晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

夏目漱石 『こころ』

2009-09-02 | 日本人作家 な
つい先日「吾輩は猫である」を読み、やっぱり夏目漱石は
おもしろいなあと今更ながら感心し、ついで「こころ」を読ん
でみたのですが、10代までに読んでおきたかったと、ちょ
っとした後悔をおぼえました。

ある学生が鎌倉へ遊びに行いったときに、学生はどこか謎
めいた男と出会い、妙に興味を抱き、「先生」と呼び、その
「先生」のことについて知りたくなるのです。
特にこれといって仕事もせず、本を読むばかり、家には奥さ
んと下女(今風にいうとメイド)と暮らし、後ろ暗い過去を持っ
ていそうな、人生にあまり前向きでないような感じすらします。
その背景をどうしても知りたくなった学生は問うのですが、期
待する回答は得られず、そのうち学生は親が倒れて帰省しま
す。
郷里で父親の看病をしていたとき、先生から手紙が届きます。
その手紙の内容は、なぜ退廃的ともいえるような暮らしになっ
てしまったのか、その原因が長く書き綴られていて・・・

物語の後半は、先生の学生時代、友人Kという、あえて本名を
伏せているのですが、このKとの友情やがて亀裂が描かれます。

これが現代の男同士の友情に男女の恋愛が絡んで云々だと、
「こころ」にあるようなヘビーでストイックな心情はちょっと理解し
づらい部分もあったりするのですが、ましてやKの出した答えな
んて、たとえそこには様々な要因、時代背景があることを解釈
したところで「そりゃないよ」と思うのが当然なんでしょう。

しかし、その過程の苦悶、葛藤などはいつの時代でもあるもので、
これは不変なんだなあと感じることもまたできます。

物語が不条理な結末で終わると、どうにも納得できないままモヤ
モヤしたものが心に残ってしまうのですが、美しい文体がそれを
補って余りあるほどに印象深くさせる、100年を経てなお読み継
がれてゆくに値する作品だと敬服。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする