世界の中心で吉熊が叫ぶ

体長15センチの「吉熊くん」と同居する独身OLの日常生活

「葡萄が目にしみる」的世界

2011年07月09日 23時57分24秒 | Weblog
「葡萄が目にしみる」という小説がある。林真理子先生の初期の作品だ。乃里子という女子の高校時代の葛藤を描いた名作である。私があの作品に出合ったのは、高校時代。忘れもしない現代国語の実力テストの最中。本作品が一部引用されている問題を解きながら「これの続きが読みたい」と思った。帰りに本屋さんで買い、読んだ。

そんなことを思い出させてくれるのは、やはり当時、同じ時間を過ごした友達だ。
今日は、高校時代の友達・Y君と久々に会った。
4年半前の同窓会以来だ(2006年11月06日「同窓会」)。
彼とは同じクラスにはなったことがなかった。
しかし、私の数少ない女友達を介して、休み時間、廊下で話すようになった。
精悍で面白い青年であった。

我々が出た学校では合唱コンクールというイベントがあった。
小山のホールを貸し切って開催されるという、何とも大々的な催しであった。
自身が何を歌ったのかもあまり覚えていないのに、彼の指揮はとてもよく覚えている。
繊細で、そしてダイナミックな指揮だった。
田舎の高校生には衝撃的な文化的香りを放っていたんである。
校長先生にも「背中で表現する男」と、毎年褒め讃えられるほどであった。
私があまりにも絶賛するもんだから、当時付き合っていた彼氏がやきもちを焼いてしまい、困った。
「りょうにゃん(私はそう呼ばれていた)は、彼のことを好きにゃんか?」と。

そんなマエストロ・Y君とは同窓会で再会し、mixiという素晴らしい機能でも再会を果たした。
コンサートで同行する予定の人が行けなくなってしまい、どう?というお誘いを彼から受けたのが一週間前。
最近、クラシックのコンサートは年に一度の第九しか行っていない。
久々に生のオーケストラを聴きたいと思っていたので、良いタイミングだった。

新宿で待ち合わせをした。
電車を降りた辺りから物凄く緊張した。
「ああ~!」
と、会った途端に一気にテンションが上昇し、緊張が吹きとんだのだが。
喫茶店でお茶兼軽食をし、互いの近況などを話した。そうそう、この雰囲気。懐かしい。

電車で六本木一丁目まで移動。
来るのは10年ぶりのサントリーホール。


さて今日のプログラムは…
日本フィルハーモニー交響楽団第632回東京定期演奏会。
指揮・広上淳一。

ハイドン/交響曲第60番《うつけ者》
ヒンデミット/交響曲《画家マティス》
R.シュトラウス/組曲《薔薇の騎士》

知らない曲のクラシック演奏会は眠くなるのだが、…いやいや!睡魔が一瞬も訪れなかった。
それも、彼の一押し指揮者・広上淳一氏の指揮にある。
狭い指揮台の上を縦横無尽に踊りながら指揮をするのである。
時にはぴょんぴょんって跳ね、時には両手いっぱいばんざい(?)。
コミカルなんだけど、ちゃんとまとめているのが素人目でもわかった。
素敵すぎる!

あと、事前にY君の見どころ解説があったのも良かった。
素人の私に彼は分かりやすく色々と教えてくれた。
だから飽きなかったのかもしれない。

素晴らしい演奏会だった。

場所を新宿のワインバーに移し、飲み会開始。
いつも妹・芋子といく「ザ・ワインバー」である。
こんな明るい時間にココに来るのは初めてだ。
いつもは夜景を見ながら酒を堪能するのだが、今日、窓の外にあるのは夏の日差しの下に広がる東京だ。




アルコールも入り、ぶっちゃけ話に花が咲いた。
あのときはああだった、こうだった…そんな話。
若かった。

Y君の格言。
「男子は性に恋し、女子は恋に恋する」
納得!!

彼の悪戯話が究極に面白かった。
自習の時間。寝ている隣の男子を「おい、お前、指されてるぞ。ここから読むんだって」と教え、寝ぼけていた隣人が教科書を読み始め、周囲及び先生がびっくり!とか。ひどすぎる~!!!

2時間では語り尽くせない。
今度はもっとゆっくり話したい。

19時に彼の乗る高速バスが発車するので、バス停までお見送りした。
「じゃ!」
と握手をして別れた。

夏の風が新宿のビル群を通り抜ける。
その風を感じながら、改札口まで歩く。
久々の再会。
そしてまた互いの人生に「ただいま」って帰って、其々の人生を歩く。


自分にも「葡萄が目にしみる」的世界が広がっていたんだ。
当時は気付かなかったけれども。
そう言えば、あの作品も、大人になった乃里子が高校時代のクラスメートに会い、飲んで別れるシーンで終わっている。
ふと、自分があの小説の主人公と重なった。


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