晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

宮部みゆき 『ぼんくら』

2009-09-26 | 日本人作家 ま
時代小説、歴史小説に「とっつきにくい」と感じている人も
多いのでは、と思うのですが、どこがそうなのかというと、
たとえば現代では使わない言葉や地名を補足説明するの
は野暮なのか、それでわかりづらい。あるいは、学生時代
に苦手だった日本史を思い出してしまう、など。

しかし、時代設定を数百年前にしただけで、そこには人間
がいて、そして日々の暮らしがあり、たとえ電話もテレビも
なく、車も電車もない時代であろうと、人間そのものは大し
て変わってないんですね。
そして、過去をきちんと解く術を持つことこそ、現代を漫然と
生きることに対抗しうる手段でもあって、そういった意味でも、
良質な時代小説、歴史小説を読むのはオススメというわけ
です。

宮部みゆきの書く時代小説は、江戸の下町、日本橋か深川
あたりが舞台になることが多く、大名屋敷エリアはあまり登
場しません。まずここに読みやすさがあり、市井の人々の暮
らしぶりは小難しいことはなく、そこでの人間関係は現代に
通じる部分も多く、いやむしろコミュニケーションツールなど
ほとんどない時代に、より関係は深くなるので、人間同士の
距離間は現代よりも近いと感じられます。
そして、最大のポイントは、表現があまり時代がかってない
ということ。物腰のやわらかさというか、時代歴史小説特有
の堅苦しさはありません。

『ぼんくら』は、江戸、深川の長屋で殺しがあり、その責任
を取ると手紙を残し差配人(大家のような人)は失踪。
そして次々と長屋に暮らす家族が姿を消してゆきます。
面倒くさがりな同心(今でいう警官)の平四郎は、この長屋
に何が起こっているのか、調べはじめるのですが・・・

それにしても、登場するキャラクターが面白い。長屋のリー
ダー的存在の煮物屋の未亡人、消えた差配人の後釜に来
た地主の遠縁の若い男、平四郎の妻、甥っ子、平四郎の部
下、ほかにも個性豊かな登場人物が物語の世界を広げます。

時代歴史小説はどうも…、という方は、ぜひ宮部みゆきから
読み始めてはいかがでしょうか。
コメント
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