「誕生日おめでとう」
今日の日付になった途端、電話で弟にそう告げた。
10月4日は弟の誕生日。彼は24歳を迎えたのだ。
年に2回ぐらいしか会話をしない我々の会話は非常にぎこちない。
その2回の会話も、彼が美容師であるからだろうか、「ドライヤーの減価償却」「良いシャンプーについて」という地味な話題が中心だ。
少し緊張し、正座をしながら「お誕生日おめでとう」と告げた私に、
「どうも…ありがとうございます」
と、弟もぎこちなく言った。
思春期の彼は家族と仲が悪かった。
彼が家族と和解し、会話をするようになったのはつい最近だ。
先日、弟の前で、母が父に
「まー君(弟)は可愛そうだよね。パパの顔を知らずに育ったんだもの」
と言ったことがあった。
私達が幼かった頃、たしかに父は毎晩夜明けまで残業や飲み会に明け暮れていて、あまり家に居なかった。
母の言葉を聞いた弟が、淡々と言った。
「そんなことないよ。働いていたら、そのぐらいのこと当たり前じゃないか」
父はその言葉を聞いて、泣いたらしい。
いつの間にか、私は弟に抜かれてしまった。
今日の日付になった途端、電話で弟にそう告げた。
10月4日は弟の誕生日。彼は24歳を迎えたのだ。
年に2回ぐらいしか会話をしない我々の会話は非常にぎこちない。
その2回の会話も、彼が美容師であるからだろうか、「ドライヤーの減価償却」「良いシャンプーについて」という地味な話題が中心だ。
少し緊張し、正座をしながら「お誕生日おめでとう」と告げた私に、
「どうも…ありがとうございます」
と、弟もぎこちなく言った。
思春期の彼は家族と仲が悪かった。
彼が家族と和解し、会話をするようになったのはつい最近だ。
先日、弟の前で、母が父に
「まー君(弟)は可愛そうだよね。パパの顔を知らずに育ったんだもの」
と言ったことがあった。
私達が幼かった頃、たしかに父は毎晩夜明けまで残業や飲み会に明け暮れていて、あまり家に居なかった。
母の言葉を聞いた弟が、淡々と言った。
「そんなことないよ。働いていたら、そのぐらいのこと当たり前じゃないか」
父はその言葉を聞いて、泣いたらしい。
いつの間にか、私は弟に抜かれてしまった。