(前回からの続き)
9:20、備後落合発。確かに登りの路線だ。山の中を深く入っていく感じだ。両側に民家などは無い。
スピードはゆっくり、短いトンネルをいくつも通過していく。左側は渓谷と道路が並行して走る。終始、レールと両車輪が摩擦する。キーッという音が聞こえてくる。
列車のスピードが上がると同時に民家が見えてきた。油木からまた登りだ。ここから山深く入っていく。周りは森林のみ。
油木を過ぎ、三井野原駅の手前でスキーウェア貸し出しの看板が見えたが、この近くにスキー場があるのだろうか。三井野原駅近くに民宿や貸スキー場がいくつかあった。
この駅で家族連れが何人か乗車した。
そうこうしているうちに、列車のスピードが極端に落ちた。備後落合駅で会ったあのボランティアの元機関士の方が言っていた、オレンジ色の鉄橋にさしかかっていたのだ。思わずカメラを取り出し、シャッターを押す。すぐ近くにループ橋が見えた。この道路はいずれドライブしてみたい。
(元機関士が話していた昔の事故の話を思い出す。列車が崖から転落したとのことだった)
このあとしばらくすると路線は行き止まりとなり、停車。運転手が反対側の運転席に移動した。スイッチバックだ。
そしてすぐに出雲板根駅に到着。すると運転手が元の反対側の運転席に戻り、逆方向に運転を再開。ここから下りとなる。
スピードを落として慎重に下っていく。下に見える道路の位置まで下ると列車は速度を上げ始めた。
八川から民家と田んぼの点在する風景に変わる。出雲横田駅で熟年夫婦が下車したが、観光なのか。駅周辺に古い民家(旅館?)が立ち並んでいた。
その後しばらくして「亀嵩(かめだけ)」という駅に着く。松本清張の代表作で映画やドラマにもなった「砂の器」の舞台となった駅だ。
駅の中にそば屋があった。そばのにおいが漂ってくる。ここからは下りでスピードをかなり落としながら運転。
出雲三成で行き違い列車待ち合わせで4分停車。しかし今回この列車に乗った乗客は少ない。トロッコ列車が走るようだが、そっちの方に鉄道ファンは乗るのだろうか。そうこうしているうちに、向かい側からトロッコ列車が入ってきた。窓がない。
やはり乗客は観光客だ。ほぼ満席。ディーゼル機関車が後ろに連結されていて、後ろから押していた。窓ガラスが無いけど、雨が降ったらどうするのか。ここから登りとなる下久野からかなりの下りでスピードが落ちる。いくつかの短いトンネルを抜ける。かなり慎重な運転だ。
日登のあとは終点、木次(きすき)だ。もう住宅がたくさん見える景観に変わっていた。
11:28、木次着。同乗していた単独の鉄道ファンが話しかけてきた。その方は12時発の備後落合行でまた木次線に乗って引き返すとのことだった。この路線が廃止される前に乗っておきたいとのことだった。反対方向からの景観はまた違って見えるのかもしれない。
少し時間があるので、駅の中の観光案内所で木次線の沿線マップをもらった。木次→宍道間も結構楽しめそうだ。
列車は備後落合から乗って来たのと同じ車両だった。
備後落合駅のボランティアの方が、芸備線の一部区間では運賃100円に対して運行コストが2万円くらいかかると言っていたが、これだけの赤字であれば廃止される可能性大だ。せめて観光で訪れる客がたくさんいればいいのだが、今はこういうローカルな所には車で行く時代?(判読不能)だから、よっぽどの鉄道ファンでないと乗車することはないのだろう。鉄道ファンそのものも昔に比べて減ってきているように思う。
11:54発だが、反対ホームの備後落合行の入線が遅れたため、2分遅れの11:56発となった。しばらくは民家と田園地帯が続く。南大乗からやや登りか。スピードは遅くはない。
そのうち睡魔に襲われ、こっくりと居眠りをしてしまう。目が覚めたら終点、宍道の手前だった。
(次回に続く)