非国民通信

ノーモア・コイズミ

維新と民主を隔てるもの

2015-11-01 22:50:10 | 政治・国際

 実のところ、かつて維新の党が大阪以外の地域へ進出すると聞いたとき、私にはある種の期待がありました。大阪で自民党や民主党と対立してきた維新の党が他の自治体に出たならば、ようやく共産党以外の野党が出てくるのではないかと、そんな可能性を期待したわけです。しかし結果はご覧の通り、維新の党は民主党と同じでした。つまり、国政レベルでは自民党と張り合うフリをする、自民党(与党)への批判票を攫おうとするけれども、(大阪など一部例外を除く)地方自治体の選挙では相乗りで首長を当選させ、連立与党の一員として単独野党の共産党と対決する――つまりは民主党と同じだったわけです。

 まぁ、所謂サイレントマジョリティはともかく、とかくweb上で政治を語りたがるような人ほど地方政治なんて気にしていないと言いますか、国政レベルで与党に反対していさえすれば自民党の対抗馬として扱いたがるようです。過去の世論調査では「望ましい政権の在り方」として「自民と民主の連立政権」が多数派であったこともありまして、確かに国政は別として地元の自治体では自民と民主が共に首長を支えているのが一般的、その関係を国政にも当てはめるべきと考える人がいたとしても不思議ではないのかも知れません。しかし、声高に叫ぶ人ほど民主なり維新なりを自民党への対岸に位置づけたがるようで、地方自治体での自民&民主そして維新の協力体制は無視されがちだったりします。

 それはさておき方向性の一致から維新と民主の提携は急速に進むと見られているわけです。こうした動きの一方、維新の中でも大阪系などとも呼ばれる橋下グループが分離しつつあるのは周知の通りですが、どうしたものでしょうね。確かに政策面で似るところの多い両党ですけれど、一つだけ決定的な違いがある、すなわち「支持層」が異なるという点で維新と民主の間には障壁があるとは言えそうです。そして民主党と目指すところは大差なくとも民主党の「支持層」を嫌う人々が維新の中で分派を形成しているのではないでしょうか。

 大体の政党は、少なからず支持層と似るものです。あるいは、大方の有権者は自分と近い政党を支持するわけです。自民党と自民支持層、公明党と創価学会員、共産党と共産党支持層、維新の党とその支持層は、当たり前に思えるかも知れませんが方向性において似通うところはあると言えます。しかし、民主党と民主党の支持層の場合はどうなのかな、と。民主党の特徴は支持層の利害を代弁しない「しがらみのなさ」にある、民主党支持層の思い描いているものと民主党が目指しているものは、他の党と支持者のそれに比べると決定的な違いがあるのではないか、そう私には思えるのです。

 ネット上のコアな民主党支持層――民主党にも批判的な風を装いつつも、結局は何かしら理由を付けて民主党を支持するしかないと強弁する人々――の頭の中の民主党と、民主党を忌み嫌うレイシストの頭の中の民主党は、意外なほど似ています。つまり両者は共に、リベラルでハト派の党として民主党を支持し、あるいは嫌悪しているわけです。しかし現実の民主党はどうなのでしょう、自民党への批判票への色気はありつつも地方自治体では自民党と組むのが普通で一貫して共産党と戦ってきた、自民党と同様にタカ派の議員やオカルト趣味の議員が闊歩し、政権の座に就いていた頃は労働者の処遇に関して何もしてこなかった政党でもあります。

 民主党の存在は、小選挙区制と同じくらいに「民意をねじ曲げる装置」として機能してきました。地方自治体では連立与党の一員でありながら政府与党への批判票を不当に掠め取ってきた泥棒政党でもあり、誤った期待によってリベラル層や労働組合の票を収奪してきた存在であると思うわけです(有権者側にも責任の一端はあるにせよ)。それに比べれば維新の方が、少なくとも党と支持層の乖離が少ないという点では民意を適切に反映してくれるのかなと、そんな風に私は期待しています。民主に投じられた票に込められた民意は民主党議員によって違った方向に反映されるけれど、維新の方は(良くも悪くも)民意を反映する形になるのではないかな、と。維新がこの先どう分裂するかは分かりませんが。

 

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