晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

A・J・クィネル 『トレイル・オブ・ティアズ』

2010-07-21 | 海外作家 カ
海外ミステリーあるいはスリラー系を読み始めて数年、そうしますと、
あとがきなどで、他の作家だったり、有名な作品だったりを目にする
機会も増え、たとえばジョン・ル・カレは、F・フォーサイスの小説の
あとがきで知ったりしました。

で、このクィネルという作家なのですが、名前はよく目にするものの、
どうにも今ひとつ「買いたい読みたい」というふうに心動かされる何か
が足りないというか。まあそれでも読まず嫌いはイカンと思い、購入。

ジェイソン・キーンという、世界的に有名な脳外科医が、ある日ニューヨーク
の街中で誘拐されます。彼はつい最近離婚し、それが原因か毎夜の酒量も増え、
いきつけのバーの店員も心配していたほど。
それからしばらくして、大西洋上に一機のセスナ機が墜落したとのニュースが。
その飛行機を操縦していたのは、ジェイソン・キーンとの情報。

警察によると、彼のアパートからは遺書が見つかり、その遺書を元妻リサに
渡しますが、リサはその文面を見て、違和感をおぼえるのです。
それは、ジェイソンが嫌いな言葉が使われているのです。
さらに、リサは、第六感というか、テレパシーというか、何かの「直感」で、
元夫は死んでいないと確信、最寄の警察に相談に向かいます。

そのリサの直感は当たっていて、ジェイソンは偽装自殺によって、この世には
もういない人間とされて、ある施設に幽閉されていたのです。
脳外科医がそんな大芝居で誘拐されて連れてきられたということは、何者か
公にできない人物の手術をしなければならないのか・・・

リサの相談を受けたニューヨーク市警の女性警部補ルース・カービーは、ある
知り合いの筆跡鑑定士にお願いして、遺書を鑑定、すると、これは100パーセント
偽物だと断言されます。
そこでルースは、もう自殺と片付けられたジェイソン・キーンの捜査を継続、
ビングというあだ名とパートナーを組み、ジェイソンの居場所を突き止めようと
しますが・・・

はたして、ジェイソンはどこに、そして何の目的で連れ去られたのか。
一方の話、アメリカ上院議員のルシエル・リンの娘が、ある情報を母に教えます。
娘アグネスは獣医で、ある犬のコンテストで優勝した犬が、前にコンテストに出場した
犬とあまりに似ている、「似すぎている、同じ犬のよう」と思い、もしかしてあの犬は
クローンなのではないかと訝ります。その犬の飼い主は、NAHR(国立人間資源研究所)
の所長で、この研究所は不明な予算を使っているとのことで、リン上院議員は調査を
はじめるのですが・・・

ジェイソンが幽閉されている施設に、ある日本人コンピューター技師がいるのですが
なんというか、好意的に描かれているのです。海外の小説に登場する日本人といえば、
大勢で移動する観光客、怜悧な、あるいはカモにされるビジネスマン、いずれにしても
ステレオタイプなのですが、このコンピューター技師は、ちゃんと「日本人」として
人物描写がされていて、あとがきで知ったのですが、クィネルは仕事で日本に滞在して
いた時期があるそうで、情緒的なセリフを言わせるあたり、なるほどな、と。

ジェットコースターとまではいきませんが、それでも読み終わるまでドキドキして、
なかなかスリルを味わえました。
そして、このタイトル、意味は「涙の行進」なのですが、じつは本筋に密接という
わけではありませんが、ああ、このタイトルは正解だよ、と思わせてくれます。

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