晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

P・ハクソーゼン、E・クルジン、R・アラン・ホワイト 『敵対水域』

2009-09-15 | 海外作家 ハ
この小説はノンフィクションで、1986年10月、アメリカの
レーガン大統領とソビエト連邦のゴルバチョフ書記長がア
イスランドのレイキャビクで、首脳会談をおこなう1週間前
に、ソ連の原子力潜水艦が大西洋のアメリカのすぐ近くで
ミサイルが爆発し海水が漏れるという緊急事態が発生し
てしまう、という実話が描かれております。

ソ連側の潜水艦はK-219という老朽艦で、しかも過去
に事故を起こしているという欠陥だらけのシロモノ。しかし
「お国の事情」を最優先し、この危ない潜水艦をソ連から
出航し、アメリカの鼻先で偵察する任務をしなければなら
ず、優秀な艦長のもと、乗員たちの団結で航海を続けるの
ですが、じつは出航当時から、1機のミサイルハッチから
漏水が確認されていたにもかかわらず、兵器士官は報告
を怠ります。
ミサイルハッチから海水が漏れると、ミサイルの薬品と海水
が混ざり、有毒ガスが発生してしまうので、細心の注意が
はかられるべきなのに、士官がそれに気がついた時すでに
遅く、ミサイルハッチから有毒ガス発生、ただちにミサイルを
海中に投げ捨てます。

しかし、その一部始終をソナーで聞いていたアメリカの最新
鋭原子力潜水艦オーガスタは、ソ連の潜水艦からミサイル
が発射されたことを司令部に報告。
有毒ガスと漏水の止まらないK-219内部は惨劇に見舞
われ、原子炉に海水が漏れ出せば、大爆発してしまいます。
そこで、勇敢な原子炉担当水兵は、手動で原子炉の作動を
止めようとするのですが・・・

作戦内容はすべてアメリカ側に筒抜けであっても、懸命に老朽
艦を航行させる館長はじめ乗員はどこか物悲しさが漂い、いくら
不測の事態とはいえ、敵国の鼻先で緊急浮上せざるをえなかっ
た、潜水艦よりも乗員の生命を第一に考慮した艦長を罵るモス
クワの態度は亡国を感じさせます。

「レッド・オクトーバーを追え」でお馴染みの作家トム・クランシー
をして「この『敵対水域』ほど深く胸に滲み入る潜水艦の実話を
私はこれまでに読んだことがない」と言わしめるほどの、緊迫感、
臨場感あふれる作品です。
コメント
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