非国民通信

ノーモア・コイズミ

ファンの方がタチが悪い

2012-10-02 23:09:45 | 社会

 一口に公務員といっても、その中には自衛隊員も含まれるわけですが、自衛隊員とそうでない公務員とで世間の扱いは大きく異なりますよね。公務員の給料を下げよと人々が叫ぶとき、その中に「自衛隊員の給与を下げろ」という思惑が込められているのかどうか? 自衛隊「以外」の公務員を公衆の面前で罵倒することで有権者の喝采を浴びている政治家は枚挙に暇がないのに対し、同じ公務員であるはずの自衛隊員に対して同様の態度を取った政治家を私は見たことがありません。公務員叩きの大半は不条理なものばかりですけれど、一方で自衛隊員はほとんど批判を浴びることがないというのも、これまたどうかと思うところです。

 組織としての自衛隊への批判は皆無というわけではないにせよ(全く世間の支持を集めてはいないようですが)、公務員バッシングがこれほど盛んであるにも関わらず、自衛隊「員」バッシングは発生した試しがありません。特定の個人が不祥事を起こす、これは自衛隊員であろうとそうでない公務員であろうとも共通のことであるにも関わらず、自衛隊「以外」の公務員が公務員全体のモラルの問題として大きく扱われがちなのに対し、自衛隊員の不祥事の場合に自衛隊という組織全体へ批判が向かうことは、これまた皆無です。昨今は学校のいじめ自殺問題や学校側の隠蔽が大きく取り沙汰されていますけれど、自衛隊でも同様の事例はありました。しかし、自衛隊が問題を発生させた学校と同様の非難を浴びているかと言えば……

 自衛隊員が世間の感謝を集めている中、「公務員」は世間の誹謗中傷を浴びている、ところが不思議なことに、今なお「公務員」は求職者からは最も人気のある仕事の一つであり、親が子供に就かせたい仕事のナンバー1でもあり続ける、かつ公務員と結婚したがる人も少なくない仕事だったりします。反面、自衛隊もまぁ今となっては簡単に就職できる世界ではないにせよ、自衛隊「以外」の公務員に比べれば就職先としての人気は後れを取ってきたわけです。かたや人から賞賛される仕事、かたや人から罵倒される仕事、求職者「以外」からの評価は天と地ほどの差があるのに、いざ「自分が」当事者になろうとする場面での評価は裏返る、身勝手なものですね。

 まぁ、懐かしの若貴ブーム時代も相撲の競技人口が増えたわけではなかったと聞きます。「他人に」やらせるという観点からは人気があっても、「自分が」やるものとして人気が出るとは限らないものなのでしょう。元より自衛隊は「社会人」の研修機関として最も世間の評価が高いものの一つで、近年では新人研修に限らず「ニート」や(働いていないとされる)自衛隊以外の公務員までをも体験入隊させよと説く声も強い、その延長線上に徴兵制を検討云々と真顔で言い出す政治家も出てくるわけです。ある意味、国民統合の象徴、日本人を教え導く存在として自衛隊を活用したがる人もいるのでしょう。そして先年の大災害や昨今の領土問題もあって、ますます自衛隊に期待する気運は高まる自衛隊待望論が盛り上がっているところもあるようですが、それを当の自衛隊員はどう思うのやら。自己陶酔型のちょっと危ない人もいるでしょうけれど、その一方では自衛隊に活躍して欲しいという「外からの」願いとは裏腹に、あんまり駆り出して欲しくないと困惑している自衛隊員も多そうな気がします。

 そう言えば過去には、「天皇」との渾名を持つ業界(及び学会)の権威筋やスポーツ選手がいたものです。現代は全く見られなくなってしまいましたが、いつ頃から変わってしまったのでしょう。何でも「カワイイ」とか「ヤバイ」で済ます、若者の語彙(表現)が貧困化している云々としたり顔で語る人も多い時代ですけれど、確かにそうなのかも知れません。今や何もかもが「サムライ」と呼ばれるばかりですから。ともあれ、「天皇」と呼ばれる大御所やスポーツ選手はいなくなりました。誰かの渾名に「天皇」という言葉を用いるのは恐れ多いと、そう考えられるようになったのでしょうか。

 この「天皇」もまた、「外」からの期待と当人の思惑に食い違いがありそうな印象が強いです。昨今は下火ですけれど皇太子妃バッシングに熱心だったのは「右」の人ばかりで「左」は完全に無関心だったこともあります。あるいは「国旗を掲げ、国歌を斉唱させることが私の仕事」と語る東京都の教育委員を「強制になるということでないことが望ましいですね」と天皇が嗜める一幕もありました。天皇にあれこれと期待する人もいるわけですが、概ねその期待は天皇家にとっては疎ましい代物であることが多そうな気がします。自衛隊の場合と同様、神聖視と合わせて勝手な願望が押しつけられているところもありそうです。ファンの方がタチが悪い、と。

 

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コメント (5)
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