非国民通信

ノーモア・コイズミ

教育が優良な投資であることを理解できない国は成長しているだろうか

2016-09-25 21:49:31 | 社会

日本、33カ国中32位=教育への公的支出割合-OECD(時事通信)

 経済協力開発機構(OECD)は15日、2013年の加盟各国の国内総生産(GDP)に占める教育機関への公的支出割合の調査結果を公表した。日本は3.2%と7年ぶりに最下位を免れたものの、比較できる33カ国中ハンガリー(3.1%)に次ぐ32位にとどまり、OECD平均の4.5%も下回った。

 33カ国の中で最も高かったのはノルウェーの6.2%。次いでデンマークの6.1%、ベルギー、フィンランド、アイスランドが各5.6%で、欧州の国々が上位を占めた。

 大学など高等教育への支出を公費で負担している割合は、日本は35%で、韓国(32%)に次いで2番目に低く、大部分を私費で負担している実態が明らかになった。OECDは、日本では高等教育への需要が高いにもかかわらず、公的支出が少ないと指摘した。

 

 さて教育機関への公的支出割合で、日本が7年ぶりに最下位を脱したそうです。ちなみに最下位は国境線にフェンスを築いて難民を撃退していることで有名なハンガリーでして、この辺の国と同レベルの争いを繰り広げているようでは全く喜べません。結局のところOECD諸国中のワースト2なのですから、政府や行財政関係者には深い反省が求められます。

 なお報道によると「日本では高等教育への需要が高いにもかかわらず、公的支出が少ない」と、OECDは指摘したそうです。公的支出が少ないのは歴然たる事実ですが、「需要」の方はどうなのでしょう。日本の場合、大学進学率はようやく50%に届いたばかりと、そこまで高等教育を受けに行く人の割合が高いわけではありません。そもそも日本の大学進学率が急上昇に転じたのはバブル崩壊と同時期です。高卒でも就職先に困らなかった時代の日本の大学進学率は至って低かったことを思うと、日本における高等教育の「需要」とはどれほどのものなのかと悩みます。

 あるいは卒業してどこかの会社に就職するにしても、採用に当たって問われるのは大学のネームバリューぐらいであって成績なんかは聞かれない、入社したら「いつまでも学生気分じゃダメだ」と言われ、研修と称して自衛隊に体験入隊させられたりコンサルタントと称する占い師から似非科学や都市伝説を教え込まれるわけです。いったいどこの誰が、高等教育を必要としているのでしょうね。

 国によっては、自国民の教育水準の高さを強みと考えているところもあるはずです。国民の教育水準が上がれば、国の経済力も文化発信力も高まる、教育への公的支出は国家のためでもあると、そう理解している国もあると言えます。一方で極東の島国では、教育は贅沢品と信じられてはいないでしょうか? 教育への公的支出を国家財政上の重荷と考えたがる人が多い、そんな文化圏もあるわけです。

 歴史を紐解いていけば、かつては安価な労働力を武器に他国を出し抜き富国強兵を果たした国もありました。とかく人件費抑制を至上命題とし、発展途上国の労働力を収奪するばかりか、国内においても好待遇を求める高等教育修了者が増えることを快く思わない、むしろ教育を否定したがる我が国の財界人は総じて植民地時代のスキームへと退行していると言えます。それで世界における日本の経済的な地位が向上しているのなら間違ってはいないのかも知れませんが、GDPもまた公的支出割合のランキングに着々と近づいているのが現実なのです。日本で支配的な、企業に金を蓄えさせるだけの路線からは180°の転換が求められます。

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