晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

アーサー・C・クラーク 『2010年宇宙の旅』

2010-07-07 | 海外作家 カ
あれはいつのことだったか、高校生のときに買って、読まずにそのままに
していた「2001年宇宙の旅」の文庫を押入れから見つけ出し、読み始めたら
グイグイ引き込まれて、気がついたら窓の外は白んでいた、なんてことが
あったのですが、そしてとうとう、何年越しになりますか、続編の『2010年
宇宙の旅』を読むことに。まさに今年2010年、地球外小惑星イトカワから
物質を採取してきた「はやぶさ」が地球に帰還する、といった重大ニュースが
飛び込んできて、ようやくアーサー・C・クラークの創造に少しでも近づいた
のかな(人類が木星まで行ける技術は到底先のこと)なんて、宇宙に思いをはせ
ながら読みました。

『2010年宇宙の旅』は、いちおう前作「2001年~」の続編ということになるのです
が、どちらかというと小説版といよりは、スタンリー・キューブリックの映画版の
「続編」というほうがふさわしい、と思えるくらい、あとがき解説にもありましたが
説明過多といいますか、そもそもSF小説に「明確な答え」を求めるのは無粋な
気がするのです。
確かに「2001年~」では、月と木星にある黒い物体とは一体何なのか?ボーマンは
どうなってしまったのか?ハル9000の暴走の原因は?という疑問が残ったのですが、
『2010年~』では、明確とまではいわないまでも解き明かしてはいます。が、そこには
まだ多くの謎があり、それが読者の想像力と創造力をかきたたせてくれます。

時は2010年、宇宙船レオーノフ号は地球から飛び立ちます。
10年前、木星の衛星に存在する謎の黒い物体「モノリス」の謎を突き止めようと
宇宙船ディスカバリー号が木星に向かう途中、乗組員4名死亡、1人が行方不明と
いう原因不明の「事故」が起こりました。
それは、ディスカバリー号に搭載されていたスーパーコンピュータ「HAL9000」
が、乗組員ならびに地球の管制を無視し、突如命令にない行動に出てしまい、船長
のデイビッド・ボーマンは小型遊泳用ポッドに乗りディスカバリー号から脱出して、
その後消息は不明のまま。

そして、レオーノフ号にはソビエト宇宙飛行士と、元アメリカ宇宙飛行学会議長
ヘイウッド・フロイド、ハル9000製作者のチャンドラ、そしてディスカバリー号
の専門家カーノウの3人が加わり、木星の軌道衛星となりはてた宇宙船の回収ならび
に調査、そしてモノリスの調査という任務のため、木星への旅がはじまるのです。

人工知能スーパーコンピュータ、ハルはなぜ乗組員殺害という暴挙に出たのか、
消息不明のボーマン船長はどこに行ってしまったのか、モノリスの正体とは何なのか、
そして、レオーノフ号に先回りして木星の衛星に着陸した某国の宇宙船から届いた
「エウロパには生命が存在する・・・」というメッセージとは・・・

文中に、チャンドラ博士に他の乗組員が「HALという名前はIBMに一歩先んじる
意味で選んだのですか(アルファベットでIBMのひとつ前がHALになる)?」
という質問に、
「それはもう何年も前から否定してきた話なんだ。H・A・LはHeuristic ALgorithmic
(発見的、算法的)の略だ!」
というくだりがあり、この説はどこからきたのかは不明なのですが、作者は否定して
いるようで、さらに、当のIBM社がこの説を名誉としていることで、作者自身「もう
それでいいよ」といったことを述べています。

現実の世界で、人類が木星衛星群に着陸できる日は来るのでしょうかね。



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