晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

山本一力 『いっぽん桜』

2012-06-29 | 日本人作家 や
なにかと気の滅入るようなニュースばかり目にしますが、別に
現実逃避というわけではないですけど、ほっこりとする時代小説
なんて読んでみるのはいかがでしょうか。

というわけで、山本一力。

表題作『いっぽん桜』のほか、「萩ゆれて」「そこに、すいかずら」
「芒種のあさがお」の4作で、いずれもキーワードは「花」。

『いっぽん桜』は、深川にある口入屋(今でいうところの人材派遣)、
井筒屋の番頭、長兵衛が、主人に料亭に誘われます。
そこで、そろそろ若いものに譲ろうと思うと切り出され、長兵衛に
「身を引いてくれ」と・・・
12歳で丁稚として井筒屋に入ってから40年以上真面目に働き、手代
から番頭まで順調に出世します。妻とひとり娘だけなので長屋でも
じゅうぶんだったのですが、井筒屋番頭の”見栄”もあって、家賃の
高い庭付きの家に住み、娘のためにと桜の木を庭に植えます。
が、この桜の木、よそから移植したのですが、毎年咲かない桜なの
です。
早期退職した長兵衛、井筒屋と同格でライバルの口入屋から誘いが
あって出かけてみると、井筒屋の内情を聞きたいだけ。
そして、ひょんなことから魚屋の会計に再就職するのですが、長兵衛
はなにかと前の職場のしきたりを持ち出して、それが魚屋の奉公人
たちから不興をかうことに。
娘も年頃になって縁談がありますが、相手の男には会いたくない・・・

なんとも切ない話です。が、やがて長兵衛は気づきます。

「萩ゆれて」は、山本一力の作品にしては珍しく、舞台は深川界隈
ではなく土佐。まあ作者は高知県出身ですから不思議はないのですが、
これまで江戸の下町人情話を多く読んできただけに新鮮でした。
父親の不面目で周りから酷い扱いを受けることになる土佐藩下士の
兵庫。湯治に出かけているときに、ひとりの女性と出会います。
りくという女性は道でまむしに噛まれて、それを兵庫が助けます。
りくの兄と父は漁師で、りくも海女をしています。兄の弦太と兵庫
は妙にうまが合い、自分の身の上話を聞いてもらいます。

漁師の生活が気に入り、兵庫は漁師になりたいと告げます。そして
りくと兵庫は結婚し、漁師にはならなかったですが武士を廃業して
城下のはずれで魚屋を営むことに。
兵庫の妹は賛成しますが、母は大反対、親戚からは絶縁。
病弱で寝たきりになった兵庫の母はりくを無視し続け・・・

こちらも最後にはホロリ。

「そこに、すいかずら」では、紀伊国屋文左衛門が登場。この話
では、料亭、常磐屋の娘、秋菜を優しく見守る「いいひと」に
描いています。先日読んだ「深川黄表紙掛取り帖」では豪商で
稀代の”切れ者”として登場しますが、別の一面を見たようです。

「芒種のあさがお」は、品川の酒屋の娘で、男まさりに育った
おてるが、深川の祭りに出かけたときに、江戸で一、二と評判の
あさがお作り職人、茗荷屋の息子と出会う、という話。

「父」「娘」「花」という三題噺(ちょっと長めの)といった感じ。



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2 コメント

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いっぽん桜 (こに)
2013-02-12 19:31:14
やはり表題作が一番良かったですが
「芒種のあさがお」の舅も最後の最後にやってくれたなぁ、ホロリときました。
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Unknown (ロビタ)
2013-02-13 07:29:08
こにさん>

コメント&TBありがとうございます!

「芒種のあさがお」いい話ですよね
返信する

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