晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

宮部みゆき 『鳩笛草』

2010-07-05 | 日本人作家 ま
そういえば、久しぶりに宮部みゆきの作品を読んだなあ、と思い、
今回読んだ「鳩笛草」は短編3作なのですが、その中の「燔祭」は、
この続編として「クロスファイア」という作品があり、中表紙には
「まず『燔祭』を買って読んで、立ち読みでもいいから」といったような
前置きがあり、大変申し訳ないのですが、そのご忠告を無視して、先に
「クロスファイア」を読んでしまいました。
ちなみに「クロスファイア」は、念力で人や物に火を放つことのできる
能力を持つ女性が登場する物語です。

というわけで、スターウォーズでいうところの「エピソード1」的な
「燔祭」あり、予知能力を持つ女性を描いた「朽ちてゆくまで」、他人の
心を読む能力を持つ女性刑事を描いた「鳩笛草」と、いずれも「超能力」
の持ち主(そしていずれも女性)が主人公。

「朽ちてゆくまで」は、両親を幼いころに事故でなくし、祖母とふたり
暮らしをするも、その祖母も急死し、孤独となった智子を中心に描かれ、
長い間祖母と暮らした一軒家を売りに出そうと、家の中の荷物を整理し
ていると、そこから、幼少時代の智子が撮影されたビデオテープが出て
きたのです。
その映像は、愛娘を撮影する両親といったほのぼのとしたものではなく、
頭痛で泣く智子に両親が何かを訊き、智子は夢でみた「何か」を答える、
といったもので・・・

「燔祭」は、会社員の一樹が新聞に載ったあるニュースの見出しに心穏やか
ではいられなくなる、という場面からはじまります。
一樹にはとても可愛がっていた妹がいて、しかし何者かにくるまで轢き殺され、
犯人はいまだ捕まらないでいる時に、同じ会社の手紙を預かる部署
(メイル部)の、あまり印象の無い女性、青木淳子が、代わりに復讐する、と
一樹に告げ、淳子は会社を辞めて行方をくらまします。
それから数年後、「荒川河川敷で男女4名の焼死体」というニュースが・・・

「鳩笛草」は、他人の心を読むことのできる女性刑事、本田貴子の話で、
彼女は対象の人物の直接、あるいはその人の触れた物から、心の中を読み
とる能力があり、その能力のお陰か、女性にしては珍しく刑事課に配属
されます。
しかし、ここ最近、その能力が鈍りはじめていて、そしてついに、管轄下で
重大事件が発生したその時、突然貴子は意識を失い・・・

「能力」を持つ者の、優越感みたいなものはあまり書かれず、むしろその能力
を持ってしまった「煩わしさ」のような気持ちが描かれているようで、能力を
中心に描くというよりは、周りの人間関係、機微を多く盛りこむことによって、
能力は物語におけるいちアクセントであり、やはり人間ドラマなんだなあと
感じるあたり、SFやモダンホラーに区分けされてもいいような、でもちょっと
毛色が違うんだよなあ、と宮部みゆきという小説家の「能力」に感嘆するのです。


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1 コメント

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読みました (こに)
2011-02-06 11:22:17
全く、宮部さんという人には脱帽です
ただの読者が言うことでもありませんけどネ
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