非国民通信

ノーモア・コイズミ

それでは構造改革路線への逆行だ

2014-04-06 22:28:50 | 雇用・経済

建設業で外国人受け入れ拡大 実習後も就労認め最大2倍(朝日新聞)

 政府は4日、人手が不足している建設業界で外国人労働者の受け入れを増やすことを決めた。技能実習制度で3年間日本で働いた人が追加で2年間働けるようにするほか、実習を終えて帰国した人に最長3年間の再入国を認める。建設業界の外国人労働者を現在の1万5千人から最大で約2倍にする狙いだ。

 技能実習制度は日本の優れた技術を途上国の人に学んでもらうのが本来の狙いだが、建設業だけでなく工場や農業の現場などで実習生が貴重な働き手になっている。建設業の受け入れ拡大は型枠工、鉄筋工など特別な技術を持つ人に限り、実習直後の2年間は、法相が個別に就労を認める「特定活動」の扱いにする。

 実習を終えてすぐ帰国した場合、1年以上たって再入国する人には3年間、1年未満の人には2年間の特定活動を認める。1人が働ける期間は最大6年になる。来年度から、東京五輪・パラリンピックの施設やインフラの整備で特に人手が不足する2020年度までの特例措置にする。

 

 「こんなに恵まれている。これを直すのが民主党だ」と民主党の政策調査会長である桜井充は民主党政権時代に語りました。民主党時代、及びそれ以前の結構な期間も専ら成功の基準は「賃金を下げること」にあったと言えます。いかに高給取り(ということになっている)人々を槍玉に挙げて給与水準を下げたか、人件費を下げて雇用側に便宜を図ったかを政治は競ってきたわけですね。これが第二次安倍内閣時代に入ってようやく正常化された、賃金が「上がったか」が成果として問われるようになりました。賃上げに関しては小さな一歩が踏み出されたばかりと言ったところですが、これは日本の現代政治史上の大きな転換点として評価されるべきものと思います。

 さて伝えられているように建設業界では一足早く人手不足が訪れているようです。この辺に否定的な人も多くて、人手不足で被災地の復興が遅れる云々みたいに語られたりもするところ、ただそう語る論者の多くは風評「加害者」として原発関係の事実無根の偏見を広めるのに躍起になっていた人だったりもして、まぁ御都合のよろしい話でしょうか。もっとも労働者の待遇を改善させる上で人手不足以上に有意義なものはありません。人が余っているからこそ、「代わりはいくらでもいる」とばかりに雇用側は従業員を蔑ろにできるものですけれど、人員の確保に苦労するようになればそうも行かなくなりますから。

 労働者側の立場を飛躍的に強めてくれる人手不足を招いたのは――それが特定業界に限られているとはいえ――安倍内閣の功績として肯定されるべきものと言えます。近年の日本は「人もモノ(サービス)も安く」とデフレを牽引してきた不況型産業が幅を利かせてきました。就職難につけ込んで労働力を安く買い叩き、従業員に無理をさせることで競合他社より安価な商品やサービスを提供することで国内市場を荒らし回る、そんな企業がシェアを広げてきた、日本経済を下へ下へと引っ張ってきたわけです。しかし人手不足となれば、求職者側にも「選ぶ余地」が産まれます。競合他社よりも秀でた待遇を用意できなければ人員を確保できない、そうなることでタチの悪い事業者が淘汰されることこそが望まれるのではないでしょうか。

 建設業界でも、労働力を安く買い叩くばかりの事業者が人員を確保できなくなり、しかるべき対価を提示できる真っ当な業者が選別されるようになって欲しいですし、そのためには人手不足と今後に向けたインフラ整備の拡大は良い機会です。しかるに政府は外国人労働者を増やすことに決めた、とか。これではダメです。せっかく「待遇を改善しなければ人が集められない」状況が作られつつあるのに、「外国人を安く買い叩く」という逃げ道が作られては、働く人への支払いを減らすことで利益を確保するしか能のない不良企業が生き延びてしまいます。そんなことをしていては構造改革路線への逆戻りでしかありません。

 技能実習制度という現代の人身売買制度はまさに日本の恥であり、このような制度が現存している限り私が自国を誇りに思うような日は訪れないことでしょう。外国人を受け入れるのであれば、それは日本人と同じくフェアな条件で行われなければ行けません。外国人を低賃金で働かせ、用が済んだら国外に送り返す、それは搾取と呼ばれるものです。労働力を日本の市場に提供して貰うからには日本人と同等の待遇であるべきですし、失業したり高齢化したりした後の社会保障もまた当然、必要になります。都合良く労働力だけを頂戴して、後はサヨウナラで済むものではないでしょう。

 本当に人手不足なら、雇用側は「誠意」を見せて人員を確保しなければならなくなりますし、それは日本で働く全ての人にとって好ましいことです。しかし、「外国人を安く買ってくればOK」ということになれば、別に日本人の待遇を引き上げなくとも済む話であり、それは買い叩かれる外国人にとってだけではなく元から日本で働いている人にとっても不幸な話です。そして「人」の値段が上がれば人手を増やさずとも必要な事を成し遂げるためのイノベーションが模索されるところですが、「人」を安く買えるのであればイノベーションの必要は失せてしまいます。安く買ってくればいいのですから。今回、追加されるという1万5千人という枠は必ずしも大きくはありませんけれど、これは紛れもないマイナス要因として日本経済を退行させる一因になり得るものです。

 

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コメント (4)
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