世界の中心で吉熊が叫ぶ

体長15センチの「吉熊くん」と同居する独身OLの日常生活

雲の上から差し出された手

2006年10月18日 23時57分17秒 | Weblog
新宿・紀伊国屋書店(南口店)にて、18時開始の林真理子サイン会。
残業しないように、朝から猛烈に仕事をこなした。
いつもは後回しにしてしまいそうな厄介な仕事から手掛けた。

17時45分。
「ここさー、数字入れてね」
提出した書類に目を通しながら、吉熊上司に指摘された。
普段なら15分ぐらいはかかる仕事を3分で仕上げた(普段の私って…なんなんだろう)。

「いいんじゃないか」
OKが出たので、夕礼後、嵐のように会社をあとにした。
近くの花屋さんで薔薇の花束を作ってもらう。
mixiの「林真理子コミュニティ」で、差上げる花束を薔薇で統一して、ひとつの花束にしようではないか!という企画があり、便乗させていただいた。

19時新宿到着。
走りに走り、開場に到着。
サイン会は既に終盤に差し掛かり、私の他には10人目ぐらいしかいなかった。

目の前には、夢にまで見た林先生が!

林先生に対面するようなかたちで椅子が多数誂えており、腰かけて順番を待っている間、ずっと林先生に見入ってしまう私。
見入るというよりか、凝視に近かったかもしれない。
作家のオーラと美への追求オーラが、林先生からは滲み出ていた。
綺麗というか、妖艶だった。グレーのジャケットがステキだった。
気さくな感じでサインをなさりながら、ファンと会話を弾ませていた。

見渡せば、薔薇の花束を手にした人がちらほら。
目が合うと会釈をしあった。
林先生の隣には薔薇がてんこもりだった。
数分後、それに私の薔薇も加わるのだろう…。
mixiでの連帯感に感動しつつも、私の胸は目の前の林さんに釘付けであった。

ついに、私の番がキタ。
林さんは私を見つめて
「あれ~、初めてだっけ?」
と、深いお声で話しかけてくださった。

私は、エルメスに初めて電話をした電車男みたいなふうになり、挙動不審気味に
「は、はい。はじめましてでございます…。以前、宇都宮文化会館で開催された講演会でお話を聞かせていただきましたが」
と、返答した。

「へぇー」
と林さん。

差し出した花束をご覧になり、
「mixi?ありがとうございます」
と、仰った。
林さんはmixiをご存じらしい。すげーよ、mixi。

早速、差し出した本を広げ
「お名前は?」
と、訊かれた。
「〇〇亮子です。漢字は柔道の田村亮子の亮子です!」
私は元気いっぱいで答えた。

林さんは
「…こうだっけ?…こうかな…」
と、「亮」っぽい文字をメモに書き出した。

「ナベブタに口書いて、ワ冠にちょんちょんです」
と、説明したのだが、混乱させてしまったらしい。

「亮」に似た「亨」や「売」になり…結局私が「こうです」とメモに書いて差し上げた。

「あー、ヤワラちゃんね!」
林さんは頷きながらそう仰り、サラサラとサインをしてくださった。

長居は禁物…というか、あまりの緊張で胸がはち切れそうになり、そそくさとお礼を言って帰ろうとした。

「あっ、握手!」
そう言って差し出してくださった林先生の手は、仄かにあたたかかった。
パールの指輪が斬新的なデザインで、林先生らしいと思った。
「ああん!この手であの作品が生まれたのね!」
私は感動で目眩を覚えた。
幸せで気が遠くなる感覚を久々に体験した。

思えば、高校時代。
現文の模擬テストで「葡萄が目にしみる」の文章を使った問題に遭遇したのが、林真理子ファンになる切欠だった。
更級日記の姫君よろしく、「もっと先が読みたいなあ」と思った私は、早速本を買い、頁を捲った。
田舎の少女の目を通した風景やその心情にひどく共感した。
モテない女子特有の鋭い観察力を持つ女子高校生「乃里子」という主人公は、たやすく自分自身と重ねることができた。

あの日の感動が蘇った。
心が満たされた。

雲の上から差し出された林先生の手のぬくもりを胸に、明日からも頑張るぞ~。
コメント (3)