晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

ジョン・アーヴィング 『未亡人の一年』

2012-07-06 | 海外作家 ア
アーヴィングの作品は今までけっこう多く映画化されていますが
(まだ「サイダー・ハウス・ルール」しか見たことありませんが)、
監督、というか脚本家は、アーヴィングの作品を2時間とかそれ
くらいでちゃんと内容を抑えて説明出来る、というところが素晴ら
しいと思うのです。
というのも(この『未亡人の一年』も映画化されていますが)正直
この「面白さ」を的確に伝えられるか、と軽く困っております。

あらゆる要素がつまっていて、かといってゴチャゴチャという印象
はなく、話はちゃんと完結しているのに、読み終わったあとに「自分
なりの答え」を探しているといいますか、まあこういうところが(現代
のおとぎ話)と評価される所以なんでしょうが。

ざっと説明しますと、16歳の少年エディが夏休みに、絵本作家のテッド・
コールの手伝いをするために彼の家に住み込みアルバイトをします。
テッドには妻のマリアンと(すごい美人)娘ルース(当時4歳)がいるの
ですが別居状態。
エディはマリアンに夢中になって、マリアンもエディに死んだ息子の面影
を見出して、たちまちふたりは夜をともにします。
が、ある夜、その”時”をルースに見られてしまい・・・

ルースの生まれる前にテッドとマリアンには2人の息子がいました。
その息子たちはエディの高校の先輩にあたり、交通事故でふたりとも
帰らぬ人に。
いまだ悲しみから立ち直れないマリアンは、家中に息子の写真を飾って
います。そのせいかルースに対する愛情はなさそう(あとで、なぜマリアン
はルースを育てるのを放棄したのかの理由は出てくるのですが)。

テッドは違う女性に手を出しまくっていて、エディは複雑な状態に立たされ
ることに。そんな中、マリアンはテッドとルースを置いて家を出てってしま
うのです・・・

ここまでが1958年、夏の話で、次に32年後の1990年に飛びます。
48歳のエディは小説家になっていて、36歳のルースも小説家に(ルースのほうが
評価は高い)。
ルースの朗読会がニューヨークで開催されることになり、エディは招待され、
ふたりは32年ぶりに再会。そこでルースは母について聞きます。

テッドがマリアンに初めて会ったときの歳に近いルースに(母娘だから当たり前
ですがマリアンに似てる)ちょっと惹かれますが、しかしいまだエディの中には
マリアンに対する想いが。

ルースは出版社の社員で彼女のよき理解者と結婚します。が、5年後にルースは
未亡人に。

ルースとエディはマリアンの居場所を探していますが、そのあいだにも、テッドが
亡くなって葬式があったのですがマリアンは姿を見せません。
しかしある日、カナダのミステリ作家の作品が、マリアン自身を描いていると
知ったエディだったのですが・・・

ルースやエディが、あるいは彼らの周りの人たちの思う「小説とは」「作家とは」
の考察が、アーヴィングが彼らに代弁させているようで興味深いですね。

エディの家からテッドの家のある街まではフェリーに乗っていかなければならない
のですが、その船上でエディはハマグリを載せたトラックの運転手と出会います。
ここで(ハマグリトラック)という言葉が、やたら連呼されます。じゃあそんなに
物語のうえでとても重要なシーンかといえばそうでもありません。
こういった、ちょっとは重要だけど振り返ってみればそうでもない、といった部分
が多く、でも最終的にはまとまった話になっている、例えていえば、色も形も違う
ガラスの破片を組み合わせて美しいモザイク絵画を完成させるといいますか。

もっともっともっともっと面白かった部分を書きたいのですが(エディの父親とか
ヴォーンさん家の話とかルースがオランダで遭遇した殺人事件とか)、あまり書き
すぎると最終的にぜんぶ説明しかねないので、とにかく声を大にして(ブログで
「声」ってヘンですが)「読んでほしい!!!」。
文庫本の上下あわせて1000ページ近くありますが、まったく長いと感じさせません。
久しぶりに心がガシガシ揺さぶられた作品です。

泣ける話とは思っていませんでしたが、ラスト、(核心は書きませんが)ルースと
マリアンが再会するシーンのマリアンの一言で号泣してしまいました。
不意打ちで「やられた・・・」という感じ。


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