晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

山本一力 『たまゆらに』

2015-08-19 | 日本人作家 や
山本一力の作品はずいぶん久しぶりなような気がしてまして、
当ブログで前に投稿したのを調べてみると去年の5月でした。

朋乃という若い娘は、青菜の棒手振り(天秤棒で担いで売る人)。
ある朝、仕入れに出かける途中、橋の上に落ちてた財布を拾います。

落し物を拾えば、自身番(今でいう交番みたいなもの)に届けなければ
なりませんが、取り調べが面倒なので、しかも、場合によっては盗んだ
など疑いをかけられることもあるので、「触らぬ神になんとやら」で、
真っ正直に財布を拾って届けるなんてことはあまりしません。

しかも、朋乃は仕入れに行くところでしたので、面倒ごとは避けたいところ。

ですが、自身番に届けることに。

自身番にいた目明し(岡っ引き)の五作は、財布の中身を確認すると、
中から、二十五両の包みが二つ、つまり五十両。しかも包みには
「三井両替店」の封紙が・・・

幕府の公金を扱っている三井の包みの小判なんて、普通の町人は手にすることはありません。
こうなってくると、五作は取り調べに時間をかけなければいけません。
すると、財布の中に紙が。

その紙には「日本橋室町 堀塚屋庄八郎商店」と。

それを聞いた朋乃は「ええっ!?」と驚きます。

というのも、その堀塚屋は、なんと朋乃の生家だったのです・・・

堀塚屋は日本橋の鼈甲問屋。朋乃の母、静江は堀塚屋の旦那に見初められ
結婚しますが、姑は実家が下町の魚屋である静江と息子との結婚に反対。
嫁いで産まれたのが朋乃でしたが、それから数年後、旦那と妾との間に
男の子が産まれたので、あんたは用無しとばかりに静江は朋乃を連れて
追い出され、それから母娘と長屋暮らしをしています。

そんな身の上話をする朋乃。ですが、堀塚屋の誰かが落とした(と思われる)
財布、しかも五十両もの大金を、堀塚屋が実家だという朋乃が拾うとは
偶然にしては話ができすぎてるなと五作は思い、それなら、堀塚屋では
誰かが財布を落として、お金を無くして大変ということになってるはずで、
堀塚屋に行ってみようということになるのですが・・・

早朝に大金入りの財布を拾うと見て、これは「芝浜」じゃないかと思いました。
もっとも朋乃は働き者ですけどね。しかも、夢ではありません(笑)
読み終わって、なんだか落語を聞いたような気持ちに。

朋乃の青菜の仕入れ先に、「研ぎ師太吉」にも登場した「青菜の泰蔵」が登場します。
相変わらずいい味出してます。

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