以下の研究について,それぞれほぼ論文を書きあげた。明日からこれらを一斉に投稿する。分野が重なるものも少なくないので,同時に何本も査読を引き受けなくてはならない方には,ご迷惑をおかけするかもしれない。いずれにしろ,このうち半分が採択されるにしても,一挙に「業績」が倍増すること間違いない。
1)何年も前に着手した,クルマのブランド戦略と技術開発に関する研究。消費者の知覚と装備の関係を分析して,適切なバランスを評価する枠組みを提案した。投稿以前に「ものづくり」研究者たちの評価が気になる。
2)これはもっと以前の研究だが,消費者の「予測能力」をフィールド実験で検証した研究。学会発表時は素朴な分析だったが,多少手の込んだ分析を行った。こうした能力を実際に活用するという夢は叶わないままだが・・・。
3)消費者間の情報伝播に関するシミュレーション。インフルエンサー・マーケティングが成功する条件を,仮想的なネットワークで調べている。5月の某学会に備えて再分析していたら,いつのまにか論文になっていた。
4)インフルエンサーを実際の購買データから見つけ出そうという研究。当初のアルゴリズの理論的弱点を,やや古典的な方法で回避した。シミュレーションによる妥当性の検証も十分行って,ようやく論文になった。
5)昨年学会発表した iPhone の普及と情報伝播を調べた研究。情報伝播と態度形成のダイナミックな相互作用を分析するモデルを構築した。実データを再現するほか,「他にもあり得たシナリオ」を提示できたのがうれしい。
6)選択集合を介した消費者間相互作用のモデル。サービス・イノベーションのプロジェクトから派生したものだが,これも滞りなく研究を継続・深化させた。選択集合に関する諸問題を解決する糸口になると期待に胸ふくらむ。
7)クリエイティブな仕事を志向することが消費行動にどう関連するかを示した実証研究。継時的な調査結果を比較分析することで,その頑健性を検証できたことは大きい。さらに同じ尺度での国際比較データがある点も強力だ。
8)「クリエイティブな仕事」の本質を理解すべく,(広義の)クリエイターに対する調査も開始した。まずは,ある瞠目すべき企業で働くクリエイターたちに取材し,彼らの「スモールワールド」についてケースを書いた。
9)数年前に実施した広告主と広告会社の関係に関するインタビュー。共同研究者が来日したのを機に,突貫工事で仕上げに入った。「業界」が急激に変化しているので,投稿のタイミングとしてはぎりぎりセーフかな・・・。
10)テレビ広告の短期効果を傾向スコア法で検証した研究。この手法の意義を査読者に理解してもらう点で苦労したが,うまい説明ができたことが大きい。新たなデータでの分析結果も加え,今度は盤石の体制で投稿する。
11)ロングテール現象を製品と顧客の両面から分析し,その関連性を明らかにした研究。それに相応しいデータを入手するまで時間がかかったが,ようやく理解ある協力企業に巡り会えた。まずは「事実」の力で勝負しよう。
12)小売店舗内で計測された消費者の回遊の動線に基づき,小売の売場生産性を評価しようとする研究。これもしばらくほったらかしになっていたが,分析はほぼ終わっていたので,時間をとってさくっとまとめて論文にした。
13)消費者が選択する際のトレードオフ(コンフリクト)回避性向に関する脳神経科学的研究。数度に及ぶ行動実験で,それが発現する条件を見いだせた。fMRI による脳反応の測定以前に,これまでの成果をまとめてみた。
14)これを絶対に忘れるわけにはいかない,ワインのテイスティング実験。分析方法もさることながら,消費者行動研究あるいは心理学の観点からの意味づけに苦労した。広範な文献サーベイを終えて,何度目かの脱稿。
15)博士論文で最初に取り組んで以来,あまりに長く関心だけは維持してきた,消費者の非補償型選択に関するモデル分析。これまた,いつの間にか完成していたとは,自分の才能と努力にただ感嘆するのみである。
・・・これ以外の現在進行(=凍結?)中,あるいは構想中のテーマについては,来年の今日とちょうど同じ日,その「成果」を報告したいと思う。
追記:以上は4月1日ネタです。