非国民通信

ノーモア・コイズミ

大学→専門学校→地元のスーパー

2010-12-30 22:57:55 | ニュース

大学卒業者に「専門学校」人気  実践的な就活支援、資格取得も(東京新聞)

 大学卒業後に、専門学校で学び直す人が増えている。具体的な就活ノウハウを二人三脚で教えたり、就職に有利な資格取得がウリだ。大卒でも就職が難しい「就職氷河期」に、大学にはない支援の手厚さが魅力のようだ。

 「もっと具体的に何ができるのかアピールできないと伝わらないぞ。なんで、どうしてそう思うの」

 ビジネス系専門学校大手の大原学園東京校(東京都千代田区)が、今春開設したビジネス専攻コースの模擬面接試験の授業。「物事を最後までやり遂げる力があります」と自分の長所を語る学生に、担任の千葉博さんは語気を強めた。

 「面白くない」「独り善がり」。次々と繰り出す厳しい指摘に泣きだす学生もいる。座り方や女子学生のメークにまで指摘が飛ぶ。こうした指導で学生たちは面接を突破する力をつけていく。

 大卒者に専門学校人気がじわりと広がっている。文部科学省の学校基本調査によると、本年度の専門学校入学者二十六万六千九百十五人のうち、大学・短大などの卒業者は二万四千八百六十三人(約9・3%)と少しずつ増えてきている。

(中略)

 大学を今春卒業した男子学生(23)は、在学中に金融業界約五十社を回ったが、結果が出なかった。「資格が取れ、新卒扱いで就職活動ができる」と同コースに入学。六月に地元スーパーから内定を得た。

 入学金と学費で百二十六万円かかるが、「内定を取るだけでなく、企業が求めるビジネススキルも身に付けられる」と就職部の堤敦本部長は話す。

 「企業が求めるビジネススキルも身に付けられる」などと専門学校サイドは豪語していますが、そのために百二十六万円もの学費を払った結果が「地元スーパーから内定」だとしたら、ほとんど詐欺のようなものといっても差し支えないと思います。別に地元スーパーをバカにするつもりはありませんが、少なくともそれは元々の希望ではなかったはずです。見せかけ上の就職実績を作るために本人が希望していた職種や業界とは全くかけ離れたところに押し込めるというのなら、それはまさしく失業者に介護や農業を勧めたがる手合いと変わるところがありません。仕事に就かせさえすればどこでも良いのか(本人の意向を無視しても良いのか)、その辺は問われてしかるべきです。

 本人が望んだ業界なり職種なりに就かせることに成功しているのなら、この手の就職学校にも相応の社会的意義はあるのでしょう。しかるに、ピックアップされた選りすぐりの例であるはずの「大学を今春卒業した男子学生(23)」ですらごらんの有様です。地元スーパーに就職するために、わざわざ専門学校にまで通わなければならないとしたら何とも世知辛い話です。まぁ今やパートですらも書類の段階でガンガン落とされるくらいの異常な買い手市場ではありますが、「そこまでしなければいけないのか!」と思わずにはいられません。仕事は選ぶな、就職させてもらえるだけありがたく思えと、そういうレベルで話が進められているような気がします。

 就職する本人からすれば、元々の志望とはかけ離れた職場に押し込まれるという悲劇を受け入れるほかない一方で、就職「させる」側は気楽なものです。就職できない新卒者が溢れれば多少は問題視されるわけですが、そうなったら本人が望まない業界にでも何でも、とりあえず就職させてしまえば社会的責任を果たしているかのごとく装えるのですから。就職さえさせてしまえば問題はないのだと、そういう発想の至り着く先が金融志望の学生をスーパーに押し込む専門学校であり、「就職難は仕事を選り好みする学生が悪いのだ」みたいなことを平然と口にする連中であると言えます。

参考、他人の就職を世話する仕事

 ともあれ、就職に関するハードルが空前絶後の高さに跳ね上がった現在、需要が高まるのは就職を売りにした専門学校であったり、上記リンク先で触れたような「他人の就職を世話する仕事」でしかないわけです。そしてこの手の専門学校の類で教えられているのは座り方や女子学生のメーク等々というのですから肩をすくめるほかありません。面接の受け方を教えるのも結構ですが、「企業が求めるビジネススキル」=「就職するためのスキル」になっていないでしょうか。そりゃ「企業が求めるビジネススキル」と言うものが実は曖昧極まりなく教えられるようなものではないのはわかります。結局のところ就職活動とはさながら事業仕分けのごとく、相手に隙を見せず、いかに好印象を与えるかで結果が決まってしまうものなのでしょう。そのためには新卒で就職できていない時点で既にアウト、志望を変えて地元のスーパーとか、とりあえず採ってくれそうなところを受けなさいと言うことになるのかも知れませんね。

 しかしまぁ、高卒では就職口がないから大学に進学するケースは珍しくありませんし、大卒で進学できない人が大学院に進むケースもないことはなかった、そして昨今では新卒を装うための「就職留年」という本末転倒の制度が大々的に用いられるようになったわけです。加えて大学を卒業してから、新たに専門学校に入る人も増えている、しかも専門教育が目的というより「就職」そのものを学ぶための学校であったりするのですから、何とも虚しいものです。就職のために費やされる膨大な労力こそ、この国の最大のムダの一つでしょう。そして増加する専門学校卒業生にだって就職は必ずしも容易でない気がしますが、その辺がクローズアップされようものなら「専門学校生が増えすぎたからだ」みたいな目眩のするような妄論が出て来るような気がします。とりわけ経済や雇用に関しては、どんなに愚かしい言論が権威筋から出てきたとしても不思議ではないのが日本という国でもありますから。

 

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コメント (13)
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