緑陽ギター日記

趣味のクラシック・ギターやピアノ、合唱曲を中心に思いついたことを書いていきます。

ギター教則本に望みたいこと

2021-07-31 21:55:24 | ギター
クラシックギターの教則本はこれまで数多くのものが出版されてきたが、私が使ってきたものの中で、1.取り組み易い、2.本気で取り組めば著しい成果を期待できる、3.独習者でも習得可能な配慮がなされている、といった諸条件を満足するものとして特に印象に残る教本は以下の3冊である。

①現代奏法による「カルカッシ・ギター教則本」阿部保夫著(全音楽譜出版社)
②演奏家を志す人のための「クラシック・ギター教本」1~3巻 鈴木巌著(全音楽譜出版社)
③演奏家のための「ギター基礎技法」鈴木巌著(全音楽譜出版社)







クラシックギター教則本の入門編としてよく知られるカルカッシ・ギター教則本にはこれまでさまざまなものが出版されてきたが、①の阿部保夫著「現代奏法によるカルカッシ・ギター教則本」は半世紀以上の超ロングセラーである。
この教則本がこれだけ長い間、一度も絶版にならず生き残ってきたということは、それなりの理由がある。
この本の特徴は左指のみならず右指の運指を細かく丁寧に付けているところにあり、指使いをどう決めてよいか判断できない初学者が迷うことなく、正しい運指を学んでいけるのはとくに独習者には大変助けとなる。



②の鈴木巌著「演奏家を志す人のためのクラシック・ギター教本」はさらにあらかじめ用意しておくいわゆる「影の運指」についても丁寧に記載、解説しており、これも独習者にとっては大変役に立つ教えであった。
この本も①と同様に超ロングセラーだ。



ギターを始めて6年間くらいまでは、このようなあらかじめ用意された基礎的な土台となる指使いを盲目的に習得する必要はあると思う。
しかしそれをクリヤーした後は、自分で運指を考え決めていく学習方法が望まれる。
それを満たすのが③の鈴木巌著「演奏家のためのギター基礎技法」なのであるが、この本において、読者が自分の頭で運指を考え、決める練習課題はスケール(音階)しかない。



それも十分な学習効果があるのであるが、これに加えて望みたいのは、運指を全く付けていない練習曲を掲載し、その練習曲に読者が自分で考えた運指を施す訓練を目的とした内容を盛り込んで欲しいということだ。
練習曲は可能な限り、著者が作曲したものの方が良いが、古典時代の練習曲でもいい。
とにかく全く白紙の状態から、学習者が知恵を絞って、いろいろと試行錯誤を重ねて考えて運指を決めていくという訓練が、その後演奏会用の曲に取り組むときに非常に役に立ってくれると思う。

演奏会で演奏されるような曲は大抵、作曲者や献呈者の運指が付けられており、演奏者の多くは楽譜に示された運指をそのまま使用することが多いと思うが、必ずしもその運指通りに弾かなければいけないというものではなく、演奏者の音楽解釈や技巧のレベルに応じて運指の付け替えをすることはよくあることだ。
例えば、ファリャ作曲の「讃歌 ドビュッシーの墓」に出てくる下記のフレーズの運指は、譜面に付された運指通りではなく、熟考されたうえであれば開放弦を中心としたローポジションで弾く運指でも構わないのである(数年前の東京国際ギターコンクール本選でこのローポジションでの運指で演奏する参加者を見たことがある)。



ソルの有名な練習曲op.60の4番ハ短調の運指も、ローポジションではなく、ハイポジションを多用した音質重視の運指がある(玖島隆明編、好楽社ピース)。



こういう運指を変更したり、全く運指の付いていない楽譜に対し、自らが考えて合理性と音楽性の両方を満足する運指を付けていくためには、やはりそれを可能とする訓練、学習方法が必要であろう。
巻末か別冊でいくつかのバリエーションでの模範解答を示し、それぞれのバリエーションの運指の元になった考え方を機能面と音楽面の両面からの解説を掲載してあるのが理想だ。
学者者は極力回答をすぐ見ようとせずに、これ以上はもう考えられないまでに考えつくして、運指を決めていくのがベストだ。
こういう「考える」学習方法を盛り込んだ教則本は殆どないように見受けられる。

