晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

奥田英朗 『イン・ザ・プール』

2009-09-19 | 日本人作家 あ
『イン・ザ・プール』の舞台設定、メインキャラクターを引き継いで
のシリーズ2作目の「空中ブランコ」を先に読んでしまい、「空中
ブランコ」では舞台や人物設定がもっと細かく描かれており、どう
しても1作目ということで、主人公の精神科医、伊良部と精神科
勤務の看護婦がやや正体不明というかミステリアスに描かれて
おり、それでも話の筋自体が面白く、なんというか、ラジオのネタ
ハガキのような、随所に笑いどころを散りばめ、それに物語的要
素を加えて小説化した、といったような、全体的に飽きさせない
ところがさすが元構成作家だなという感じです。

都内の伊良部総合病院の地下にある精神科、そこには精神科医の
伊良部医師が、上の階の診療で精神科に患者を「まわして」くれる
のを待っています。
名前の通り、院長の息子で、優秀な後継ぎというよりかは、身なり
はきちんとせず、ポルシェを乗り回す「ドラ息子」。
そして、たまに精神科に来る患者には、トラウマだの心の病気だの
は根源的治療なんてありゃしない、せいぜいビタミン剤か安定剤を
処方する、といった適当さ。
それでも、およそ投げやりとも思えるアドバイスが患者を心の病気
から開放させてゆくのですが、そのアドバイスというのが、かなり
むちゃくちゃ。
当てずっぽうのアドバイスがたまたまその患者にとって有効的な治
療だったのか、それともこの伊良部は名医なのか、判断はそう簡単
にはさせてくれません。

「考える」から「考えてしまう」のであって、それじゃ「考えなければい
いじゃん」というスタンスで、これは精神科医や臨床心理士というよ
りは、村の長老のような、どこか哲学的な、達観あるいは超越の域
ともとれ、単なるオプティミズムとも違います。
だからといって、心の病気を軽視しているわけでもなく、その患者に
対する愛情はちゃんと感じ取れます。
コメント
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