緑陽ギター日記

趣味のクラシック・ギターやピアノ、合唱曲を中心に思いついたことを書いていきます。

クリスチャン・フェラス演奏、エルネスト・ショーソン作曲「詩曲Op.25」を聴く

2024-04-05 22:27:16 | バイオリン
久しぶりにこの曲を聴いた。
エルネスト・ショーソン作曲「詩曲Op.25」。

初めて聴いたのは今から3年前、FMラジオで放送されていたライブ録音、ヴァイオリン:神尾真由子、ピアノ:田村響による演奏だった。
この時の演奏はピアノ伴奏版だった。

10日ほど前に聴いたのはオーケストラ伴奏版で、クリスチャン・フェラス(ヴァイオリン)、ジョルジュ・セバスティアン(指揮)、ベルギー国立管弦楽団による演奏で、1953年6月、ブリュッセルで録音されたものだ。
ショーソンが1899年に自転車事故で亡くなる3年前の1896年に作曲され、ロシアの作家ツルゲーネフがルネサンス・イタリアを舞台として書いた小説『恋の凱歌』(または『勝ち誇れる愛の歌』に基づく交響詩として着想されたとされている(ウィキペディアより)。

ショーソンと言えばこの「詩曲」の作曲者として知られるくらいであり、他の曲は殆ど聴かれていないのではないだろうか。
だいぶ以前に、「風景」という、暗い、もの悲しいピアノ曲を聴いたことがある。

10日ほど前にクリスチャン・フェラスの演奏を聴いたときは、ちょっとした衝撃だった。
まず冒頭からしばらくして奏されるヴァイオリンの旋律に、何とも物悲しい、切ない感情が宿っているように感じた。
決して、作為的なものでなく、本物の感情としてである。

この部分の演奏を他の奏者がどのように演奏しているか、ダヴィット・オイストラフ、ヤッシャ・ハイフェッツ、アイザック・スターン、チョン・キョンファ、ヘンリク・シェリンク、ヒラリー・ハーンなどの演奏家の録音を聴いてみたが、やはりクリスチャン・フェラスの演奏が圧倒的に素晴らしかった。

Youtubeにこの1953年の録音があるので、是非聴いていただきたい。
冒頭から5:40まで、とくに1:39~2:53、そして3:41~5:40までのヴァイオリンソロの部分だけでも聴いて欲しい。
必ず、強い感情が想起されるはずだ。
そして出来れば、他の奏者の演奏と聴き比べして欲しい。

クリスチャン・フェラスというヴァイオリニストは並外れた人間的感受性、音楽的感性の持ち主であることは疑いのないことであろう。
感受性が鋭いということは反面、それだけ心理的な影響を受けやすく、ガラスのように繊細な脆さという側面も併せ持つものである。

クリスチャン・フェラスは1970年頃から道を踏み外し、精神を病み、最後には不幸な死を遂げた。
しかしこの演奏の記録から、彼の人間としての偉大さを感じ取ることが出来る。
ヴァイオリンという楽器から、これほどの強い感情を引き出せるに至った、彼の人生を賭けた膨大な努力に敬意を表さずにいられない。

Christian Ferras - Chausson, Poème for Violin and Orchestra Op.25
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ドラマ「さよならマエストロ~父と私のアパッシオナート~」を見る

2024-03-15 23:16:48 | バイオリン
毎週日曜日、21時から「さよならマエストロ~父と私のアパッシオナート~」というドラマが放映されている。
このドラマ、すごく面白いし、感動する。
2月頃に途中から見るようになり、それから録画し忘れたりして、半分も見ていないのだが、先週日曜で第9話、そして明後日の第10話で最終回を迎える。

あらすじをネットからちょっと拝借した。
「超マイペースかつ天然な主人公の夏目俊平は、若くして海外で活動し、数々の著名なオーケストラと共演してきた天才マエストロ(指揮者)。大好きな音楽に対し、常にアパッシオナート(音楽用語で情熱的)に向き合い、その情熱には同僚も好影響を受けていた。しかし、音楽以外の才能は皆無で、特に家事は苦手だった。
5年前に起きたある事件をきっかけに、家族は俊平のもとを去った。それに伴い俊平は音楽業界と距離を置いていた。しかし、富士山を望む静岡県晴見市の市民オーケストラの指揮をするため、20年ぶりに帰国する。
そんな俊平の娘・響。彼女は5年前のある事件をきっかけに、父と決別し、晴見市の職員として音楽の無い人生を過ごしていた。ところが俊平が突然帰国することになり、気まずい雰囲気の同居生活がスタートする。
世界的な天才指揮者だった彼が、なぜ表舞台を干されることになったのか?そして、5年ぶりに再会した娘。娘の気持ちが分からない俊平が、父として再び娘と向き合う中で、彼女の人生を少しずつ動かしていく。」(ウィキペディアより転載)

アマチュア・オーケストラに所属している方は必見のドラマだ。
先日の第9話では、俊平と響が親子の絆を取り戻し、響が音楽に対する情熱を再び復活させていくシーンは、かつての私の20代の頃と一部重なることもあり、久しぶりに感動の余韻に浸ることができた。

響は音楽とは何か、音楽を演奏することの本質に目覚める。
響はメンデルスゾーン作曲ヴァイオリン協奏曲ホ短調がお気に入りの曲で、とくに第2楽章に強い思い入れを持っている。
偶然にもこの曲の聴き比べを現在やっているが、この曲を聴くと、心が癒される。非常に愛情に満ちた音楽と言える。
メンデルスゾーンという人間がとてつもなく感性が豊かで、愛情豊かであったことが、この音楽を聴いて分かる。

明後日の最終回では俊平の指揮、響のヴァイオリンでメンデルスゾーンの協奏曲を演奏するのかな。楽しみだ。

下にクリスチャン・フェラスの第2楽章のライブ録画を貼り付けさせていただく。そのあまりにも美しい音に...。

Christian Ferras plays Mendelssohn Concerto 2nd mv

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Youtubeの音楽録音は最も重要な要素が欠落している(コーガンの録音を聴いて)

2024-03-03 21:12:11 | バイオリン
今日、注文していたレオニード・コーガン演奏、メンデルスゾーン作曲ヴァイオリン協奏曲ホ短調のライブ録音のCDが2週間ほどかかってやっと到着していた。

エフゲニー・スヴェトラーノフ指揮、ソ連国立交響楽団、1960年4月24日ライブ録音

同時発注したコーガン演奏、コンスタンティン・シルヴェストリ指揮、パリ音楽院管弦楽団のCDは未だ届かない。
日本に在庫がなく、製造元のロシアのMKというレーベルから取り寄せたようだ。

注文し終えてからスヴェトラーノフ指揮、ソ連国立交響楽団の演奏をYoutubeで見つけて聴いてみたら、正直なところ、シルヴェストリ指揮の方に比べると精細さに欠ける印象を受けたので、その時は注文して失敗したと思っていた。
しかし今日、あまり期待せずにこのCDをステレオで聴いてみたら、びっくり。
Youtubeで聴いたときの演奏と全く印象が違っていた。
コーガンのヴァイオリンから出てくる音がまるで今、生きているかのように清冽さを放って迫ってくるのである。
あまりもその感情エネルギーの凄まじさに瞬間的に感動の涙が噴き出してきたほどだ。
こういう衝撃って、10年以上前だが、マリヤ・グリンベルクの弾くベートーヴェンのピアノソナタ第32番や、アルトゥーロ・ベネデッティ・ミケランジェリの弾く同じくベートーヴェンのピアノソナタ第32番を聴いたとき以来だ。

