世界の中心で吉熊が叫ぶ

体長15センチの「吉熊くん」と同居する独身OLの日常生活

春の花嫁

2010年01月07日 22時47分19秒 | Weblog
本社で、私の販売員時代を知る唯一の先輩Sさんが、この春、ご結婚することになった。

今更思い出しても意味がないのであまり回想しないのだが、あの店の人間関係はまるで火サスのようであった。裏切り、怨念、嫉妬、足の引っ張り合い…。しかし、新卒で社会を知らなかった私は「こんなものなのかもしれない」と思い、耐えに耐えていた。

横暴な元ヤンの店長、そして「店長マンセー!」な主任たち。
その日公休日のスタッフが悪口の対象になる、所謂「欠席裁判」が普通に展開されていた。

そんな店に、Sさんが異動してきたのは私が入社して半年が経った秋のことだった。

彼女には色々とお世話になった。
怒られたりもしたけれど、店長のいじめとは違う、納得できる指摘であったので、「これからは気を付けよう」と思えた。
店長に怒られて泣いた日、店を閉めた後、ミスドに誘ってくれたこともあった。
私を庇い、店長にいじめられたこともあったらしい。

一生分の恩義がある。

そんな彼女が結婚する。

今日は駅まで彼女と帰った。
あの店の思い出話、結婚式のこと、話は尽きなかった。
「まさか自分が結婚するとは思わなかった…」
と照れたように笑う横顔は、寒いのにほんのりと赤くなっていた。

春風が吹く頃行われる結婚式で、彼女は白無垢を着るらしい。

柔らかな日差しの中。
綿帽子の下、可憐に俯く彼女はさぞかし美しいだろう。

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七草と思い出

2010年01月07日 22時19分13秒 | Weblog
今日、1月7日は七草粥の日だ。
後輩女子Cちゃんに告げられるまで思い出せなかった。
彼女は先日の正月の帰省の際、お母さんから「七草粥セット」を持たされたらしい。

七草粥を食べれば邪気を払えるとは有名な言い伝えだが、そればかりではなく、御節料理で疲れた胃を休め、野菜が乏しい冬場に不足しがちな栄養素を補うという効能もある。

小学生のとき、春の七草を覚えさせられた。
芹(せり)、薺(なずな)、御形(ごぎょう)、繁縷(はこべら)、仏の座(ほとけのざ)、菘(すずな)、蘿蔔(すずしろ)、これぞ七草。

私の通っていた小学校では、遠足の他に「おにぎりデー」というプチ遠足が催されていた。近隣の田んぼで芹抓み、イナゴ取りなどをするのである。
芹なんて興味がなく、適当にそこら辺に生育している草を入れて帰った私。当然、芹は入っておらず、全て雑草だったとは母の談。さぞかしガッカリしただろうよ、母。

いまだに芹がどのような形状をしているのかは不明。
てか、七草粥って食したことがない。
Cちゃんの七草粥セットが気になる。

秋の七草というものもある。
女郎花(おみなえし)、尾花(おばな…ススキのこと)、桔梗(ききょう)、撫子(なでしこ)、藤袴(ふじばかま)、葛(くず)、萩(はぎ)
覚え方は其々の頭文字をとって“おすきなふくは”

秋の草花が出てくる詩を学んだのも小学生のときだ。
美しい表現が子供心に響いたので頭の片隅に残留していた。
たしか、この詩に相応しい絵を描けと授業で言われた気がする。


「野を歩けば」(丸山 薫)

うっすらと 動かない雲
高い 高い うろこ雲
ああ 空は水のようだ

野を歩けば
草にも陽にも
さやかな秋の匂いがする

きち きち と
音して 光って
はたおりはとび立った

桔梗の花を
つんでいこう
おみなえしの花を
手折っていこう
すすきの穂を
抜いてかえろう

今晩はお月見だ



今読んでも素敵な詩だと思う。
冬の長い夜に、幼き頃の思い出を引っ張り出すのも楽しいものだ。
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