非国民通信

ノーモア・コイズミ

かつて賞賛されていた会社

2015-02-03 23:01:51 | 雇用・経済

“超無謀”だった「A380」購入 スカイマークの命取りになった超大型機(フジサンケイビジネスアイ)

 経営破綻したスカイマークの命取りになったのが、このA380の導入計画だった。6機の購入代金は総額1915億円。契約を結んだ11年は経営が絶好調だった時期だったとはいえ、年間売上高のほぼ倍に当たる巨額の投資だった。だが、業績は急速に悪化し、代金の支払いが滞る。エアバスからは購入契約解除の通告に加え、7億ドル(約830億円)の違約金を求められた。会社のイメージ悪化や顧客離れが加速し、経営は追い詰められていった。

 民事再生法の適用を申請した翌日の今月29日、就任後初の会見に臨んだ社長の有森正和は、報道陣から「A380の導入計画が破綻の理由になったのか」と問われた際、「それで結構だ」と認めざるを得なかった。A380の導入計画は「超ワンマン」で知られた前社長、西久保慎一が主導したものだった。スカイマーク関係者は「国際線参入は西久保氏にとって悲願だった」と説明する。

 当初は14年10月にA380の初号機を受け取り、同社初の国際線として14年末にも成田-ニューヨーク線に就航させる計画だった。型破りの手法で業容を拡大してきた西久保には、好業績の余勢を駆って「2強」の日本航空や全日本空輸に一気に肩を並べようとの思惑もあったようだ。だが、これだけの超大型機を使いこなせる航空会社は世界でもそう多くない。当初から日本の航空業界では冷めた反応が多かった。「話を聞いたときは『超無謀』だと思った」。大手航空会社の役員はこう振り返る。「国際線経験ゼロの会社がいきなり超大型機で長距離路線を展開しても、うまくいくわけがない」

 

 先ごろ経営破綻したスカイマークですが、その要因としてクローズアップされているのが、A380機の導入計画です。何しろ年商900億の会社が1915億円の購入契約を結んだのですから無茶も良いところですね。資本の使い道を見いだせず内部留保を積み上げるだけの日本的経営もまた酷いものですが、だからといって会社の規模に見合うはずもない巨額の投資を強行すれば当然ながら危険なギャンブルとなります。何事も両極端はダメということなのでしょう。極端なことをやれば世間の注目を集める、アホな経済誌からも業界の革命児と持て囃されるのかも知れませんが、行き着く先はご覧の有様です。

 まぁエアバスにしても、よくも契約を結んだものだなと思います。与信管理は適切だったのでしょうか。普通は、購入意欲がありさえすれば大歓迎ということにはならないはずです。支払い能力に疑わしい点のある顧客から商品やサービスの提供を求められても、そこは素直に「ご注文ありがとうございます」で済ますわけにはいかないのが企業間の取引というものですから。A380みたいな大型旅客機ともなれば店頭に在庫を並べて買い手を待つわけにも行かないところ、注文者の支払いが滞れば当然ながら不良在庫と化してしまうのは不可避です。

 つい先日まで居座っていた前社長、西久保慎一氏の主導でA380の導入計画は進められたと伝えられています。その失敗として責任を問われるのが西久保氏個人に止まるならば良いのですが、実際のところは末端の従業員にも賃金抑制や退職強要、一人当たりの労働負担の増加などの形で責任が転嫁されるわけです。トップが決断したことでも、「下」の人間が責任を背負わされることからは逃れられない、しかし物事を決める権限を持っているのは「上」の人間だけ、そういう構図はスカイマークでもあったのではないでしょうか。

 小泉純一郎なり橋下徹など、その筋の政治家は「やればできる」みたいなことを頻繁に語ります。実際には不可能なことでも、「やればできる」と唱えては、実現されなかったら内部に敵を求めて責任を押しつける、そうした卑劣な振る舞いによって国民から「リーダーシップ」を認められている政治家もいるわけです。スカイマークの前社長は、どうだったのでしょうね。「職員は『できるように努力します』以上の発言はしないように」と、そう橋下は語りました。A380導入計画が持ち上がったとき、スカイマーク社内で社長は部下に何を求めたのでしょうか。下からの「できません」「無理です」と、そうした現実を見つめる声にトップが耳を傾けていれば、破綻せずに済んだ組織はスカイマークだけに止まらないように思います。

 

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