非国民通信

ノーモア・コイズミ

旗幟鮮明

2023-01-08 23:11:03 | 社会

 新型コロナウィルスの週間感染者数で日本が世界最多と発表されることは珍しくなくなりました。重傷者数も死者数も増えていますので、より一層の警戒を強めるべき事態であること自体は確かです。ただ本当に日本の感染者数が世界最多であるかは疑わしいところでもあります。欧米では既に感染者数の把握を放棄していることが多く、そうした国々からは過少報告された不正確な数値しか出てこないわけです。日本もまた全数把握については簡略化が進んでおり必ずしも実態を正しく反映しているとは言い切れませんが、おそらく世界最多までは届かないでしょう。

 感染者数把握の放棄が世界的な潮流となっている一方、どういうわけか中国に関しては数値が正確でないと自国を棚に上げて非難する人が多かったりします。それぞれの国が報告してくる感染者数が信用ならないのはアメリカもイギリスもウクライナも同じはずですけれど、中国にだけ正確な把握を要求しているのは理不尽な話と言うほかありません。

 加えて空港などでの水際対策に関しても、大半の国が検疫を行わなくなっているにも拘わらず中国からの入国者に限っては厳しい検査対象になる、連日のように陽性者数が多数発覚したと伝えられています。アメリカからの便だって真面目に調べればいくらでも陽性者は見つかることでしょう。日本から国外に出た人だって同じです。しかし多くの国が警戒の対象としているのは専ら中国からの便に限った話で、このような対応は中国政府から非難されても当然です。

 新型コロナウィルスの流行当初も、中国からの入国に関しては非常に厳しい対応が取られていました。結果として初期(武漢型)のコロナ株が日本に入ってくることは皆無に近かったのですが、しかるに欧米経由の変異株は当たり前のよう日本に到達し、流行が始まりました。この結果として起こった社会の変化には良いものも多く結果オーライと感じるところがないでもないのですけれど、防疫という面では偏った対策が失敗を招いたことを反省すべきではないでしょうか。

 ウクライナを舞台とした戦争への対応でも同様ですが、何かへの対策と言うより「立場を明らかにする」ことが先決になってしまっている節もあるように思います。どの国を無警戒なままにとどめておくか、どの国を警戒対象に定めるか、それは必ずしも実際のリスクに応じたものではなく、それぞれの国の「好き嫌い」や「アメリカに臣従しているか」という基準の方が幅を利かせているところがあるわけです。

 なお新型コロナウィルスだけではなく、日本ではインフルエンザも久々に流行の兆しを見せているそうです。新型コロナウィルスの感染拡大以来、その対策の副産物としてインフルエンザの感染者は極小に押さえられてきました。しかるべく公衆衛生の基準を引き上げていけば、新型コロナはともかくインフルエンザに関しては十分に流行を防げることが明らかです。そのインフルエンザが流行していると言うことは、すなわち我々の社会の感染症対策が緩んでいることを意味します。

 コロナ以前はインフルエンザと疑われる症状があっても公然と出歩く人が多かった、周囲を憚らずゲヘゲへとウィルスをまき散らし、会社にも皆勤を続けて頑張る自分をアピールするのに余念のない人も目立ったわけです。新型コロナの流行のおかげで、そうした迷惑な人々が表に出てくることを押し止められるようにもなったはずですが、その辺の箍は着々と外れているのでしょう。

 新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけを、インフルエンザなどと同じ「5類」に引き下げようとの意見も日に日に強まっています。いずれインフルエンザと同様に、コロナの疑いのある人も平然と満員電車に乗って出社、机を並べて仕事をせざるを得ない日々が訪れるのかも知れません。ただ、そうなってもなお中国への警戒だけは緩めない、国内向けには「ただの風邪」扱いしておきながら、中国から入国するコロナ陽性者だけは重大な危険因子として扱う、そんな未来が予想されますね。

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