何故こうもYoutubeの投稿録音と今回のCDの音源との受ける印象の落差が大きいのだろう。
それは、新鮮なひき肉とたまねぎを使ってフライパンで焼いたハンバーグを焼きあがった直後に食べるのと、何か月も冷凍保存されていたミンチから作ったハンバーグ、それも冷めて冷たくなったものを食べるほど違いがあるように感じられた。
今回聴いた1960年のライブ録音の音源のマスターテープは恐らく発見されたときには保存状態が良く、保管場所から繰り返し持ち出されたりしていなかったのであろう。
だからオリジナルの音源がまず非常にいい状態であったことが推測される。
あとYoutubeに投稿する際にはどうしても容量が圧縮されるのでオリジナルとは一層かけ離れたものになるに違いない。
投稿によってはかなり電気処理を施してしまっているものもある。これは最悪だ。ピッチが変動してしまっているものさえある。
再生装置もパソコンだとオーディオのアンプというわけにはいかないだろう。
オーディオのアンプといってもCDの場合はそんな何十万もするような高級なものは必要ない。
私はマランツが倒産したときにバナナのたたき売りのように安売りしていた普及機を20年くらい前に買ったのを使っているが全然性能は落ちていない。

やはりYoutubeの投稿録音というものは聴き手にとって最も重要な要素である、「演奏者の感情エネルギー」がかなりの割合で欠落してしまっているといっていい。
今回のコーガンのライブ録音がそれを証明している。
だからYoutubeのみ聴いて演奏の良し悪しを判断することは危険だ。
本当は素晴らしい演奏なのに、その真価が再現されていないがために一生に一度の素晴らしい出会いを逃してしまう可能性もあるのだ。
お金はかかってしまうが、クラシック音楽は出来るだけCDやレコードで聴いた方がいい。
よく、ネットでYoutubeだけの鑑賞で名盤紹介をしている記事を見かけるが、そういう情報はうのみにしない方がいいというのが私の見方だ。

しかしレオニード・コーガン(1924-1982、旧ソ連(現、ウクライナ))というヴァイオリニストは凄い。
以下はタワーレコードの解説から拝借させていただく。

「コーガンは1951年にベルギーで開催された第1回エリザベート王妃国際コンクールに優勝して、一躍世界に名を轟かせたヴァイオリニストである。1955年から西側での本格的な活動を開始し、1958年に初来日。親日家となり1978年まで計8度も来日している。コーガンは非常に小柄だったが、ひとたびヴァイオリンを手にしてステージに立つと圧倒的な演奏を聴かせた。現代のトップ・ヴァイオリニストにもひけをとらない超絶技巧、多彩かつ鮮やかな音色美、人並み外れた集中力、端正な造形美、そして音楽の内側から溢れだす類い稀な情熱。これだけ素晴らしい芸術家のLPが希少盤となったのは、彼の表現主義的とも言える演奏が、当時の時代精神に少し合っていなかったためだろう。同じ旧ソ連なら彼の先輩にあたるオイストラフ(1908~1974)の揺るぎない安定感と穏やかな情緒の方が人気を博していた。もっともオイストラフとコーガンは私生活では大の仲良しであったのだが。しかし、コーガン没後の人気再燃は彼の芸術がいかに魅力的で優れたものであったかを証明している。ベートーヴェンやブラームスでの雄大なスケールと高貴な音楽性、チャイコフスキーやラロでの濃厚な民族色と圧倒的な技巧、そして妻エリザベータとの美音と美音が交錯するヴァイオリン・デュオの愉悦。極上の名演の数々が、オリジナルLPに勝るとも劣らない高音質で眼前に蘇っている。」

またウィキペディアによるとコーガン夫人はあの大ピアニスト、鋼鉄の腕を持つと言われたエミール・ギレリスの妹で彼女もヴァイオリニストだったそうだ。
コーガンは1982年、ウィーンでの演奏旅行から帰った直後、息子パヴェルと共演するため、オーストリアとロシアの間を列車移動中に心臓発作を起こし、誕生日を目前に58歳で不慮の死を遂げた。

協演した指揮者のエフゲニー・スヴェトラーノフも凄い実力の持ち主だ。
以前、チャイコフスキーの悲愴や、イエペスと協演したアランフェス協奏曲の録音を記事にしたことがあったが、彼は指揮者だけでなく、ピアニストとしても一流であり、作曲家でもある。その演奏や作品はYoutubeで聴くことが出来る。
今回のメンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲も非常にいい演奏をしている。ソロとの絶妙なバランス、表現の自然さ、音の美しさ、どこをとっても超一流だ。
第3楽章でコーガンの演奏を優先させ、あのスピードに殆ど完璧に合わせていっているその技量の高さに脱帽だ。
このライブ演奏でもあの赤い色の小型扇風機を指揮台に置いて演奏したのかな?。



