非国民通信

ノーモア・コイズミ

マトモな賃金を払えない事業者が潰れていくのは正常

2018-01-21 23:24:26 | 雇用・経済

飲食店の倒産、2000年以降最多に 個人消費低迷など(朝日新聞)

 2017年の国内企業の倒産件数は8376件で、8年ぶりに前年を上回った。飲食店の倒産が2000年以降で最多となり、全体を押し上げた。長引く個人消費の低迷や人手不足による人件費の高騰が経営の重しになったようだ。

 帝国データバンクが16日公表した通年の全国企業倒産集計でわかった。

 景気の緩やかな回復に伴って倒産件数は7年連続で減少を続けていたが、17年は前年より2・6%増えた。特に、飲食店の倒産が増え、前年比約27%増の707件だった。焼き鳥、おでん、もつ焼き屋などの「酒場・ビアホール」の倒産が最も多かった。飲食店の倒産件数が最も多かったのは東京都、前年比で件数が最も伸びたのは大阪府だった。

 

 まぁ勤務先の近辺でも行列の絶えない人気店が普通に潰れていますので、飲食店とはそういうものなのではないかとも思います。昼時にどれだけ人が並んでいても、結局は夜に酒を飲んでくれる人がいないと利益なんて出ないものなのでしょう。それが世界的に見て普通のことなのか、あるいは日本固有の現象なのか、もしくは現政権下で突発的に発生するようになったことなのか――この辺は人それぞれの政治的立ち位置によって見解が割れそうですね。

 さて、報道では「個人消費の低迷」と「人件費の高騰」がなんの疑問もなく並べて書かれています。人件費が本当に高騰しているのなら相応に個人消費が増えていなければおかしいはず、人件費が高騰しているのに個人消費が伸びないのなら、せめて代わりに預貯金残高が急騰していなければおかしいでしょう。しかし、鰻登りなのは企業の内部留保だけです。人件費が高騰していると伝えられているにもかかわらず、消費も個人の預貯金も低迷を続けているのは何故なのやら。

 結局、ブルジョワ新聞の目から見た「人件費の高騰」なんてのは、都合良く奴隷を調達するのが昔より僅かに難しくなっただけのことでしかありません。働く人に払う賃金を惜しむ意識が強いからこそ、微々たる賃上げを「高騰」と呼び習わしているだけの話です。そもそも人件費が下がっていった時代の政権を熱烈に支持してきたネオリベ新聞社にとって、賃金の上昇とは企業の倒産を招く絶対悪なのでしょう。

 なお日本では今なお現金払いが圧倒的に強い、電子マネー普及が進んでいないとも言われます。評論家目線では消費者の意識が低いと嘆息してみれば済む話のようですが、実際のところはどうなのでしょうか。特にこの「飲食店」界隈では現金払いオンリー、カード支払いはお断りの店舗も目立つわけです。装置を導入するための資金にも不足している、あるいは決済の手数料を引いたら利益が出ない、そんなレベルの飲食店も多いのではと推測されます。じゃぁ、現金で払うしかないよな、と。

 ある意味、飲食業界はデフレ時代の花形でした。「人を安く長く働かせる」ことで利益を上げる事業者にとって、安倍政権登場前夜こそが黄金時代だったと言えます。その後は景気と反比例する形で浮き沈みしているところですが、こうした業界の「社会」への貢献って、果たしてどれほどのものなのでしょうね。「人を安く長く働かせる」ことでしか存続できない事業者なんてのは、それこそ社会の寄生虫でしかありません。駆除されることが、我々の社会への貢献です。

 よその国だと外食は高く付く、とよく聞きます。その辺は例外もあるでしょうけれど、確かに諸外国の飲食店の値段を日本円に換算してみると、ちょっと気軽には利用できない水準だったりすることは珍しくありません。高級店に限らず、街の食堂やチェーン店レベルですら、ですね。逆に言えば、日本は外食が安い国ということになります。では店で安く食べられる国であることが社会の繁栄をもたらしているかと言えば――むしろ随所で歪みをもたらしているわけです。日本の飲食業界の低価格競争は実に激しいですが、それは持続可能なのでしょうか。

コメント (1)
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