならなおさらいいのだが。
1週間後は母校マンドリンクラブ50周年記念演奏会の合同練習に参加するために札幌に行く。
今はマンドリン合奏漬けの日々となってしまっている。

しかしこのマンドリン合奏漬けの日々も7月の演奏会が終ってしまうと、一段落で練習も無くなるようだ。
ちょっと寂しいが、反面、今までできなかったことを再開できる期待もある。
ここ数か月間のマンドリン練習漬けの日々の間、ときどき頭に浮かんできたのは、また林道を走りたいという気持ちだった。

20年くらい前に小型の四輪駆動車を中古で買った。
550ccの軽である。インタークーラー無しのターボ付き。
以来、同じメーカー、同じ車種の小型四輪駆動車を中古で買い替え、今は3台目。
660cc、現走行距離16万キロ。まだまだ元気。笛吹音有り。
目標走行距離20万キロ。

20年前は、毎週のようにこの小型四輪駆動車で林道に行った。
初めて行った林道は中津川林道。
この林道を皮切りに4年間で結構な数の林道を訪れた。

中津川林道(H11.5.8)
田代山林道(H12.6.17)
真名畑八溝林道(H11.9.25)
林道小中新地線(H11.5.23)
林道北榛名山線
林道妙義荒船線(H12.6.13)
林道中之岳線(H12.6.13)
林道千駄木基幹作業路線二号線(H12.6.13)
御荷鉾スーパー林道(H11.11.21)
川上牧丘林道(H12.6.3)
水ヶ森林道(H11.5.8)
林道木賊平線(H13.7.21)
大野山林道(H13.7.21)
樫山林道(H13.7.21)
小森川林道(H13.7.21)
広域基幹林茂来線(H12.5.21)
西荒川林道(H11.5.30)
西前高原林道(H11.5.30)
横根林道(H11.7.18)
近沢林道(H11.5.159
秋鹿・大影林道(H14.10.13)
万沢林道(H14.10.13)
前日光林道(H11.5.16)
赤城山林道(H11.5.23)
黒川林道(H12.5.21)
中の沢林道(H12.5.21)
七久保橋倉林道(H11.11.21)
名無林道(H11.11.21)
四日市場上野原線(H11.12.24)

これらの林道は地図に記録を残しておいたものだが、これ以外にも走った林道がある。
また北海道でも3か所走ったが地図がどっかいってしまった。

これらの林道で最も記憶に残っているのが、妙義荒船林道。
林道に入ってしばらくすると、暗く狭いトンネルに入る。
夜に肝試しが出来そうな所だ。
そして支線の林道千駄木基幹作業路線二号線に入ると、奥に進むにつれ暗く狭く荒れた道になり、登れるかと思うほどの急こう配の坂がある。
ギアを1速にしないと登り切れない。
またこの 妙義荒船林道は奥の方が土砂崩れで道が塞がっていたと記憶している。
普通はここで引き返すのであろうが、20年前の自分はここで、四駆のギアをローに入れてがれきの山をゆっくりと慎重に乗り越えたことがあった。
たしかこの林道だったと思うが、20年前なので違うかもしれない。
あとはこれもどの林道だったか忘れたが、通行止めの柵が脇に寄せられていたので、好奇心からその道に入っていったら、とんでもない悪路だった。
車体が横に倒れるかと思うほどの傾いた狭い道を下っていったら、オフロードバイクが物凄いスピードで対向してきたが、まさか自動車に対面するとは思っていなかったらしく、急坂を途中で登り切れず倒れてしまった。ちょっとかわいそうだったが、この後ふもとまで引き返して再チャレンジしたのであろうか。
あとは真名畑八溝林道が面白かった。
また北海道の林道、これも地図が無いので名前を確認できないのだが、頂上付近で片側が崖で切れ落ちている所があり、そこを通りすぎるときに、怖い思いをしたことがあった。
登山でいうと鎖場を歩くときの心境だ。

今日紹介する安細錬太郎著「林道コース大全」は20年前に林道にさかんに行っていた頃に買ったものだ。
もう1冊別の安細錬太郎氏の著作を買ったが引越しの際にどこかへしまいこんでしまったので、今手元に無い。
安細錬太郎氏は1933年生まれ。
自動車専門新聞の記者を務めたあと、フリーになり、林道の権威として知られていたようだ。
この「林道コース大全」は日本全国各地の林道を、著者が実際に訪れ、走った体験をレポートしたものだ。
250ページほどの著作で、膨大な数の林道が写真入りで紹介されている。
安細錬太郎詩はこの本のまえがきで、何故林道を走るのかについて、「未知の風景を見たいから」と言っている。
林道は日常の風景とはまるで違う。
まず人が入り込むことは無い。
メジャーな林道は少ないながらも人や車と出会うことがあるが、マイナーな林道は一人の人間も、一台の車も出会わないことがある。
日常から遊離し、周りから隔絶した空間がそこにある。
とりたてて美しい風景があるわけでない。
荒れた砂利道、薄暗い林、崩れかかった山肌。
しかしそこは自然が生み出したままの風景が広がる。
人が手を入れていないのだ。
人工物は一切無い。
粗末に切り開かれた道が続いているのみ。
こういう道をゆっくりと窓を開けて走るのが好きなのだ。
夏でもエアコンは入れない。
ここを走るとありのままの自然に触れられる。気持ちがいい。

安細錬太郎氏の車は四輪駆動車でない。
小型の普通乗用車だ。そこが驚きだ。何故四輪駆動車にしない?
林道に重装備した車は不必要だからだ。
ここが凄いところ。林道の権威と言われるのもうなずける。
つまり林道を走るのは車が主役でないからだ。
林道を走りたいという人間が主役。車ではない。
狭い林道をパジェロだの、ハイラックス・サーフだの、ランクルだので、走っている人がいるが、
これは場違いだ。
こんな車は砂漠へ行ってくれと言いたくなる。
こんな車で狭い林道を走る人は、車を見せたがっている人。
林道を楽しむ人はこんな車は乗らない。
また小型の四輪駆動車でも、ウィンチ付けたり、重装備で廃道を荒らしながら走る人がいるが、こういう走りかたも好きではない。
廃道は自然の宿命。荒らすべきではない。そっとしといてあげるべきだ。
廃道に行きたければ、車を降りて、歩いて楽しめばいい。

私の林道の走りかたは安細氏と同じだ。
山を登るのとおんなじだ。
非日常の景観、未知のルートに入っていくときの高揚感。
静かにゆっくりと楽しむのがいい。

マンドリン合奏練習が一段落したら、さっそく林道に行くつもりだ。
安細氏の紹介する林道をこれからどれだけ訪れることができるか。














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