昔、80年代前半の現代ギター誌で、「運指クイズ」なる連載記事があった。



愛好家が頻繁に取り上げる有名な曲や練習曲などの運指を読者から募って、プロの演奏家が模範解答を示す、という内容であったが、こういうのも面白いし、練習に役立つなと思ったものだ。

あと2つ目は、リズムを正確に取れる能力を鍛える教材を盛り込んでくれることを望みたい。
③の鈴木巌著「演奏家のためのギター基礎技法」には、このリズムを正確に刻めるような能力を身につけるための課題が豊富に掲載されているが、どのようにしたらリズムを正確に刻めるようになるか、拍を正しく数えられるようになれるか、という視点では解説してくれていない。



確かにメトロノームを使って練習していけば、体で覚えていけるようになるのかもしれないが、そうはいってもリズムの取り方にはそれなりのノウハウがあるはずだ。
そのノウハウ、数え方のコツのようなものを教えてくれる教材はギター教則本の中では皆無のように思える。
だけどこれは結構、重要なことではないかと思う。

クラシックギター奏者の中には、リズムに弱い人がたくさんいる。
それはこのような練習、訓練が不足しているためだと思われる。
以前、80年代初めにエジンバラ音楽祭でブリームがM.バークリーの「一楽章のソナタ」という曲を演奏したライブ録音を、楽譜と照らし合わせて聴いたとき、そのリズムの正確さに驚嘆したことがあったが、ブリームはギター以外に音楽の基本を幼い頃から習得していたからこのような演奏が自然に出来ていたのではないかと思う。

以前、パウル・ヒンデミット著「音楽家の基礎練習」(音楽之友社)という本を買って、基礎的なリズム、和声等を勉強しようと思ったけど、出来なかった。



一人では難しい。
今はオンラインで低料金でこういうことを専門に教えてくれる人(音大生?)がいるようなので、今度習ってみようかと思っている。

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銅製弦止めを試す

2021-07-25 21:05:06 | ギター
ギターの音を少しでも良くしたい、という思いで10年くらい前から色々な弦止め(チップ)を試してきた。
これまで試した弦止めの材質は、象牙、樹脂、アルミ、牛骨。
今回試したのは、アルミ、真鍮、銅製の3種類セットになったもののうち、銅製のもの。
値段はそう高くない。





下は真鍮とアルミ。



やはり銅の方がいい色だ。見栄えがいい。

現代ギター社のクリアトーン(アルミ製)とほぼ同形状、同サイズだが、決定的な違いは、クリアトーンは弦を通す穴のエッジを研磨加工しているのに対し、今回試したチップは仕上げ加工されていないか、されていてもごくわずかしかされていないことだ。
つまり手間をかけずにコストを優先していることになる。
恐らく長さ2500mmサイズの汎用金属管を切削加工したものであろう。
この穴のエッジに弦が当たるので、エッジが鋭角のままだとその部分で弦が切れて、表面板に痛々しい傷を付けるリスクは考えていた方がいいだろう。
傷がお嫌いな方は、弦の結び目を5弦、4弦、2弦は2巻き、1弦は3巻きすることをお勧めしたい。

装着方法はクリアトーンと同じ。



装着した直後は、どんなチップもそうであるが、音がこもってしまい、本来の音が出てくるのに1日以上かかる。
とくに今回は6弦が著しくこもってしまった。
1日経過し、何度か弾いているうちに徐々に本来の音が出るようになってきた。

効果はどうであろうか。
正直、大きな変化は感じられなかった。
ただ牛骨製に比べ、わずかに弦の張力が強くなったような気がするし、しなやかさがわずかに無くなったような気がする。
低音弦はちょっと軽くなったような?。
実に頼りない感想だが、もう少し日数が経過しないと違いが現れてこないのかもしれない。

参考にならないかもしれないが、試し弾きの音を録音した。

銅製パイプ形状弦止めチップの試し弾き2021年7月25日

5弦の音が、牛骨製チップのときよりも軽いような気がする。

なお、このタイプの弦止めの注意点は、パイプに巻いた弦とパイプとの間に空間が出来た状態で装着すると、演奏している最中に突然、このゆるみが締め付けられることで、音が下がってしまうことがあるので、空間を作らないように巻き付けなければならないことだ。