【追記】
10年くらい前に来日したあるスペインの有名なギター製作家から直接聞いた話(通訳を通して)であるが、彼はコンサートでセゴビアなどの巨匠の演奏を聴いて、客席の多くの観客が涙を流しているのを見たそうだ。それに比べると昨今はちょっとあきれる。距離を置いているという感じで涙を流すような人は殆どいなくなったと言っていたのを思い出した。

【追記】
スヴェトラーノフ(1928-2002)、ロシア)のあの小型扇風機であるが、1970年代から使っていたそうだ。ウィキペディアにこんな記述があった。
「1970年代頃から、ロシア国立交響楽団を指揮する場合は、ライブであろうがスタジオであろうが、必ず譜面台に赤い扇風機をつけて指揮していた。しかも、旧ソ連製であるゆえかライブ録音のCDなど弱音時に扇風機の音が聴こえるため、CDの解説書に但し書きまでついていた。これについて、より静粛性が高くて風量も多いタイプを薦められたこともあったが、馴染みのある赤い扇風機に拘っていたスヴェトラーノフは全て断り、海外公演の際は変圧器まで用意して使っていた。」
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クリスチャン・フェラス演奏 ンデルスゾーン作曲ヴァイオリン協奏曲ホ短調ライブ録音を聴く

2024-03-02 01:23:24 | バイオリン
今日は4年前の講習会で親しくなった友人2人とオンライン飲み会をやった。
オンライン飲み会と言っても結構深い話題になることが多い。
2人ともそれぞれ悩みをかかえながらも前向きに強く生きている姿を見て、こちらの方が力を与えてもらった。
2人とも地方に住んでいるが、今年の9月下旬に会って1泊してとことん楽しもうということになった。

こんな遅い時間となってしまったが、このところはまっているメンデルスゾーン作曲ヴァイオリン協奏曲の聴き比べを今日も実行。
今日はクリスチャン・フェラスのライブ録音でいい演奏を見つけた。(先日記事にした演奏とは別のようだ)

ボーゴ・レスコヴィチ指揮 ケルンWDR交響楽団 録音年:不明(1950年代後半から1960年代前半と思われる)

Youtubeで再生回数500万回を超えている演奏よりも何十倍も素晴らしい。
とくに第1楽章はどの演奏者にもない独自のものを感じる。

Christian Ferras plays Mendelssohn's Violin Concerto (live)


これまで聴いてきた中で大きな感動を得た演奏を下記に挙げておきたい。

①ヨハンナ・マルツィ演奏 パウル・クレツキ指揮 フィルハーモニア管弦楽団 1955年録音

②ダヴィッド・オイストラフ演奏 ユージン・オーマンディ指揮 フィラデルフィア管弦楽団 1955年録音

③レオニード・コーガン演奏 コンスタンティン・シルヴェストリ指揮 パリ音楽院管弦楽団 1959年録音

④アイザック・スターン演奏 ユージン・オーマンディ指揮 フィラデルフィア管弦楽団 1958年録音

今度、聴き比べの結果を正式に記事にあげることににしたい。
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チョン・キョンファ演奏 メンデルスゾーン作曲「ヴァイオリン協奏曲ホ短調」ライブ演奏1971年を聴く

2024-02-25 00:10:14 | バイオリン
5,6年くらい前にも記事にしたが、韓国のチョン・キョンファのロンドンでのライブ演奏だ。
メンデルスゾーン作曲「ヴァイオリン協奏曲ホ短調」
1971年、指揮:アンドレ・プレヴィン、ロンドン交響楽団

チョン・キョンファもアンドレ・プレヴィンも若かった頃だ。
チョン・キョンファの姿が初々しい(22、3の頃だ)。
渾身の演奏。

自分もこのくらい無心でエネギッシュな演奏が出きたらな、と思うのだが...。


Kyung Wha Chung plays Mendelssohn violin concerto (1971)
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