真鍮とアルミの方はいつかレポートしたい。
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三枝成彰:作曲、平峯千晶:作詞「あしたはどこから」を聴く(5)

2021-07-23 23:53:22 | 合唱
コロナでしばらく合唱演奏を聴く機会が減っていたが、またじわじわと合唱熱が再燃してきた。
この静かな夜に聴くにふさわしい曲、そして演奏と言えばこれになるだろう。

三枝成彰:作曲、平峯千晶:作詞の「あしたはどこから」
演奏:神奈川県立多摩高等学校(2003年(平成15年)第70回Nコン全国大会)

それにしても素晴らしい演奏だ。
これほど無心、無我の境地に至った演奏は極めてまれであろう。
演奏者たちは恐らく全く意識していないだろうが、人間心理の二極性を見事に表現している。
「光と闇」、「栄光と挫折」、「希望と絶望」、「善と悪」、「幸福と不幸」。
人間はこのコインの表裏のような関係性のある二極性を体験し、その価値を知るよう運命づけられているように思う。
「闇」を嫌というほど体験した人間は、どん底の中でもがきながらもその苦しみを受け入れ、背負って生きていく覚悟をする。
そしていつか闇を抜け出たとき人は、「光」のみならず「闇」の持つ価値の大切さ、尊さに心の底から感動するのではないだろうか。

長調に転調してから、多摩高等学校の歌声から聴こえてくる想いの強さ、表情の変化が素晴らしい。
ここを聴くと、心の深いところからものすごく強い感情が溢れ出てくる。

『私が未来をうたうときには
風だって私に引きずられて吹くだろう
春の声がともに問うだろう
そして照らすだろう
私と世界の付け根から
だんだん強く、だんだん確かに、
ああ、朝のひかり。』

あしたはどこから 混声合唱(神奈川県立多摩高校)
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ギター録音(18)「スペイン舞曲第5番」

2021-07-23 21:22:12 | ギター
この4連休、緊急事態宣言下ということもあり、どこにも出かけないつもりだ。
そのかわり普段なかなか出来ないこと、例えば睡眠をたっぷりとること、食事を作ること、ギターを弾いたり録音すること、本を読む事、音楽を聴くこと、などやりたいことをしようと思っている。(もう半分経過してしまったが。それに明日講習会の行事で半日つぶれてしまう)

今日、今まで練習してきた独奏曲、グラナドスのスペイン舞曲第5番を録音することにした。
完成度はまだまだだが、いつになったら納得のいくレベルに到達できるのかもわからないため、現状のままでいいからまずは録音して公開してみることにした。

やはり録音となると、いらぬ緊張をしてしまい、思うように弾けていない。
音楽を演奏するときは至福の心境になっていないと、いい演奏が出来ないのは頭では分かっていても、どうしてもプレッシャーから来る緊張が出てしまう。
一人で録音するのだから何も緊張する必要はないではないか、と言えばそれまでだけど。
プロの方は、こういうメンタルの課題を克服して、コンサートや録音でも無我の境地で演奏できるように訓練しているのだと思うと、並大抵のことではないなと思った。

グラナドス作曲「スペイン舞曲第5番」 2021年7月23日録音
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太刀魚を焼いてみた

2021-07-23 21:11:58 | グルメ
スーパーで「太刀魚」というめずらしい魚が売っていたので、食べてみることにした。





太刀魚を見るのは初めてではない。
めずらしい魚なので頻繁に見るわけではないが、昔、アメ横で切り身ではなく、一匹まるまんま売られていたのをよく見かけたことがある。平たく、細く、銀色で、体長がまさに太刀の長さほどの変わった魚だ。
夏の炎天下の中で、冷やしもせずにそのまま店頭に出されていて、悪くならないのかと思ったものだ。

今日買ったのは切り身。
さっそくフライパンで焼いてみる。



焼いているとほのかに甘い香りが漂ってくる。
魚を焼いてこんなに甘いにおいがしたのは初めて。
意外にも上品な魚なのか。
恐らく、普通の海には生息していない魚なのかもしれない。
肉食か?、それとも草食か?。
草食かもしれない。

いいところで火を止める。



何十年も使っている小汚い皿に移す。完成!。



味はやはりほのかに甘く、淡泊で、すっきりしていて上品。
おいしい!。
これはいいものを食べた。満足。
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